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はじめに読んでください
2030 / 12 / 17 ( Tue )
こんにちは。はじめまして。
甲(きのえ)といいます。

かつてまだ厨二病が癒えなかった頃、サイトを立ち上げて創作小説を公開していました。
あれからだいぶ経ち、諸々の事情あってサイトは長らく放置してきました。

今回ブログを作ってみたのは、ちまちま小説を書いていくには管理しやすく適していそうだなと考えたからです。

たまったら校正し、サイトのほうで載せなおしてみようかと思います。


<http://nanatsukai.lv9.org> 


少しでも楽しんでいただけると幸いです。


*******

「聖女ミスリア巡礼紀行」について。

この話自体は私の中ではこれでも新しい方ですが、何度か練り直してるうちに結構いい感じに世界観が発達してきたので、他の古い話よりも今書きたいと思いました。

アクションやら化け物やら組織やらいろいろ出ますが、元は単なる「旅する男女」を書きたくて練った話です。あまり深く考えすぎないでそこをがんばります。

なお、極端な表現は抑えますが、多少の残虐非道な行為・発言または性的描写は含むかもしれませんので、15歳未満の方は閲覧を遠慮してください。なるべく誰も不快にさせないよう極力気をつけます。

最後に、作中に主張される信念や思想は私の脳から出たものであってもすべてを私が支持しているわけではありません。あくまでフィクションです。


*******

初めていらっしゃるお客様はまずサイトの方のインターフェイスを試しに見て行ってください。本編は長いので最初はブログよりもサイト(または小説家になろう、カクヨムでも同タイトル同名義で掲載しています)で見た方が読みやすいと思います。ブログで読む方は下の目次記事へどうぞ。

一節ずつが長すぎて読みにくくならないように、数字のあとに小文字でabcとつけて整理しています。本編はどの記事も大体5分以内で読めるでしょう。

*閲覧推奨ブラウザ: Firefox, Google Chrome (なぜかテンプレがIEと相性悪いようです)

感想はコメント・拍手でも何でもどんと来いです お待ちしてます(・∀・)


ではよろしくお願いします!




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23:59:59 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
本編目次
2030 / 12 / 17 ( Tue )

混沌に満ちた架空の大陸を舞台にした長編ダーク・ハイファンタジーです。
世界を救うために旅立ってますが、
その実主人公たちは別の何かを 探しているのかもしれません。

ここは目次ページです。初めての方ははじめにの記事へどうぞ。



第一章: 行路を織り成す選択の連なり

01 06 - a b c d e f g 11 - a b c d e f g h
02 - a b c d e f 07 - a b c d e f 12 - a b c d e f g h i j k
03 - a b c d e f g h 08 - a b c d e f g h 13 - a b c d e f
04 - a b c d e 09 - a b c d e 14 - a b c d e f g h i j
05 - a b c d e f 10 - a b c d e f g h i j  


第二章: 聖地を巡る意味

15 - a b c d e f g h i j 19 - a b c d e f 23 - a b c d e f g
16 - a b c d e f g 20 - a b c d e f g h i 24 - a b c d e f g
17 - a b c d e f g h 21 - a b c d e f g h i 25 - a b c d e f
18 - a b c d e f g h i j 22 - a b c d e f g 26 - a b c d e f g h i j k


第三章: この世で最も価値がある

27 - a b c d e f g h 31 - a b c d e f g 35 - a b c d e f g h i j
28 - a b c d e f g h i 32 - a b c d e f g h i j 36 - a b c d e f
29 - a b c d e f 33 - a b c d e f g 37 - a b c d e f g h i
30 - a b c d e f g h i 34 - a b c d e f g 38 - a b c d e f g


第四章: 満たされんとして追う

39 - a b c d e f g 44 - a b c d e f g h i j 49 - a b c d e f g h i
40 - a b c d e f 45 - a b c d e f g 50 - a b c d e f g h i j k l
41 - a b c d e f g h i 46 - a b c d e f g h 51 - a b c d e f 
42 - a b c d e f g h i j 47 - a b c d e f g h i j k
43 - a b c d e f g h 48 - a b c d e f g h


第五章: 常しえに安らかなれ

52 - a b c d e f g 57 - a b c d e f g h i j k 62 - a b c d e f g h i j k
53 - a b c d e f g h i 58 - a b c d e f g h i 63 - a b c d e f g h i j
54 - a b c d e f g h i 59 - a b c d e f g 64 - a b c d e f g h
55 - a b c d e f g h i 60 - a b c d e f g h i 65 - a b c d e f g h i j
56 - a b c d e f g h 61 - a b c d e f g h 66 - a b c d


あとがき


[簡易紹介]

地名・組織名 登場人物 サブキャラ

 

[読み返しガイド] 

場所別

おまけ・番外編

拍手御礼01-05 拍手御礼06-10 拍手御礼11-15 拍手御礼16-
Valentine's Day 戦闘スタイルメモ 魔物特性メモ もしも彼女だけでも
2000の想い 100記事記念 200記事記念

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07:23:34 | 目次 | コメント(2) | page top↑
きみの黒土に沃ぐ赤
2030 / 12 / 14 ( Sat )
(きみのくろつちにそそぐあか) アルファポリス版



今夜、夫となる男と初めて顔を合わせる。
明後日、結婚式を挙げる。


そのはずだったが、物事は予定通りに進まず――  

波乱に立ち向かうか、安寧に逃げ戻るか。
選択の刻が迫る。


 零、きみと求める自由  a b

 一、ラピスマトリクスの涙  a b c d e f
 二、咲かせる花   a b c d e f g h
 三、危険な夜 a b c d e f g h i j
 四、予定がない午前 a b c d e f g h
 五、約束をつなぐ午後 a b c d e f

 五と六の合間 a b c

 六、決断を迫られ a b c d e f g
 七、善意のかがやき a b c d e f g h
 八、整理と采配 a b c d e f g h
 九、とんぼ返り a b c d e f g
 十、渦に呑まれるなかれ a b c d e

 人物紹介


【これは聖女ミスリア巡礼紀行と世界観が繋がってますが、独立して読める恋愛ファンタジーです。流血沙汰や狂気、死などのダーク要素が出ますので苦手な方はご注意ください】

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十 - e.
2017 / 10 / 18 ( Wed )
 狭い窓を無理に通ったせいで、セリカは身体中の至るところで鈍い痛みを感じていたが、それにかまっている場合ではなかった。自らの全体重を支える、縄代わりに結び継がれた布にしがみつくのに必死だ――たとえそれが両脇下にしっかりと結び付けられているとしても。
 薄気味の悪い闇に身を沈めてゆく。
 地面がまだ遠い、気がする。そろそろと壁伝いに下りながらそう思った。
 窓の外から縄を握っているハリャの腕は大丈夫だろうか。こちらの体重を支えているからにはかなりの無理をさせているに違いないのに、してやれることといえば、なるべく静かに急ぐことだけだった。

 ――それを垂らして掴まらせて、アダレム公子を引き上げるのね。
 ――いいえ、子供の腕力では酷です。公女殿下、中に降りて公子殿下にこの縄を結び付けてください。彼を引き上げた後に、今度は私が壁を上って公女殿下に縄を投げます。

 数分前のやり取りだ。扉の錠をこじ開けるより壁にとりついて窓から攻めた方が早いからとハリャが判断し、セリカが実行している。
 塔の窓は、狭くとも、細身の女や子供ならかろうじて通れる幅があった。しかし衣越しにも皮膚が擦れ、関節がレンガにぶつかって痛かった。戻りもまたあれを味わうのかと思うとうんざりだ。
 しばらくして靴の裏が地面に触れた。態勢を整え、折り曲げた膝を立たせる。

「おそとからきたのですか」
 ふいに聴こえた囁き声に、セリカは身を強張らせた。素早く振り返り、声の主を警戒する。
 子供が明かりの届く方へと這い出るのが薄っすらと見てとれた。普段と違ってターバンをしていなかったので咄嗟にわからなかった。
「アダレム公子」
 望んでいた人物に簡単に会えたことに安堵したかった、が。
 妙に胸が騒ぐ。塔の中の空気は重く、人の通常の臭気がお香に隠しきれていないような、何とも言えない臭いがした。

「ええ、そう、塔の外からね。あなたをここから連れ出しに来たわ」
「おそとはこわいところです。ひとのむれがいます」
 四つん這いの少年から、不可解な返事があった。意味がわからずにセリカはたじろいだ。
「ぼくは、おそとにでたら、やまい、にかかります。おそとは『あく』にみちています」

「何を言ってるの……」
「あくって、わるいことをするひと、かんがえるひと、だって。おねえさんは、わるいことかんがえますか。おそとのひとに、あったら、ぼくはしんじゃうんですか」
 質問の嵐に気圧されて、セリカは何も言えない。薄明かりに揺らめく瞳は清らかそうに見えて、同時に深い影を秘めていた。

(病って何? 体のこと、それとも比喩なの)
 答えを誤ったら、彼は一緒に来てはくれないのだろうか。言いようのないプレッシャーを感じながら、なんとか頭を働かせる。
 被り物を脱ぎ捨て、腰を低めて、六歳の公子と目線の高さを近付けてみた。

「怖い人じゃないわ。アダレム公子、前にもお会いしました、あたしはセリカといいます。隣の国からやってきた、あなたのお姉さんになる予定の姫です。この命に誓って、あなたに悪いことなんて、しません。考えません」
 幼児はむくりと起き上がった。
「おそとはこわいところです?」
 あぐらをかき、先ほどの言葉を繰り返すも、今度は疑問符がくっついていた。

「世界は怖いけど、怖いだけじゃないわ。あなたにひどいことをしようって思う人がいるのと同じくらい、あなたを守りたい人がいるはずよ」
 ――我ながら、安易な気休めだと思う。けれど子供に届くのはきっと、冷たい現実よりも心のこもったきれいごとの方だ。そう信じたかった。

 両の手の平を上向きに差し出し、敵意が無いことを表す。アダレムは、穴が開きそうなほどにセリカの手を見つめた。
 幼い彼の中にどのような葛藤があるのかは見当もつかない。つかないが、熱心に説得を続ける。

「外は楽しいこともいっぱいあるわ。かわいい動物も、きれいな花も、あと……」
「おおきなおそらと、そらとぶとりさん、います?」
 いつしか少年は前のめりになっていた。
「そう! そうよ、広い空を飛ぶ鳥がいるわ。もふもふのリスさんもいるわ」
「じゃあ、おそといきたいです。つれてってください、おひめのおねえさま」
「もちろん!」
 光の戻った目で、アダレムが立ち上がる。セリカはそんな彼に笑いかけながら、これから縄を結びつけることと、外で待っている宰相の味方がひっぱりあげてくれる旨を説明した。小さな公子は何度も頷いた。

 よかった、なんとかなりそうだ、そう思って縄に手を付ける――
 ふらりと空気が動いた気がした。
 覚束ない足取りで、人影が近づいてくる。この大きさは、アダレムの時と違う、大人のそれだ。

(他に誰かがいた……!? しまった、この人は!)
 ほっそりとした白い腕が伸びる。
「いかせません」
 女性の、震える声がした。

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23:32:52 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
ローズマカロンが本当に薔薇の香りで
2017 / 10 / 16 ( Mon )
びびっている。
うめえ…クリームが良いしコーヒーに合うわぁ…


進捗→たぶん明日更新再開します。

今日は9時まで起きなくて、最後の方はママンの脈をはかろうとする夢とか見たのですよ。なぜかうまくはかれなかったり数えているうちにどこまで数えたか忘れたりして、延々と「じっとしてて! もう! やり直し!」のやり取り。姉ちゃんが現れて「ちょうどいいから姉ちゃんはストップウォッチもって10分なったら教えて!」という謎指示を出したところで目が覚めました。脈はかるのに10分って……。

そういえば、叔母さんに「睡眠負債」という言葉をきいたんですが。めっちゃ的を射てる表現…そもそも寝不足って昨日今日の話じゃなくて長きにわたって蓄積されるんですよね。叔母さんもだけど、皆さんどうか気を付けてくださいませ…


朗報。9時まで寝ていられたってことはつまり、時差ボケが回復してるっぽい!

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06:20:57 | 余談 | コメント(0) | page top↑
めっちゃ時差がボケってるが
2017 / 10 / 12 ( Thu )
生きてます。帰ってきました。

送りたかったメッセージや書きたかった読書メーターの感想はこなしましたので、残すところは「リア住」の感想投下。本当はお絵描きなどもしたいのですがそんな余裕はまだ無い…w

その後には創作活動再開(`・ω・´)です

なんだかんだのんびりしてきましたよっと。水沼温泉と谷川温泉行ってきました。どんだけ風呂入ってんだよと親戚に突っ込まれましたが、こっちには温泉ないんだから一年分入っているようなものってことでw

あー 仕事たまってるうぜーw


それではまた後程にノシ

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00:16:01 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
飛行機に乗る予定の日は
2017 / 09 / 29 ( Fri )
そっわそわするねw!

別に今日は実家に帰るだけだし(飛行時間:2時間未満)今年でこの旅をするのはもう四度目なのに、仕事がまとまらない的なそわそわは普遍的であるw

ふははは

今日か明日、どんな時間配分になるかわからないけど、もしかしたら藻の更新くらいをする余裕があると…いいなあ。

またお会いしましょー(^▽^)/

(それと1000記事達成おめでとう私)

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22:09:27 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
十 - d.
2017 / 09 / 26 ( Tue )
「私も人と分かり合う努力から逃げ続けていた一人だ。偉そうに説教する権利は無いが……」
 いつしか俯いていたハティルの肩を、今度こそ掴んだ。目が合うのを待ってから、続きを綴る。
「お前は一度でも、アダレムにどうしたいか訊いたことがあるか」

「無意味ですよ」
「対立を失くしたいなら、結託すればいい」
「無理です」
 目を逸らされ、肩の手も払われた。エランは頭の中で何かが弾ける音を聞いた。

「頭ごなしに否定するな! 私たちは翻弄されるだけの傀儡じゃない、意思の通う人間だ。操らんとする糸を断ち切ることだってできる!」
「……エラン兄上が大声を出せる人だったとは、驚きました」
 それまで鬱々としていたハティルの応答が、ふと感心したような色味を帯びた。
「私自身が一番驚いている。ここ数日で色々あったからな」

「他人(ひと)の為にこんなに必死になれるんですね」
「お前の気持ちがわかるとは言い難いが、アダレムの今の状況は他人事と思えない。私もかつては……そうだな、ちょうどお前が産まれた頃のことだ。一時期、軟禁されていた」
 語られた内容に興味を惹かれたのか、ハティルは瞳の焦点をこちらに戻しかける。すんでのところで思い直し、背を向けた。

「全て遅すぎます。結託どころか、アダレムが僕と関わりたいはずがない。それにもう、父上は」
「待て。話はまだ終わっていない」
 そう言って手を伸ばした時――
 隣の建物が急に騒がしくなった。直感的にエランは、事の重大さを汲み取った。
 最も恐れていた凶報が、雨音をかいくぐって耳朶に届く。

 自らに訪れた感情の揺れは、目の前の少年の表情の移ろいとほぼ合致した。
 驚嘆。そろそろ起こりうるだろうと予想していた事態の訪れを、それでも信じたくないという心の拒否。来(きた)る動乱への恐れ。焦燥、再び驚愕。とにかく途方に暮れる。
 次にハティルがこちらを見上げた頃には、ひどく複雑な顔をしていた。

「身罷られた……? ああ、悪いのは父上だ。僕らをさんざん振り回し、果てには勝手に死んでいった、父上が悪いんです」
 どうすればいいですか、と唇の動きだけで訴えられる。面貌には六歳年上の兄に助けを求める弟の弱さと、決裂を前にして加害者に転じかけている男の凶暴さが同居していた。
 お前は真面目だな、とエランは苦笑した。

「考えたくない。僕はもう、何も、考えたくないです」
「わかった。なら、こうしよう」
 耳障りなほどにゆっくりと、エランは愛用のペシュカブズを鞘から解放した。
「正式に決闘を宣言して、証人を呼んでもいい。代理を立ててもいいぞ」
 体格的に不利なハティルへの、配慮のつもりで言った。次いで、勝者敗者に課せられる条件を提示した。

 ハティルは押し黙って聞いている。
 話が終わると、釣り気味の目を一度細めてから、腰に手をやった。
 鞘に組み込まれたまろやかな赤いオニキス、柄を彩る透き通った青いトパーズ、刀身に施された複雑な紋様。宝刀としての美しさのみで比べるならば、ハティルの賜ったそれの方が上等だ。大公ではなく母方の祖父からの贈り物だったという。

 同じ型のナイフでありながらも子供の手で振るえるような小ぶりで、使い込んでいる痕跡も無い。
 第六公子はまだ成人していない。ゆえに帯剣していても道具そのものは実用性よりも見た目重視で、本人の戦闘経験も浅い。

 だがハティルは自ら凶器を構えた。全ての不利もリスクも承知の上で、挑戦を受けるとの意思表明だ。
 立ち会う者が居ないのなら、どちらかがうっかり手を滑らせて相手を殺してしまっても仕方ない。決闘だと思っているのは個人だけで、両方が生き残って話がかみ合わなかったならただの殺し合いになるが――

 稲妻が天に閃く。
 後を追うように轟音が落ちる寸前、刹那の眩さの下で――エランは弟が悪意に微笑むのを確かに視認した。
 どちらからともなく、動いた。

_______

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06:31:14 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
十 - c.
2017 / 09 / 23 ( Sat )
「謝りませんよ」
 微笑。十二歳といえど、誰よりも宮中の悪意の波に揉まれてきた公子だ。容易に腹の内を探らせてはくれない。
「お前とアスト兄上のせいで多大な迷惑を被ったわけだが、それとお前を憎むのとは、違うと思っている」
「さすが寛大ですね」
 抑揚のない声が返る。エランは思わず頭をかいた。

 ――腹を立てているのは確かだが、怒りの矛先は、己が内に向けられているのだ。
 それをどうやって伝えるか、そもそも伝えるべきなのか、考えあぐねている。今は自分のことよりハティルだ。

「継承権がそんなに欲しいか」
「欲しくなんてありませんよ、そんなもの」
 少年は低い声で吐き捨てた。何やら聞き覚えのある台詞で、まるで自分と話しているような錯覚に陥る。
 ここに引っ掛かりを覚えたエランは、雨水を吸いつつあるターバンの布を耳にかけた。視界を開くためではなく――右目が使いものにならないのだからそんなことはできない――なんとなく相手に素顔を見せるべきだと感じたのである。

「欲しくないが、手にする必要があるんだな」
「…………」
「沈黙は肯定と同義。だが大公の座を望まないなら、こうまでする動機がわからない。 脚光をさらったアダレムへの腹いせか? アスト兄上と手を組んだなら最終目的は国土の拡大、或いは帝国への報復か」
 末子の名を聞いた時だけ、ハティルが僅かに身じろぎした。

「どうやらアダレムに絡んでいるのは間違いないようだな。お前は、先見の明と視野の広さを持っていると思ったが、こんなことをしでかすとは」
「知った風な口をきかないでください。年に何度と帰らないあなたに、何がわかりますか」
「わからないからこうして探っている」
「――今更何を!」
 突然ハティルが声を荒げた。見上げる双眸は鋭い。一瞬、気圧されたほどだ。

「周りに積極的に関わろうとしなかった非は確かに認める。だから改めて聞かせてくれ。ハティル、お前は何をそんなに追い詰められている?」
 問いの答えが出るまでに、しばしの間があった。薔薇の花びらを打つ雨の音がやけに大きく響いた。
 雨に濡れながら少年の唇が何度も開閉する。

「わかりますか。周囲の期待を一身に浴びて育つ幼き日を。後に生まれた赤子に夢を奪われる虚しさを。けれど何より、自分が当たり前のように受け入れ望んでいたものが――どこにも存在しないのだと知るのが、どれほど苦しいかわかりますか!」
「わかるか」突き放すような見下すような言い草に苛立ち、エランはつい嘲った。「お前は、不幸自慢がしたいだけか?」

 暗に「甘ったれるな」と言ってやった。
 不運のエピソードで競うのは筋違いだが、エランにもそれなりに引き出しがある。察しの良いハティルもそのことに思い至り、乾いた笑いを漏らした。
「……失礼、あなた相手にこんな話は不毛ですね。それに、公子は誰しも一度は『末子』だった……」
 違うんです、と彼は頭を振った。

「選択肢があるから人は迷い、争う」
「それには私も同意見だが。選択肢は自由そのものだ」
 雨音が大きくなっている。互いの言葉を伝え合うには、声を張り上げる必要があった。
「自由は大事です。でも僕はそれよりも、対立の無い世界であればいいと思ってます」
「お前の言う世界はこの国のみを指すのか。わかっているだろうが、アスト兄上を引き込んだからには――」

「大義名分が立つぶんだけいいじゃないですか! 内紛に裂かれるのだけはあってはならない。愚かで醜い、兄弟喧嘩が勃発するよりは! 帝国に挑んだ方がまだ美談になる!」
「美談……!? そんなものは世迷言だ!」
 話がかみ合わなくなった手応えを感じ、エランは拳を握る。
「僕ら兄弟はその危うさに見てみぬふりをしているだけです。いつでも殺し合うつもりで笑い合っている。そうでしょう、エラン兄上。ベネ兄上たちだって」
「…………」
 否定しようにも、できなかった。ハティルは尚もまくし立てる。

「母が同じなのに、同じ側に居るはずなのに、アダレムから遠く離れてしまった。僕は……期待されていると、思っていた。けれど褒める語句を並べながらも、有象無象が求めていた傀儡こそがアダレムだった。御しやすい、駒なんです。そうとわかった時、自分が信じて浸っていた『期待』が、巧妙な嘘だったと理解しました」
「奴らにしてみればお前の聡明さは邪魔だろうな。だがアダレムを幽閉したお前は、その有象無象とどう違う?」
 ちがいませんね、とハティルは額を押さえて笑った。泣いているようにも見えた。雨のせいで判然としない。

「あの無邪気な瞳を向けられる度に――僕はただ一人の弟を、汚(けが)れ潰れる前に救ってやりたいと想い、同時に首を絞めてやりたいと思いましたよ。人の気も知れずに、なんて能天気なんだろうって」
 ――痛々しい告白だった。
 細い両肩を掴んで目を覚ませと揺さぶってやりたかった。かろうじて、堪える。

「あの子は大公になってはいけない。けれど、僕らが表立って対立したら、諍いが長引いてどんな結果を生むか知れない。父上が悪いんですよ。ハッキリしないから」
「ハティル、私はお前が共謀者に何故アスト兄上を選んだのか、わかった気がする。明晰がゆえに慎重になりすぎるお前と違って、思い切りがいいからだ。しがらみをものともしない自由さがあるからだ」

「……どういう意味です」
「お前のそれは合理的な結論に聞こえるが、違う。逃げているだけだ。一丸となってうまくやっていけなくてもいい。共存する努力すらせず、最悪の結末に怯えていていいのか!」
「意外と理想主義なんですね! うまくやっていこうだなんて」
「理想を追い求めるあまり、極論に走っているのはお前の方だ!」
「そう、かもしれません」




頭が痛くなるような会話ばっかりでスミマセン((
作者はヌンディーク兄弟みんな気に入ってます。

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07:17:54 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
十 - b.
2017 / 09 / 21 ( Thu )
「所領の方はもうよろしいので?」
「問題ない」
 エランは短く答えた。
「そうですか、それは安心いたしました。殿下の身を案じてセリカラーサ公女までもが都を飛び出したと聞いた時は心臓が潰れるかと思いましたよ。無事に合流できたのですね?」

 これらは、エランらがムゥダ=ヴァハナを逃れた後に広まった虚構だ。徹底的に根回しをされていたのか、今こうして戻っても、去った前日の空気とまるで変わらない。自分だけが蚊帳の外に放り出されたのかと疑うような、異様さがある。
 裏を返せばここにつけ入る隙がある。あくまで向こうが不正をしていない体(てい)でのし上がりたいのであれば――こちらが動くほどに計画は綻ぶ。

「ああ、この通りだ。しかし公女殿下は長旅でお疲れのようだ、すぐに部屋で休ませる」
 エランは自らの背後を示した。武装した兵士が七人と、全身を布で覆ったすらりとした物腰の女性が佇んでいる。
 当然ながらこの女性はセリカ本人ではない。イルッシオ公子から借りた兵士の一人がちょうどいい体格だったので身代わりに立てたのである。全ての事情を聞き知っている宰相は、自然な所作と流暢な言で話を合わせてくれた。
 そこかしこで聞き耳を立てているであろう連中の為の演出だ。

「……時に殿下」背の高い宰相は身を屈めて声を潜めた。「頼まれていた調べ事ですが、結果から言って『可能です』。前例があります上、法典の中には反する記述がありません」
「そうか。何から何まで恩に着る」
「なんの、目的が一致する限り、我々は協力を惜しみません。ご武運を」
 歪な笑みを浮かべたかと思えば、宰相は優雅に礼をしてその場を辞した。

 エランも身代わりの「姫」を寝室まで送り、大公の住まう区画へ向かった。
 移動しながら、なるべくゼテミアンの兵士を周りに印象付ける。彼らを実際に戦わせることになるかは不明だが、こうして連れているだけでも抑止力になるだろう。
 父がいるはずの建物の前まで来て、ついに足止めをされた。

「何人たりとも面会できません。医師さまからのお達しです!」
 頑なな拒絶と厳重な警備は予想していたことだ。エランは涼しい顔で「そうか」と頷いた。眼球のみを動かして、周囲を観察する。
(過剰なまでの緊張感。これは、どっちだ? 父上の死を隠蔽しているがゆえか、それとも本当に危篤なのか)
 結局そのところは探り切ることができなかった。勘で当ててみるならば、後者ではないかと思う。

 すぐに勘よりも当てになる情報源が現れたので、思考を一度切り替えることにした。深刻な顔をして外付けの階段を下りる者をさりげなく瞥見する。取り巻きを伴って出てきたのは、エランが現在最も会いたい人物――第六公子その人であった。
 地上に降りると、少年は心底驚いた表情でこちらに歩み寄った。

「エラン兄上、お帰りなさい。思ったより早かったですね」
「そうだな。案外早く片付いた」
 白々しい笑顔と挨拶が交わされる。場がざわついたようだが、エランは目の前のハティルのみに集中しているため、取り巻き連中が何を言っているのかは全く耳に入れていない。

 ――穏便に交渉したい。
 しかし相反する想いも持ち合わせていたのか、自覚していた以上に腹を立てていたのか、口からは穏便ではなく高圧的な物言いが飛び出ていた。

「よし。ツラ貸せ、ハティル」
「それはどういう……?」
 聞き覚えの無い誘い文句だったのだろう、意味がわからずに少年は瞬いた。
「ついて来い。話をしよう。そうだな、隣の屋上薔薇園なんてどうだ」
「わかりました」
 聡い弟はひと思案した後、従順そうに頷いて見せた。

 そうして階段を上り、件(くだん)の薔薇園に踏み入る。
 双方の暗黙の了解で付き人は連れていない。静かな場所で薔薇の香りに包まれながら、エランは切り出す言葉に窮していた。
 雨粒が肌を打つのを感じる。あまり長く話ができないかもしれないな、とぼんやり思った。

「僕が憎いですか」
 やがてハティルの方から口火を切った。感情を抑えているような声色だった。
 エランは特大のため息をついてから、弟を見据える。
「……その質問には答えづらい」

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