忍者ブログ
はじめに読んでください
2030 / 12 / 17 ( Tue )
こんにちは。はじめまして。
甲(きのえ)といいます。

かつてまだ厨二病が癒えなかった頃、サイトを立ち上げて創作小説を公開していました。
あれからだいぶ経ち、諸々の事情あってサイトは長らく放置してきました。

今回ブログを作ってみたのは、ちまちま小説を書いていくには管理しやすく適していそうだなと考えたからです。

たまったら校正し、サイトのほうで載せなおしてみようかと思います。


<http://nanatsukai.lv9.org> 


少しでも楽しんでいただけると幸いです。


*******

「聖女ミスリア巡礼紀行」について。

この話自体は私の中ではこれでも新しい方ですが、何度か練り直してるうちに結構いい感じに世界観が発達してきたので、他の古い話よりも今書きたいと思いました。

アクションやら化け物やら組織やらいろいろ出ますが、元は単なる「旅する男女」を書きたくて練った話です。あまり深く考えすぎないでそこをがんばります。

なお、極端な表現は抑えますが、多少の残虐非道な行為・発言または性的描写は含むかもしれませんので、15歳未満の方は閲覧を遠慮してください。なるべく誰も不快にさせないよう極力気をつけます。

最後に、作中に主張される信念や思想は私の脳から出たものであってもすべてを私が支持しているわけではありません。あくまでフィクションです。


*******

初めていらっしゃるお客様はまずサイトの方のインターフェイスを試しに見て行ってください。本編は長いので最初はブログよりもサイトで見た方が読みやすいと思います。ブログで読む方は下の目次記事へどうぞ。

一節ずつが長すぎて読みにくくならないように、数字のあとに小文字でabcとつけて整理しています。本編はどの記事も大体5分以内で読めるでしょう。

*閲覧推奨ブラウザ: Firefox, Google Chrome (なぜかテンプレがIEと相性悪いようです)

感想はコメント・拍手でも何でもどんと来いです お待ちしてます(・∀・)


ではよろしくお願いします!




←検索サイト・ランキングに参加してます。よかったら押してください

拍手[11回]

PR

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

23:59:59 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
本編目次
2030 / 12 / 17 ( Tue )

混沌に満ちた架空の大陸を舞台にした長編ダーク・ハイファンタジーです。
世界を救うために旅立ってますが、
その実主人公たちは別の何かを 探しているのかもしれません。

ナビゲーションにお役立て下さい。


第一章: 行路を織り成す選択の連なり

01 06 - a b c d e f g 11 - a b c d e f g h
02 - a b c d e f 07 - a b c d e f 12 - a b c d e f g h i j k
03 - a b c d e f g h 08 - a b c d e f g h 13 - a b c d e f
04 - a b c d e 09 - a b c d e 14 - a b c d e f g h i j
05 - a b c d e f 10 - a b c d e f g h i j  


第二章: 聖地を巡る意味

15 - a b c d e f g h i j 19 - a b c d e f 23 - a b c d e f g
16 - a b c d e f g 20 - a b c d e f g h i 24 - a b c d e f g
17 - a b c d e f g h 21 - a b c d e f g h i 25 - a b c d e f
18 - a b c d e f g h i j 22 - a b c d e f g 26 - a b c d e f g h i j k


第三章: この世で最も価値がある

27 - a b c d e f g h 31 - a b c d e f g 35 - a b c d e f g h i j
28 - a b c d e f g h i 32 - a b c d e f g h i j 36 - a b c d e f
29 - a b c d e f 33 - a b c d e f g 37 - a b c d e f g h i
30 - a b c d e f g h i 34 - a b c d e f g 38 - a b c d e f g


第四章: 満たされんとして追う

39 - a b c d e f g 44 - a b c d e f g h i j 49 - a b c d e f g h i
40 - a b c d e f 45 - a b c d e f g 50 - a b c d e f g h i j k l
41 - a b c d e f g h i 46 - a b c d e f g h 51 - a b c d e f 
42 - a b c d e f g h i j 47 - a b c d e f g h i j k
43 - a b c d e f g h 48 - a b c d e f g h


第五章: 常しえに安らかなれ

52 - a b c d e f g 57 - a b c d e f g h i j k 62 - a b c d e f g h i j k
53 - a b c d e f g h i 58 - a b c d e f g h i 63 - a b c d e f g h i j
54 - a b c d e f g h i 59 - a b c d e f g 64 - a b c d e f g h
55 - a b c d e f g h i 60 - a b c d e f g h i 65 - a b c d e f g h i j
56 - a b c d e f g h 61 - a b c d e f g h 66 - a b c d


あとがき


[簡易紹介]

地名・組織名 登場人物 サブキャラ

 

[読み返しガイド] 

場所別

おまけ・番外編

拍手御礼01-05 拍手御礼06-10 拍手御礼11-15
Valentine's Day 戦闘スタイルメモ 魔物特性メモ もしも彼女だけでも
2000の想い 100記事記念 200記事記念

拍手[30回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

07:23:34 | 目次 | コメント(2) | page top↑
きみの黒土に沃ぐ赤
2030 / 12 / 14 ( Sat )
(きみのくろつちにそそぐあか)



今夜、夫となる男と初めて顔を合わせる。
明後日、結婚式を挙げる。


そのはずだったが、物事は予定通りに進まず――  

波乱に立ち向かうか、安寧に逃げ戻るか。
選択の刻が迫る。


 零、きみと求める自由  a b
 一、ラピスマトリクスの涙  a b c d e f
 二、咲かせる花   a b c d e f g h
 三、危険な夜 a b c d e f g h i j
 四、予定がない午前 a b c d e f g h
 五、約束をつなぐ午後  a b c d e f

 人物紹介



【これは聖女ミスリア巡礼紀行と世界観が繋がってますが、独立して読める恋愛ファンタジーです。流血沙汰や狂気、死などのダーク要素が出ますので苦手な方はご注意ください】

拍手[0回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

00:00:00 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
レアものヨ
2017 / 05 / 23 ( Tue )
そういえば、まるまる一話を一場面だけで書き切ったのって(12000字前後)なかなかレアじゃないですか? 零話は別として。

ちょっとタイトル回収もし…たよ。
焦土、涅(泥)、真心、赤、ボーナス:血で浸される国土

キーワードがしつこくなってきたところでやめますww

次回更新の前に書き溜めしたいし、藻も書きたいしで、次回は木曜日くらいを目指します。お待たせしてしまってすみません! でもその分より面白いものをお届けできたらなぁと思います。あと二人の衣装がややこしいので一度キャラデザ代わりの落書きをしたいです。

そうそう、カクヨムでじわじわ転載してた滝神があと一話でおしまいです(本編は)。久しぶりに読み返したりして、たった二年前のことなのに遠い昔の自分のような、本当にこれ私が書いたのかみたいな気持ちになりました…。


余談。
ベルセルクのアニメ貪ってる、くっそ面白いな。完敗。戦えてもいないけどさw
自分の造ってる物語がもれなく陳腐に思えてくるから商業作品は不思議だよww

拍手[0回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

03:56:14 | 余談 | コメント(0) | page top↑
五 あとがき
2017 / 05 / 21 ( Sun )
これからごはんの時間だから手短にすませるよ!


拍手[0回]

続きを読む

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

09:37:45 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
五 - f.
2017 / 05 / 21 ( Sun )
「ほんと? 楽しみにしてる!」
 頬が緩むのがわかる。遊び相手となることを、彼は承諾してくれた。好きなものを好きなままでいいと、暗に伝えているようだ。
 ああ、と頷いたエランの表情も心なしか柔らかい。

 上機嫌にセリカは膝を下ろして座り直した。言いたいことを言い切って胸の内が軽くなり、後は大人しく答えを待つだけである。いつまでも待っていられそうな気がした。
 とはいえ、待たされた時間は三呼吸ほどだった。微かに甘い息で青年は語り出す。

「男児の宿命は野望大望を抱いてこそ果たされる、とアスト兄上は言った」
「……憶えているわ」
 まさに昨夜の晩餐会でそんな談話をした。宴の席で第二公子は「ディーナジャーヤ帝国に刃を向けて、属国をやめよう」と発言をしたのである。平和な時代に生まれ育ったセリカにしてみれば、肝が冷える思想だった。

 他の公子たちにとってもそうだったのだろう。確か第一公子ベネフォーリは「他の者が聞いたら派閥争いの種だ! 軽々しくそんな提案をするな」と注意し、第三公子ウドゥアルは「今から自立するの大変だろー?」と面倒臭そうに聞き流し、第六公子は「後先考えずに喋らないでください」と頭を抱えた。

(そういえばエランの反応はかなり冷ややかだったわ)
 例の作り笑いを浮かべてこう言ったのである。
 ――属国をやめるのは、四国間の協定から抜けるのと同義。アスト兄上は国土を血の海で浸したいのですね。
 ――まさか! 私は血なんて大嫌いだよ。でも、見てみたいと思うだろう? 己が国が大帝国を打ち負かす未来を――
 思い出しただけで、背筋がすうっと冷える。難しい話はわからないが、危険な考え方であるのは間違いない。

「何が宿命だ。公都に居れば公子、所領に帰れば領主……こんな人生でも、たまには心穏やかに過ごせる場所が欲しい。幸いにも、妃となれば堂々と連れ回せる」
 かくして野望の話題が、伴侶の話と繋がった。
(張り合いが無くても重圧はあるのね)
 第五公子であり第三公位継承者という立場に、セリカは同情を覚える。

「あたしは……喜んで連れ回されますよ」
 狭い世界で送る日々に辟易していたセリカには、むしろ移動させられるのは願ったりである。
「そうだろうと思っていたが、お前の口から聞けて安心した」
 セリカは相槌を打ち損ねた。留意すべき点は「心穏やかに過ごす場所」という表現ではないか。柔和な性格をした淑女ならともかく、自分に到底務まるような役割ではないように感じられる。

「つまるところ私は――……甘える相手……が、欲しかった……」
 歯切れの悪い告白の後、青年はまた顔を逸らして唇を噛んでいた。多分照れているのだというその所作を、何度も瞬きながら眺める。
 そこであることに思い至って、セリカは口を挟んだ。

「つかぬことをお訊きしますがエランディーク公子さまは今年でお幾つなのでしょうか」
「……去年の秋に十八になったが」
 訝しむ視線が返る。
「そうでございますか」
「歳がどうかしたか。後その改まった口調はどうした」
 なんでもない、とセリカは頭と両手を振った。

(年下だった)
 わけもなく衝撃を受けた。半年程度なんて大した差ではない、そう自分に言い聞かせる。
 束の間の沈黙を置いて、エランは新たに話し始めた。
「十五歳になった時、成人祝いと称して父上が私の寝間に女を呼びつけた」
「そ、そう」

「それからも宴の度に誰かがそういう者を手配している。断ってもややこしくなるからと、楽しめるだけ楽しんではいたが。名も知らない女ばかりだった」
「…………」
「遍歴はそんなものだ。私は、特別な相手を持ったことは無いし、持とうと考えたことも無い」
「ん?」
 黙って聞いていたセリカは、ふと引っかかるものを感じて首を傾げた。
 青灰色の瞳が靄の向こうからじっと見つめてくる。蝋燭の光がちらちらと映る様子が妖しく、見入った。

「さっきの話だ。国の政略で結婚させられるであろうことは、遥か以前から理解していた。なら、側室も愛妾も必要ない。いずれ与えられる妃の為に取っておきたかった」
 取っておいたのが何なのかまでは名言されなかったが、なんとなく伝わった。

(ああそうか。エランがあたしに構うのは責任感からじゃなくて……誠意、なんだ)
 セリカは微笑混じりに息を吐く。すとん、と腑に落ちるものがあったのだ。
「すごい。誠実なんですね」
「……? どうも」
 疑問符を飛ばすエランに向けて、気が付けば頭を下げていた。絨毯の上で両手を揃え、その上に額をのせる。

「ごめんなさい」
「待て、私は何を謝られている」
 心底わからないと声音が訴えかけてくる。セリカは平伏の体勢を維持した。
「それに比べるとあたしは全然ダメね。どうせ親が決める結婚相手だからって、諦めがあったの。まだ見ぬ伴侶との将来を大事にしたいとか、ちゃんと向き合おうとか、考えてもみなかったわ」
 一拍置いて、締めくくりの口上を述べる。

「ここに誠心誠意、これまでの非礼を詫びます」
「…………」
 数秒間、うるさく鼓動を打つ心臓の音だけが頭の中で響いた。
 ――なんとか言ってよ。
 そう、心中で念じてみたりもした。やがて静かな笑い声が降ってきた。

「お前の言い分はわかった。それは絨毯に額をこすりつけるほどのことか?」
「ほどのことだと思ったのよ」
 そう言い返せばやはり笑い声がした。
「顔を上げてくれ、セリカ」
 乞われた通りに上体を起こして、驚きの発見をする。

(おや、いい笑顔)
 嫌々口角を上げて作られたものではなく、本気で楽しそうに笑っている。半分しか見れないのが惜しいと思った。
(いつかは素顔見せてくれるかな。いつか、でいいわ)
 二度と無理強いをしたくないのだから。

「著名な哲学者が、赤を真心や情熱の色とたとえていたな。そんなに身に着けていれば大丈夫だ」
「心構えに、色関係ある?」
「どうだろうな。それにしてもお前は私を面白い人間と評したが、私にしてみればお前の方がよほど面白い」
 これにはセリカも笑うしかなかった。

「エランの期待に応えられるかわからないけど、これからはちゃんと歩み寄るわ。差し当たり、遠乗りに連れて行ってくれるのよね」
 そうだ、と彼は首肯した。
「約束よ。絶対だからね」
 ゴブレットを差し向けて、乾杯しようとの意を示す。青年は瞬時に意を汲んで、自らのゴブレットを持ち上げた。

「わかっている。私は果たせない約束は最初からしない」
 ――キン。
 鉄同士が接触し、小気味いい音を響かせる。余韻がまだ耳朶に残る内に、セリカはひと思いに中身を空けた。

 それから先、意識が曖昧となった。くだらないことを口走ったかもしれないし、睡魔に襲われてだらしない姿を晒したかもしれない。何にせよ――
 とても、満たされた気分だった。

拍手[1回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

09:28:35 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
五 - e.
2017 / 05 / 18 ( Thu )
(口説かれているのだとしても……)
 検証の仕方がわからないのが本音である。これまでの人生を振り返ってみても、異性にこんなことを言われたのは初めてだった。
 それもそのはず、公女という身分が壁となっていたのだ。兄弟の友人も、宮殿に仕える使用人も役人も、たまに会話してくれた兵士や護衛ですら、一線を引いて接してきた。

 引き合いに出せるものと言えば、経験ではなく聞いた話か架空の物語。しかしそこからも役に立つ情報は得られない――相手の真意を測る為に欠かせないとされるのは「顔」で、この場合は、赤面をしているのか否かだ。
 残念ながら元々エランは褐色肌で顔色が窺いづらい上、もう日はほとんど暮れてしまっていて暗い。蝋燭の明かりの中では、誰であっても赤みを帯びているように見えよう。

(水蒸気も邪魔ね。払いたいけど、手で煽いだら挙動不審か)
 残された手段は言葉で本意を引き出すくらいである。
 いくら歯に衣着せぬセリカでも直接訊くのはさすがに憚れる。けれども、喋って欲しいと彼は言った。この機会に思い切ってひとつ核心に迫る問答をしてもバチは当たらないのではないか?

「……あのね。だったらあんたに……訊きたいことがあるわ」
 目線を彷徨わせて呟く。
「何だ」
 靄が僅かに薄まった。こちらに首を巡らせた青年は、いかにも答えてくれそうな姿勢を見せている。

 セリカはすぐには言葉を組み立てることができず、膝上に両手を握らせたり、貴金属の腕輪を触ったりした。
 沈黙が重い。
 間を置けば置くほど言い出すのが難しくなりそうだ。意を決し、勢い込んで声量を上げる。

「こ、この際だからはっきり教えて。エランは結婚相手に、何を求めてるの」
 青灰色の瞳を真っ直ぐに見つめて訊ねた。
 不意を突いたらしい。あれほど穏やかに続いていた呼吸が突如として乱れ、青年は二、三度咳き込んだ。散った水蒸気からタバコの甘ったるくて濃密な香りが漂う。他人の吐いた息をそっくりそのまま自分の中に取り込んでいるみたいで、セリカは落ち着かない心持ちになる。

「……――いきなりそれを訊かれると答えづらい」
 その声がどこか恨めしそうに聴こえたのは、気のせいだろうか。それとも噎せて息苦しいだけなのか。
「そうかしら」
「ならお前はどうなんだ」
 矛先を向けられて、セリカは怯んだ。

「う、わ……わかったわよ。じゃああたしから話す……から」
 今更ながら、なんて話を切り出してしまったんだと後悔した。相手に求める分だけ、己も本心を明かすのが道理である。
(ええと、何を求めているか、ね。あたしは婚約者にどうして欲しいんだっけ)
 言葉を探る。恥ずかしさに眩暈がする――酒が回ってきたからかもしれないが。やっぱりこの話は無かったことにしようかと、一瞬迷って、思い直す。

 ――取り消せない。だって自分は、知りたいのだから。
 そして多分、知って欲しくもあるのだろう。

「あたしは、ね。リューキネ公女が愛妾って名乗った時……まあ仕方ないと思ったわ」
 視界の端でエランが眉を吊り上げたのが目に入った。構わずに話し続ける。
「親が決めた婚姻だもの、不都合ばかりだろうなって最初から予想してたのよ。だから婚約者に、他に腕に抱きたい相手がいても……夫婦間に愛が育めなくても、義務を最低限果たせればそれでいいかなって」

 ここまで言って、空しさを覚える。
 セリカは膝を抱えて丸まった。宵闇を見上げて小さくため息を吐く。

「ほら、あたしってこんなだから、女社会にほとんど溶け込めないでいるわ。だからせめて結婚する男とはわかり合ってみたかった。恋愛じゃなくても良好な関係を――つまりあたしが欲しかったのは…………遊び相手? って言い方は、なんか変ね。えっと……相手をしてくれる人。姫らしさがどうとか言わずに、一緒に色んなことに付き合ってくれないかなって、ちょっと期待してた」

 愛情や友情が無くてもいい。足並みが揃わなくてもいい。時々構ってくれれば、それで充分だ。

「対等な関係じゃなくても我慢するから、女友達が付き合ってくれない遊びに――」
「何故、過去形で語る」
「え」
 反射的に視線を右横へ向けた。すぐ近くでエランは呆れたような顔をしていた。

「まるで望みを捨てたみたいに話すんだな。それくらいなら叶えてやれるが」
「え?」
 この独白は、笑い飛ばされるか流されるものかと思っていた。真剣に取り合ってもらえるものとは思わなかったので、セリカは間の抜けた返事しかできなかった。

「武術の稽古がしたくても、私は止めない。共に弓を引くのは無理だが……そうだ、遠乗りにでも行くか」
「ええ、遠乗り!? いいの!」
 食いつかずにはいられない提案である。思わず身を乗り出した。が、すぐに鼻先の近さに仰天して後退る。
 エランは苦笑して話を続けた。

「ルシャンフは限りない空と、雄大な大草原の地だ。馬を走らせると爽快だぞ。お前の知らない『自由』を見せてやろうか」
 挑戦的とも取れる笑み。
 対するセリカは、子供みたいに心が躍るのを自覚した。それはきっと双眸に、声や表情に、滲み出ていることだろう。

拍手[1回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

11:42:57 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
五 - d.
2017 / 05 / 15 ( Mon )
「元から、突然体調が崩れることがあった。今回が特に危険かはわからない」
 無感動に彼は語る。「常時この城に専属医が居るように、聖人聖女もひとり雇いたかったようだが……彼らはそういう依頼を受けないらしい」

「そうでしょうね」
 聖人または聖女とは――このアルシュント大陸の中北部に拠点を置く唯一にして最大の宗教機関、ヴィールヴ=ハイス教団が育て上げている特殊な聖職者の称号だ。傷や病を不思議な力で治せる貴重な人材であり、いくつか他にも重要な役割がある。セリカも一度や二度は会ったことがある。

 天性の素質と厳しい訓練の両方が欠かせないため、その数は極端に少ない。「人類の宝」とも称される彼らは、その特殊能力を大陸の民になるべく平等に――時には最もそれを必要としている地域に――もたらす為に常に旅をしているらしい。為政者だからと優先的に治すことは、教団の道徳観にそぐわないのだろう。

(怪我と比べて病気への効力はムラがあるのよね、確か)
 であれば、どのみち常駐の者がいたからと言って助かるとも限らない。
 難儀ね――とセリカは小さく感想を漏らした。隣の公子は何も反応しない。
(病だけじゃなくて人間関係も難儀みたい)
 正面を向き直り、果実酒を更に喉に流し込む。初めはまろやかに感じていた喉越しも、量を経る内に次第に辛いような気がしてきた。

 空の色合いが翳ってきて魅惑的だなあ、などとぼんやり思い始めた頃。ふいに空気が動き、蝋燭の炎が揺らめいた。
 エランが立ち上がって寝床の脇を漁りに行ったのである。しばらくして、見覚えの無い道具を持って戻ってきた。

 奇妙な形の器だった。黄銅でできた管のようだが、最下部と最上部は幅広くて丸い。最下部の丸みからは細長い管が枝分かれて突き出ている。
 天辺の蓋をパカッと開けて、エランがこちらを一瞥する。

「吸ってもいいか」
「構わないわ。ていうか喫煙具だったのね、それ」
 ゼテミアン公国で見てきた煙管の類とは大分違う――彼がその器具を準備する手順を、興味深く眺めた。
「ここではガリヤーンと呼ぶ。濡れたタバコを用いた吸い方だ。まあ、人が集まれば大抵誰かが引っ張り出してくる」
 各部位は取り外し可能らしい。最下部に水を入れ、上の方にはぬちゃっとした、おそらくタバコである塊を詰めている。

「昨夜は見なかったけど」
「女子供の比率が高かったからだろう。そういう場では、あまり褒められたものじゃない」
「どうして?」
「知らん。かつて誰かが言い始めたからそうなったんじゃないか」
「伝統って時々いい加減よね……」

「吸ってみたいのか」
「ううん、興味ないわ」
 エランが一個の石炭に火を点けた。トングで挟んでガリヤーンの最上部にのせ、蓋をする。それから数秒ほどして、枝分かれしている方の管に口を付ける。

「あんたは好きなの?」
 長い息を吸って、吐いて、やがて青年は答えた。
「それなりには」
「ふうん」
 喫煙している時の音や臭いに不快感は無く、ただなんとなくエランは今くつろいでいるのだという印象を受けるだけだった。片膝を立てて空を仰いでいる姿勢からも、気が緩んでいるのがわかる。

 先ほどまでにこの屋根上を満たしていた緊張感はいずこへと消えていた。セリカも幾分くつろげた気分になっている。酒の効果もあって、ふわふわとした温かさが手足を駆け巡っていた。
 目を細めて夜の風を頬に感じる。被り物をしていなければもっと気持ちよかったのかな、でも寒かったかも、と緩やかに思考を巡らせ――

「何か喋ってくれ」
 その一言は、ともすればせっかくのくつろぎ空間を台無しにしかねなかった。無意識に口を尖らせる。
「無理して会話を続けなくてもいいでしょ。静かに座ってるだけの時間も、あたしは嫌じゃないわ。気になるならこの前みたいに笛を……って、吸ってるんだからダメか」
「私も別に、静寂が嫌ということはない」

「じゃあ何が」
「静寂は好きだが、お前の声も話も結構好きだから、もっと話してくれないだろうかと思って」
 遮ってまで被せられた言葉は、意外なものだった。
 もやぁっと水蒸気が辺りに広がる。セリカは靄を見つめたまま絶句した。

(公子サマ、それはどういうアレですか。口説いてるんですか)
 相手の表情が見えないので、ひたすらに悶々と考える。

拍手[1回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

06:30:13 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
五 - c.
2017 / 05 / 09 ( Tue )
「カーネリアンとガーネットも似合ってはいるが」
 青灰色の瞳が見つめる先は、セリカの首の下から胸元を飾る豪華な装飾品だった。
「これは大公陛下からいただいたものよ?」
 ゴブレットを卓に下ろし、首下に連なる宝石を無意識に撫でる。ケチをつけられようにもセリカの好みとは無関係なのだ、との無音の抗弁のつもりだった。
 青年の表情が瞬時にむすっとなる。

「その父上の見立てが、いまいちだと言っている」
「そんなこと知らないわ。何であんたが眉間に皺を寄せるわけ」
 文句があるなら本人に申し立てればいいでしょ――とは言わない。父と子を隔てる身分という壁が、分厚いのはわかっていた。
 青年が顎先のちょっとした髭を撫でて返事を組み立てる間、セリカは一度手放した果実酒の容器を再び持ち上げた。

 液体の表面から立ち上るクローブの香りが、鼻孔をくすぐる。それから果実の甘さ、酸っぱさ、包み込むように濃厚な味わいが、かわるがわる舌を撫でていった。
 想像以上に強い酒だ。ツンとした刺激が脳髄に走り、意識を揺さぶった。

「父上はお前の肌と瞳の色と合わせたつもりだろうが、私に言わせてみれば、安易な選択だな。赤い髪に大量の赤を添えれば、さすがにくどい」
「陛下はあたしの髪色を知らないんでしょ」
 なんとなく大公を庇うような反論をする。

「知ろうとしない、の間違いだろう。下女に訊けば済む話だ」
「だから何であんたが不服そうなのよ」
 要領を得ない応酬にセリカはしびれを切らした。責め立てるようにしてゴブレットを向ける。
 その仕草をどう受け取ったのか、青年は己のゴブレットからぐいっと豪快に酒を一飲みした。更に短く息を吐いて、答えた。

「――もったいないからだ。カヤナイト……ラピスでもいいな。青と緑を使ったほっそりとした型のペンダントの方が、きっとお前の美しさを際立たせる」
 静かな声が、頭の中で反響する。
 さぞや呆気に取られた顔をしていることだろう。不意を突かれて、次の言葉がなかなか出て来なかった。

(あたしの何をなんだって……?)
 礼儀も忘れて公子の横顔をまじまじと見つめるが、先の発言を掘り下げて欲しいと願い出るべきか決めかねている間に、彼はひとりでに話を続けた。
「モスアゲートは調和と自己表現を象徴する。ものによっては白地の内に描かれる深緑の模様が……影だったり森だったり、海に見えたりする」

「へ、え」
 少しだけ興味が沸いてきた。自分を着飾ることにそれほど執着しないセリカだが、美しいものは見てみたい。
「宝石としての価値がガーネットやラピスに劣っても、見栄えはするぞ。今度、取り寄せておく」
 そこでエランはこちらを突然に振り向く。目先で大きな涙型の宝石が揺れるのを、つい視線で追った。

「青にラピスラズリって、あんたの耳飾と一緒になるわね」
 言い終わってからセリカは唇を「あ」の形に固定した。
 ――間違えた。無難なお礼の言葉を返すつもりだったのに。
 語調がきつくなかっただろうか。お揃いが嫌だと主張しているように聞こえただろうか。どうやって取り消せばいいのかわからなくて、微かに身震いした。

 が、杞憂に終わる。

「これはラピスマトリクスというバリエーションだ。一緒といえば、一緒になるか」
 エランは左手の指の間に耳飾の宝石を挟んだ。それを瞥見した瞬間の微妙な表情筋の動きに、セリカの直感が働いた。
 大事なものなの、と問いかける。母の形見らしい、と彼は答えた。

「らしい、って」
「直接手渡されたわけじゃないからな。私が生まれた記念に母が用意したそうだ――いつか成人したら付けるようにと。母は私が成人する前に逝ったから、乳母が内密に預かっていた」
「乳母を信頼してたのね」
「母はヤシュレから嫁いできた時に、最も信頼のおける使用人一家を連れてきた。いや、祖国では奴隷の身分だったか」

「......そっか」
 続ける言葉が思い付かなくて、相槌だけを打った。話は一旦そこで途切れた。
 どうやらエランの母の身の上は今のセリカと似ていたようだ。子への贈り物を異国の地の人間ではなく祖国から連れてきた供に預けた心境も、わかる気がする。

 それからもう一つ、得心した。
 兄弟と言っても母親が四人もいれば子が互いに似ていなくても仕方がないと思っていたが、エランの頬骨や顎は、他のヌンディーク公子に比べて明らかに丸みが無い。彼らよりも鼻の形が細くて、肌の色素もやや薄い。

 加えてエランは、父親にもあまり似ていなかった。すらりと角ばった輪郭はどちらかというとタバンヌスのそれに寄っている。
 目や眉骨や鼻の形など、大公の顔の部分的特徴は、第一公子ベネフォーリと第七公子アダレムが一番引き継いでいるように思えた。

「大公陛下はどこか悪いの」
 物思いの果てで、その質問に至った。「容態が悪化したって話だけど、見舞いに行かなくていいの?」



まだ明日までは絶賛家族孝行タイムですが、昨日ふいに時間が取れたので更新しちゃいます

拍手[1回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

22:29:58 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
どうやらタイムリミット
2017 / 05 / 05 ( Fri )
のようですねぃ。

この後飛行機に乗ってびょーんします。実家にパソコンはあるのですが、家族孝行メインになるため、多分書く時間が取れません。

変なところで区切ってしまいましたねw 続きはまた来週にて! 金曜日とかになると思いますがご勘弁を。

待ってる間がひまだよ! ってもし思われましたら、私の最近のお気に入り作品などをどうぞお読み下さい。ご存知かもしれませんが、バスカヴィル家の政略結婚ってやつです。

好きすぎて布教しちゃう★
http://ncode.syosetu.com/n9274dh/

これ読んで思ったのですが、私はやっぱり人の多い話って書けないんだなーと。上記の物語では政略結婚ひとつにも関わる人物が多く、婚約披露とか新聞掲載もあるのに、セリエラの閉塞感と言ったらw 新聞の無い世界だとはいえw 見えないところで人はいるのですが、私が書くのが苦手なだけです。むしろ書く以前に人ごみとか人が苦手です(ぇ

未熟だった頃はずらずら人物を並べて書いたりもしたんですよ。調子にのってたなぁ。今の私は一場面で六人までが限界なのです… そう、あの晩餐会はキャパオーバーでしたw


ではまたーノシ

拍手[1回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

03:21:10 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
| ホーム |次ページ