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はじめに読んでください
2030 / 12 / 17 ( Tue )
こんにちは。はじめまして。
甲(きのえ)といいます。

かつてまだ厨二病が癒えなかった頃、サイトを立ち上げて創作小説を公開していました。
あれからだいぶ経ち、諸々の事情あってサイトは長らく放置してきました。

今回ブログを作ってみたのは、ちまちま小説を書いていくには管理しやすく適していそうだなと考えたからです。

たまったら校正し、サイトのほうで載せなおしてみようかと思います。


<http://nanatsukai.lv9.org> 


少しでも楽しんでいただけると幸いです。


*******

「聖女ミスリア巡礼紀行」について。

この話自体は私の中ではこれでも新しい方ですが、何度か練り直してるうちに結構いい感じに世界観が発達してきたので、他の古い話よりも今書きたいと思いました。

アクションやら化け物やら組織やらいろいろ出ますが、元は単なる「旅する男女」を書きたくて練った話です。あまり深く考えすぎないでそこをがんばります。

なお、極端な表現は抑えますが、多少の残虐非道な行為・発言または性的描写は含むかもしれませんので、15歳未満の方は閲覧を遠慮してください。なるべく誰も不快にさせないよう極力気をつけます。

最後に、作中に主張される信念や思想は私の脳から出たものであってもすべてを私が支持しているわけではありません。あくまでフィクションです。


*******

初めていらっしゃるお客様はまずサイトの方のインターフェイスを試しに見て行ってください。本編は長いので最初はブログよりもサイトで見た方が読みやすいと思います。ブログで読む方は下の目次記事へどうぞ。

一節ずつが長すぎて読みにくくならないように、数字のあとに小文字でabcとつけて整理しています。本編はどの記事も大体5分以内で読めるでしょう。

*閲覧推奨ブラウザ: Firefox, Google Chrome (なぜかテンプレがIEと相性悪いようです)

感想はコメント・拍手でも何でもどんと来いです お待ちしてます(・∀・)


ではよろしくお願いします!




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23:59:59 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
本編目次
2030 / 12 / 17 ( Tue )

混沌に満ちた架空の大陸を舞台にした長編ダーク・ハイファンタジーです。
世界を救うために旅立ってますが、
その実主人公たちは別の何かを 探しているのかもしれません。

ナビゲーションにお役立て下さい。


第一章: 行路を織り成す選択の連なり

01 06 - a b c d e f g 11 - a b c d e f g h
02 - a b c d e f 07 - a b c d e f 12 - a b c d e f g h i j k
03 - a b c d e f g h 08 - a b c d e f g h 13 - a b c d e f
04 - a b c d e 09 - a b c d e 14 - a b c d e f g h i j
05 - a b c d e f 10 - a b c d e f g h i j  


第二章: 聖地を巡る意味

15 - a b c d e f g h i j 19 - a b c d e f 23 - a b c d e f g
16 - a b c d e f g 20 - a b c d e f g h i 24 - a b c d e f g
17 - a b c d e f g h 21 - a b c d e f g h i 25 - a b c d e f
18 - a b c d e f g h i j 22 - a b c d e f g 26 - a b c d e f g h i j k


第三章: この世で最も価値がある

27 - a b c d e f g h 31 - a b c d e f g 35 - a b c d e f g h i j
28 - a b c d e f g h i 32 - a b c d e f g h i j 36 - a b c d e f
29 - a b c d e f 33 - a b c d e f g 37 - a b c d e f g h i
30 - a b c d e f g h i 34 - a b c d e f g 38 - a b c d e f g


第四章: 満たされんとして追う

39 - a b c d e f g 44 - a b c d e f g h i j 49 - a b c d e f g h i
40 - a b c d e f 45 - a b c d e f g 50 - a b c d e f g h i j k l
41 - a b c d e f g h i 46 - a b c d e f g h 51 - a b c d e f 
42 - a b c d e f g h i j 47 - a b c d e f g h i j k
43 - a b c d e f g h 48 - a b c d e f g h


第五章: 常しえに安らかなれ

52 - a b c d e f g 57 - a b c d e f g h i j k 62 - a b c d e f g h i j k
53 - a b c d e f g h i 58 - a b c d e f g h i 63 - a b c d e f g h i j
54 - a b c d e f g h i 59 - a b c d e f g 64 - a b c d e f g h
55 - a b c d e f g h i 60 - a b c d e f g h i 65 - a b c d e f g h i j
56 - a b c d e f g h 61 - a b c d e f g h 66 - a b c d


あとがき


[簡易紹介]

地名・組織名 登場人物 サブキャラ

 

[読み返しガイド] 

場所別

おまけ・番外編

拍手御礼01-05 拍手御礼06-10 拍手御礼11-15
Valentine's Day 戦闘スタイルメモ 魔物特性メモ もしも彼女だけでも
2000の想い 100記事記念 200記事記念

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07:23:34 | 目次 | コメント(2) | page top↑
きみの黒土に沃ぐ赤
2030 / 12 / 14 ( Sat )
(きみのくろつちにそそぐあか)



今夜、夫となる男と初めて顔を合わせる。
明後日、結婚式を挙げる。


そのはずだったが、物事は予定通りに進まず――  

波乱に立ち向かうか、安寧に逃げ戻るか。
選択の刻が迫る。


 零、きみと求める自由  a b
 一、ラピスマトリクスの涙  a b c d e f
 二、咲かせる花   a b c d e f g h
 三、危険な夜 a b c d e f g h i j
 四、予定がない午前 a b c d e f g h
 五、約束をつなぐ午後  a b

 人物紹介



【これは聖女ミスリア巡礼紀行と世界観が繋がってますが、独立して読める恋愛ファンタジーです。流血沙汰や狂気、死などのダーク要素が出ますので苦手な方はご注意ください】

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00:00:00 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
もう! 弄ばないでよ!
2017 / 04 / 28 ( Fri )
昨日はダウンかと思ったら今日はアップ(?)↑です。

人生ってマジでままならねーな。

相変わらず気持ちジェットコースターみたいな日々が続くと思いますが、人は長い一生の中で絶対にやめないことってありますよね。私にとってはそれは運動だったり音楽だったり、創作です。なので更新ペースが乱れまくることはあっても、完全に止まったりはしないでしょう。ご安心ください。

ストック溜まってません あっひゃー! 

宣言どおりに30日にするか、ちょいと延ばすかは、また考えます。


あ、私自身は大丈夫です、ご心配なく。弄ばれているのは心だけなので。私はゲズゥ側でして、良くも悪くも、身体は自動回復です。家族が大変だというのに自分は今日も快眠(?)快食快便ですよチクショウw

何で私だけこんなに元気なんだろうねむかつくwwwww


ふう。ちょっと黒い感情を吐き出したらマシになりました。個人ブログだし、別にいいよね。気分を害された方がもし万が一にもおりましたら、ブラウザを閉じて三秒で忘れてくださいまし。

わすれろーわすれろー(念

さて、仕事がんばろ。


また次の更新にてお会いしましょう~

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22:45:26 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
ふっひゃああああ
2017 / 04 / 27 ( Thu )
(記事タイトルに深い意味はない)

この頃はリアルのアップダウンが激しく、色々と忙しいけどなんとかタイムマネージメントをがんばってやりたいことを順にやってます。とりあえず今は黒赤をガンガンストック溜めたい。できるかどうかは別として、溜めたいのである。<進捗:1記事半w

で、五話以降に入る前に再度念を押したいのですが、これは恋愛モノです!
なので、恋愛以外の要素のツメが甘くてもあんまり石投げないでくださいね!(とても不安なのです)


まあなんていうかこれはセリカとエランを愛でるお話なので、そこをひたすらにがんばります。

今後もゆる~くお付き合いいただけると嬉しいです。

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23:22:21 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
四 あとがきと補足
2017 / 04 / 26 ( Wed )
おつでーす! よみおわったら どーぞー↓↓




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00:01:04 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
四 - h.
2017 / 04 / 25 ( Tue )
「どうした、タバンヌス」
 リューキネの髪を結い終えたらしいエランが、振り返った。
「ベネフォーリ公子殿下がお呼びです。エラン公子、セリカラーサ公女ご両名にお伝えしたいことがあるそうで」
「わかった。すぐに向かう」
 目配せされた。その意図を汲み取り、セリカはカップに残る茶をひと思いに飲み切る。食器をなるべく静かにまとめて、使用人に手渡した。

「ごちそうさまでした。リューキネ公女殿下、席を立ってもよろしいでしょうか」
「ええ。いってらっしゃいませ、セリカ姉さま。エラン兄さまも。髪、ありがとうございました」
「リュー、あまり風に当たりすぎるなよ。無理は禁物だ」
「わかってますわ。でも今日は本当に気分がいいんですのよ」

「そうだな。いつもより食欲もあったようだな」
 エランは妹姫の被り物を丁寧に直した。それから別れの挨拶を済ませてその場から立ち去る。
 セリカも後に続こうとして、しかし服を引っ張られてたたらを踏んだ。振り返ると、神妙な顔でリューキネが見上げてくる。

「ひとつ忠告させてくださいませ」
「忠告?」
「――殿方の事情に、姫君が興味を持つべきではありません」
 眼光を鋭くして、リューキネは声を潜めた。

「わたくしたちは非力です。想いのままに口を挟んで大事(おおごと)に巻き込まれても、誰も助けてはくれませんのよ。女が出しゃばったのがいけないのだと、笑われるだけですわ」
「なんであたしにそんな話を……」
 問い質してもリューキネは「さあなんででしょう」と曖昧に笑うだけである。そのまま彼女は手を放して、こちらに背を向けた。
 追及するべきではないと悟り、セリカは会釈をして踵を返す。

_______

 鞍上のベネフォーリ公子は深刻そうな表情を浮かべていた。
 彼はこれからムゥダ=ヴァハナを発たねばならないと言う。簡易的な旅装に身を包み、最低限の荷物を馬の背に積んで、護衛も僅か数人を従えている。

「困ったことになった。私が統治する州にて暴動が起こったらしい。発端はまだ突き止められていないが、戻って様子を確かめに行かねばならない。すまない、エラン。結婚式には出席できなさそうだ」
「お気遣いなく。事態が速やかに解決しますように、兄上のご幸運を祈ります」
「ありがとう。それと困ったことはまだある。父上の容態が悪化したそうだ。もしも明日の朝までに良くならないようなら、式は延期されるだろう」
 ――式が延期に?

 花嫁でありながら今日、何の予定も入れられなかった点を思い返す。準備が滞っているように感じられたのは気のせいではなかったらしい。きっとこうなることを見越して誰かが進行を遅らせたのだろう。
 結婚が先延ばしにされる可能性が、セリカを複雑な気分にさせる。
 エランの三歩後ろで頭を下げたままとにかく静聴を続けた。

「それもお気遣いなく。場合によっては、ベネ兄上が戻って来れるほどの猶予を得られるかもしれませんね」
 と、エランは殊勝な返事をした。きっと今頃は長兄に向けて例の作り笑いを見せているのだろうとセリカは予想する。
「そうだといいな。……公女殿下、少しよろしいですか」
 ぶふん、と馬が鼻を鳴らす音が聴こえた。ベネフォーリを乗せた馬が近付いてくるのがわかる。

「何でしょうか」
「すみません。度々、ご迷惑をおかけしています。それに、この国に着いたばかりで不安もあるでしょう。希望があれば何でも気軽にエランに相談してみてください。人には淡白な印象を持たれがちですが、責任感が強い者です。きっと公女殿下が過ごしやすいよう、尽くしてくれるでしょう」

 ――第一公子はヌンディーク大公と似たようなことを言う。
 この時セリカは、もしかしたらまたエランが嫌そうな顔をしているのではないかと気になった。現状、確認する術は無いが。
 それらしい礼の言葉や挨拶で応じてから、二人でベネフォーリ公子の少数の一行を見送った。

(責任感、か)
 件の青年の横顔を盗み見る。
(こいつがあたしに構うのは「責任感」からなのかしらね)
 考えてみれば、会ったばかりの人間に特別な感情を抱いたりはしない。間を埋めるのは礼節や気遣い――ちゃんとした礼節さえあるのかどうか、両者ともに怪しいところだが。

「それならそうと……無理、しなくてもいいのに」
 無意識に呟いていた。
「何か言ったか」
「なんでもないわ」
 セリカは頭を振る。

 面白くないのだろうか、自分は。何か不満なのだろうか。
 森で出会ったのは迎えに来てくれたからではなかったのだと知った時と同様の、気持ちの沈みを自覚する。
 ――これはあてがわれた相手、形式上の関係だ。期待をするような要素は何処にも無い。

 心の中の確たる一線を、セリカは再度認識する。



あとがきは多分明日に…。ねっみい。

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03:24:18 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
四 - g.
2017 / 04 / 23 ( Sun )
「三つ編み四本でいいか」
「お願いしますわ。セリカ姉さまはそこに座って、お茶とお菓子でもどうぞ……姉さまと呼んでもよろしくて?」
 彼女の上目遣いでの問いに内心では「気が早いのでは」と思いながらも、構わないわ、と頷いておいた。
 それにしても、まだ昼食を消化し切っていないというのに菓子を勧められるとは思わなかった。茶だけでもいただこうと、セリカは座布団を引き寄せ、絨毯の上に腰を掛ける。

 四角い卓の向かい側にリューキネが座る。ヴェールを脱いだ彼女の後ろにエランが膝立ちになった。
 少女の、絹の如く細やかな黒髪が露わになる。腰に届く長さのそれは束ねてもあまり厚みが無いように見えるが、その分クセもなくて手触りが良さそうだ。こまめに梳かないと何かと暴走しがちなセリカの髪とは、勝手が違うのだろう。

(あぶれ者ってどういう意味か、訊いてもいいのかしら)
 どこからともなく現れた使用人が小振りのティーカップに茶を注ぐ間、しばしセリカは考え込んだ。
 さすがに踏み込みすぎだ、より無難な角度から攻めた方がいいだろう。たとえばどうして昨夜の晩餐会にリューキネ公女は来なかったのか。けれども答えが「呼ばれなかったから」である場合を想定して、やはり何も言えなくなる。

 こちらが悶々と思考する間にも、三つ編みは着々と出来上がっていく。口では何と言っていても、よほど仲が良いらしい。髪を触らせるのは信頼の証であり、エランの手際の良さも、幾度となく頼まれたからだと推測できる。
 手持ち無沙汰なセリカは、茶と菓子をゆっくりと堪能した。
 三つ編みも残りあと一本となった。途端に、リューキネがニヤリと笑う。

「あなたも気の毒ですわね。こんな、焦土のような男と添い遂げなければならないなんて」
 ぐいっと彼女の頭が後ろに引っ張られた。
「誰が焦土だ。大概にしないと、この髪、とぐろを巻かせるぞ」
「いやー! 下品ですわ兄さま! そんなモノをうら若き娘の頭の上で象ろうだなんて!」
「いい気味だ」

 またおかしな方向性の掛け合いが始まった。正直ついていけない。
 そんなことよりもセリカは「焦土」というキーワードに気を取られていた。焦土の別名は黒土。涅(くろつち)、涅(くり)色、泥の色――。

「ねえ、川底の泥みたいだって言ったのってもしかして」
 ふと思い当たり、訊ねてみる。主語を抜いたのは一応配慮したつもりである。それだけで、彼には十分に伝わった。
「それはアスト兄上だった」
「アスト兄さまが仰ることなら、わたくしも同意見ですわ。何の話かわかりませんけれど」

「話がわからないのに何故入り込もうとする」
「わたくしがいながら夫婦で内緒話なんてするからです」
「それって、あたしが悪いってこと」
 苦笑い交じりにセリカは自分を指差した。
「そうなりますわねー」

「リュー……お前の相手をしていると疲れるな。この宮殿にいながら、人を振り回す稀有な女だ」
 妹の後頭部に向けて、エランがまた大袈裟に嘆息する。
「疲れるだなんて。病弱美少女の世話を、楽しんでらっしゃるくせに」
「病弱美少女らしさがあれば、或いは楽しめたかもしれないが」

「身体が弱いからって気も弱くなければならないなんて誰が決めたんですの? わたくしは生まれ付いての貧血持ちで、今後もきっと子供を産めません。嫁ぐことなく一生を此処でしか過ごせないのですもの。窮屈な人生、せいぜい人で遊んで楽しませていただきますわ」
「ああ。お前はそれでいい」
 そう肯定した青年は、微かに笑ったようだった。

 瞬間、セリカは冷や水を浴びせられたような感覚に陥った。
 強い語気で言い切ったリューキネ公女を見つめる。こんな風に強気に笑えるようになるまでに、彼女はどれほど苦悩しただろうか。

 生まれた境遇を悲観してばかりの己を恥じた。
 少なくともセリカは健康な身体を持っている。公女としての役割を与えられ、異国の地を踏む機会も与えられた。だからと言って現状に盲目に満足していいわけではないが、もう少し感謝の念を抱いて生きよう、と決意を新たにする。

「あなたの言う通りね、リューキネ公女。静かに儚げに過ごすことないわ」
「まあ、話のわかる方ですのね。嬉しいですわ、セリカ姉さま」
 少女は嬉しそうに両手を叩き合わせた。
 その時――バルコニーの入り口に大きな人影が現れた。失礼いたします、と彼は跪いて声をかける。

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04:48:12 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
四 - f.
2017 / 04 / 19 ( Wed )
 ぶわっと紺色の布がなびく。エランが素早く首を巡らせたのである。
 青灰色の瞳が、激しい怒りに燃えていた。冷たく燃えるという現象が可能なら、こう見えるだろう。
 思わずセリカは立ち竦んだ。

「おい、気色悪い冗談は止せ。この口は戯言(たわごと)しか吐けないようだな、リュー?」
 あろうことか青年は少女の愛らしい口の両端に親指を突っ込んで――先ほど頬をつねった時とは比べものにならないほどの勢いで左右に引っ張った。
「いひゃい! いひゃいでふぁ、いいひゃー」
 少女がバタバタと手を振り回して抗う。

「な、に、が、愛妾だ! おぞましい。私に朝食を戻させたいのかお前は!」
 容赦ない怒号を浴びせかけてから、ようやっと彼は彼女を放してやった。
 非常に話しかけ辛い。それでもセリカは頑張って小声で訊ねた。
「えっと……愛妾じゃないのね」
 青年の心底げんなりした顔がこちらを向く。

「頼むからその単語は二度と口にしないでくれ。コレは妹だ。イモウト」
「あんた妹が居たの」
 驚愕してセリカは僅かに仰け反った。言ってから、昨夜の晩餐会で「公女」の母であると名乗り出た大公妃が居たと思い出す。
(大公の子が揃って男ばっかりなわけないか)
 それならば何故、昨晩は晩餐会に来なかったのだろうか。

「んもう、兄さまったら! 公女の顔を弄り過ぎではありません? それと女性の前で何度も嘔吐を話題にしないでくださいな」
 リューキネは乱れたヴェールと髪を手で直しつつ、不平を並べた。
「うるさい。誰の所為だ」そんな彼女にエランはにべもなく言う。「反省したなら、セリカへの挨拶をやり直せ」

「ええそうですわね。改めまして、リューキネ・ヤジャットですわ。嘘を吐いたこと……お許しくださいましね。エラン兄さまがいたく気に入ったという姫君にお会いできたのが嬉しくて、少しからかってみたくなったのですわ」
 美少女は優雅に一礼した。腕も伸ばせば触れられるこの距離からだと、はためいた衣装の裾から微香が漂う。石鹸の名残か、それとも香油か。柑橘類の香りが少女の明るい色の服装とよく合っていた。

 セリカは返答に窮する。いたく気に入ったとは、またどういった冗談なのか。
 許すも何も、怒っているわけではなく驚いていただけであって――

「ん……ヤジャット? どこかで聞いた名だわ」
「ええ、ええ。あの豚の眷属ことウドゥアル・ヤジャットとは、残念ながら母を同じくしています」
 今度はリューキネが嫌そうな顔をした。長くて広がりのある袖で口元を覆い、吐き気を抑える素振りを見せている。
「ぶ、豚の眷属って」
 言い得て妙だが、自分の兄に対してひどい言い様である。

「否定できまして? ああ、あのような醜い男と出所が同じだなんて、信じられませんわ」
「…………」
 改めて相対すると、リューキネの人形のような愛らしい美貌は目に入れただけで二の句も告げなくなるほど見事だった。造形の美しさはもちろんのこと、装飾品や化粧も狂いなく整えられている。

(鼻ピアスから耳飾が細いチェーンで繋がってるのも、綺麗。エキゾチックというか、色っぽいというか)
 やはり真似できそうにない。
 あのだらしない第四公子とは柔らかい輪郭――丸顔ともいうが、リューキネの方は小顔だ――や垂れた目が似ているが、それだけだ。

「あの男はともかく。せっかく兄さまたちが戻ってらしたのに、なんだかつまんないですわー」
「つまらないって、どういうこと?」
「大した意味じゃない。こいつはアスト兄上に相手にしてもらえなくて拗ねているだけだ」
 傍らのエランが先に答えた。

「どうしてアスト兄さまは構ってくださらないのでしょう?」
「諦めろ。いくら軽薄なアスト兄上でも守備範囲というものがある」
「まあ! わたくしこれでも十四歳ですわよ」
「だが血縁者だ。どう可愛がられたところで兄妹の域を出ない」
「わたくしは、それでもよかったですわ。アスト兄さまは息をしてくださるだけで尊いんですもの。わたくしの兄は、アスト兄さまだけで十分です」

 脚本で組まれたみたいな会話である。
 慣れた様子で展開される掛け合いを前に、セリカは顔を引きつらせた。自分も家族とはこうだっただろうか。今となっては、思い出せない。

「と、この通り、リューは見てくれはいいが中身は単なるアストファン・ザハイルの崇拝者だ。いや、兄上の顔の崇拝者か。お前も気を遣わずに適当に接すればいい」
 ぽすん、とエランは自分より頭一個分は小さい少女の肩に肘をのせた。
「仲が良いのね」
「あぶれ者同士、仕方なく一緒にいるだけですわ。あ、エラン兄さま、髪結ってくださいまし」

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21:27:41 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
四 - e.
2017 / 04 / 17 ( Mon )
「んまあ、ひどい! ちょっとしたお戯れではありませんか」
 リューキネと呼ばれた少女は眉根に皴を刻み、唇を震わせた。怒り方までさまになっているというか、可愛らしい。たとえセリカが真似したかったとしても、到底できそうにない。
「そうか。私はてっきり、急に体調を崩したのかと」
「ご心配ありがとうございます。今日は気分がいいんですのよ」
 彼女は得意そうに鼻を鳴らし、頬をつねる手を優しく握った。

「ならいいが、無理するなよ」
 存外、エランの態度が柔らかい。客観的に分析して、セリカへの対応よりもずっと優しい気がする。
「大丈夫ですわ。せっかくお忙しい中、わたくしに時間を割いてくださったのですもの。頑張って起きてますわ」
 これに対する青年の返答は、セリカにはよく聴こえなかった。ただ、握り合っていない方の手で少女の頭を撫でるのだけが見えた。

(ふうん……孤立してるかと思ったのに。親しい人、居るんじゃないの)
 しかも自分は何を見せつけられているのだろう。親し気な二人に感じる、この違和感は何なのか。
(ああ、そうか。距離感に厳しいこの公宮で、妙齢の男女があんなに積極的に触れ合ってるのが意外なんだ)
 思えば、昨夜セリカに気安く触れてきたのにはどういう意図があったのか。
 あの男にとって「妃」の枠は特別でも何でも無く、誰に対してもああなのだろうか。

 或いは、リューキネという少女こそが特別枠に収まっているという可能性もある。
 ――釈然としない。が、他人は他人でしかなく、心の内を知ることなんて、永遠にできないかもしれない。
 セリカは今度こそ踵を返してその場を去ろうとした。

「そういえばリュー、お前何で共通語」
「あら、あちらにいらっしゃる方はあなたのお妃さまではなくて?」
 突然張り上げられた少女の声。
 逃げ道を塞がれた。

「お前、セリカに会ったこともないくせに。適当なことを言うのもそのくらいに……」
 言葉が繋がれるごとに、声が迫ってくるような錯覚を覚えた。おそらく――彼が振り向いたことによって、音の投げ出される方向や角度が変化したからだ。
 居心地の悪い沈黙があった。背中に、視線が注がれているのがわかる。

 ここで聴こえない振りをして逃げ出せたならよかった。けれど、できるわけがなかった。
 ゆっくりと二人の方を向き直る。姿勢を正し、作り笑いも整えて、少女に向かって「ごきげんよう」と一礼する。

「ごきげんよう! どうぞお上がりくださいな」
 座ったままでお辞儀を返してから少女は破顔した。自分の隣に来いとでも言いたげに、絨毯を軽く叩いている。予想だにしていなかった歓迎っぷりだ。
 貴重な二人の時間を邪魔したくないとか、単に通り過ぎるところだったとか、使いうる断り文句が幾つか超速で脳裏を駆け巡った。本当は彼女がどういう心で誘っているのかを確かめたい気持ちが強いが、己を抑制して黙り込んだ。

「わたくし、あなたにお会いしてみたかったのですもの」
 少女が更に呼ばわる。すかさず「何で?」と訊ね返したい衝動を、セリカは生唾と一緒に飲み込む。
 途方に暮れてエランの方を見やると、彼は卓に頬杖をついて大袈裟なため息をついた。
「上がってくれ、セリカ。こいつの我がままに付き合わせて悪いな」
 あくまで少女の味方をするつもりらしい。完全に断り辛い空気になってしまった。

 ――もうどうとでもなれ。
 従順な公女の仮面を被って、バルコニーまで静かに足を運んだ。階段から廊下に上がったところでタバンヌスとすれ違っても、彼は一切の反応を示さない。相変わらず好かれていなさそうだ。
 招かれた場所は、正確にはパティオバルコニーであった。柱に支えられていて二階からしか行き着けない点ではバルコニーだが、ゆうに八人は座ってくつろげそうな広さである。屋外で団欒する為の場所ならば、パティオでもある。

「ゼテミアン公国第二公女、セリカラーサ・エイラクスです。初めまして」
 踏み入れて、まずは頭を下げて挨拶をする。限られた視界の中で、少女が青年の腕を支えにして立ち上がるのが見えた。
「リューキネですわ。エランディーク公子の、愛妾です」
 あの音楽的な声で、少女はさらりと自己紹介をした。

「アイショウの方でしたか。よろしくお願いいたします」
 顔を上げずに、セリカは平淡な相槌を打った。
 不可抗力だ。咄嗟にどう思えばいいのかわからなくなって、声音から感情を省いてしまったのである。
 セリカとて大公家の人間だ、上流階級の習慣は知っている。たまたま自分の親は相性が良くて子宝にも恵まれ、浮気などせずに一夫一妻で長年良好な関係が続いているが、それは少数派の事情であろう。
 咎める気は全く起きない。

(妾かぁ……事実だとすると一気にややこしくなってきたな。子供が生まれたら、序列とかどうなるんだろ)
 ほとんど他人事のように受け止め、億劫な気分で顔を上げた。

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