忍者ブログ
はじめに読んでください
2030 / 12 / 17 ( Tue )
こんにちは。はじめまして。
甲(きのえ)といいます。

かつてまだ厨二病が癒えなかった頃、サイトを立ち上げて創作小説を公開していました。
あれからだいぶ経ち、諸々の事情あってサイトは長らく放置してきました。

今回ブログを作ってみたのは、ちまちま小説を書いていくには管理しやすく適していそうだなと考えたからです。

たまったら校正し、サイトのほうで載せなおしてみようかと思います。


<http://nanatsukai.lv9.org> 


少しでも楽しんでいただけると幸いです。


*******

「聖女ミスリア巡礼紀行」について。

この話自体は私の中ではこれでも新しい方ですが、何度か練り直してるうちに結構いい感じに世界観が発達してきたので、他の古い話よりも今書きたいと思いました。

アクションやら化け物やら組織やらいろいろ出ますが、元は単なる「旅する男女」を書きたくて練った話です。あまり深く考えすぎないでそこをがんばります。

なお、極端な表現は抑えますが、多少の残虐非道な行為・発言または性的描写は含むかもしれませんので、15歳未満の方は閲覧を遠慮してください。なるべく誰も不快にさせないよう極力気をつけます。

最後に、作中に主張される信念や思想は私の脳から出たものであってもすべてを私が支持しているわけではありません。あくまでフィクションです。


*******

初めていらっしゃるお客様はまずサイトの方のインターフェイスを試しに見て行ってください。本編は長いので最初はブログよりもサイトで見た方が読みやすいと思います。ブログで読む方は下の目次記事へどうぞ。

一節ずつが長すぎて読みにくくならないように、数字のあとに小文字でabcとつけて整理しています。本編はどの記事も大体5分以内で読めるでしょう。

*閲覧推奨ブラウザ: Firefox, Google Chrome (なぜかテンプレがIEと相性悪いようです)

感想はコメント・拍手でも何でもどんと来いです お待ちしてます(・∀・)


ではよろしくお願いします!




←検索サイト・ランキングに参加してます。よかったら押してください

拍手[11回]

PR

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

23:59:59 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
本編目次
2030 / 12 / 17 ( Tue )

混沌に満ちた架空の大陸を舞台にした長編ダーク・ハイファンタジーです。
世界を救うために旅立ってますが、
その実主人公たちは別の何かを 探しているのかもしれません。

ナビゲーションにお役立て下さい。


第一章: 行路を織り成す選択の連なり

01 06 - a b c d e f g 11 - a b c d e f g h
02 - a b c d e f 07 - a b c d e f 12 - a b c d e f g h i j k
03 - a b c d e f g h 08 - a b c d e f g h 13 - a b c d e f
04 - a b c d e 09 - a b c d e 14 - a b c d e f g h i j
05 - a b c d e f 10 - a b c d e f g h i j  


第二章: 聖地を巡る意味

15 - a b c d e f g h i j 19 - a b c d e f 23 - a b c d e f g
16 - a b c d e f g 20 - a b c d e f g h i 24 - a b c d e f g
17 - a b c d e f g h 21 - a b c d e f g h i 25 - a b c d e f
18 - a b c d e f g h i j 22 - a b c d e f g 26 - a b c d e f g h i j k


第三章: この世で最も価値がある

27 - a b c d e f g h 31 - a b c d e f g 35 - a b c d e f g h i j
28 - a b c d e f g h i 32 - a b c d e f g h i j 36 - a b c d e f
29 - a b c d e f 33 - a b c d e f g 37 - a b c d e f g h i
30 - a b c d e f g h i 34 - a b c d e f g 38 - a b c d e f g


第四章: 満たされんとして追う

39 - a b c d e f g 44 - a b c d e f g h i j 49 - a b c d e f g h i
40 - a b c d e f 45 - a b c d e f g 50 - a b c d e f g h i j k l
41 - a b c d e f g h i 46 - a b c d e f g h 51 - a b c d e f 
42 - a b c d e f g h i j 47 - a b c d e f g h i j k
43 - a b c d e f g h 48 - a b c d e f g h


第五章: 常しえに安らかなれ

52 - a b c d e f g 57 - a b c d e f g h i j k 62 - a b c d e f g h i j k
53 - a b c d e f g h i 58 - a b c d e f g h i 63 - a b c d e f g h i j
54 - a b c d e f g h i 59 - a b c d e f g 64 - a b c d e f g h
55 - a b c d e f g h i 60 - a b c d e f g h i 65 - a b c d e f g h i j
56 - a b c d e f g h 61 - a b c d e f g h 66 - a b c d


あとがき


[簡易紹介]

地名・組織名 登場人物 サブキャラ

 

[読み返しガイド] 

場所別

おまけ・番外編

拍手御礼01-05 拍手御礼06-10 拍手御礼11-15
Valentine's Day 戦闘スタイルメモ 魔物特性メモ もしも彼女だけでも
2000の想い 100記事記念 200記事記念

拍手[30回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

07:23:34 | 目次 | コメント(2) | page top↑
きみの黒土に沃ぐ赤
2030 / 12 / 14 ( Sat )
(きみのくろつちにそそぐあか)



今夜、夫となる男と初めて顔を合わせる。
明後日、結婚式を挙げる。


そのはずだったが、物事は予定通りに進まず――  

波乱に立ち向かうか、安寧に逃げ戻るか。
選択の刻が迫る。


 零、きみと求める自由  a b
 一、ラピスマトリクスの涙  a b c d e f
 二、咲かせる花   a b c d e f g h
 三、危険な夜 a b c d e f g h i j
 四、予定がない午前 a b c d e f g h
 五、約束をつなぐ午後  a b c d e f

 五と六の合間 a b c

 六、決断を迫られ a b c d e


 人物紹介



【これは聖女ミスリア巡礼紀行と世界観が繋がってますが、独立して読める恋愛ファンタジーです。流血沙汰や狂気、死などのダーク要素が出ますので苦手な方はご注意ください】

拍手[0回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

00:00:00 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
六 - e.
2017 / 06 / 24 ( Sat )
「なんだ!」
 怒鳴り声が闇の中で反響する。床に落ちている装飾品を目にすると、看守は愕然となって呟いた。「何でこんなところに宝石が……」
 男の両目は最初に疑惑に見開かれ、瞬く間にそれは醜い欲望の色に取って代わられた。男は視線を首飾りに集中させたまましゃがんだ。

 ここだ、と決めてセリカは飛び出した。
 ――狙うは腰の鍵束!
 右手を伸ばす。冷たい鉄の輪を掴み、思い切り引っ張る。

(抜けない!?)
 落ち着いて考えれば予想できたことだが、革のベルトに繋がれた輪が引いただけで外れるわけがなかった。それに気付かなかったのは焦りゆえだろう。金具を外すまでに数秒は必要だ。
 看守が振り返りかける――
 セリカは頭の被り物を脱いで、男の顔に被せた。

「ふぐっ! 何奴!?」
 くぐもった怒声が浴びせられる。
 誰何に答えてはいけない。顔を見られてもいけない。ならばどうすればいいのか?
 肘から先が、激しく震えていた。そうだ、もっと力を込めよう――刹那の衝動に従った。
 男が暴れて掴みかかろうとしているが、しゃがんでいる態勢の彼と背後に立っているセリカとでは、アドバンテージはこちらに傾いている。

(気絶するまで、窒息、させる)
 狂気じみた決意。存外それは早くに実りを得た。
 看守の手足から力が抜けていった。ぐったりと、その場に崩れる。

 ――怖気がした。試合や喧嘩のような項目とは比べるべくもない。
 暴力。己の意思で人を害したのだ。男の首を絞めた感触が掌に残っていた。
 人を蹴ったり殴ったりするのとは違う、もっと生々しい悪意――その悪意を放ったのが自分だという事実に、慄くしかない。

 セリカは涙していた。罪を省みる時間すら惜しくて、震える指で何とか鍵を物色する。目的の独房まで這い寄り、鍵穴を手探りで見つけ出した。
 ひとつずつ鍵を差し込んで試していく。
 その間も絶えずに咳が聴こえた。何やら頻度と激しさが増している上、音が次第に濡れたものが絡んでいるようにも聴こえて、セリカの中の危機感が強まっていった。
 鍵との試行錯誤に焦れる。

(あと三本しか残ってないわよ……今度こそ、当たれ!)
 願いが通じたのか、ついに「がちゃん」と爽快な開放音が耳に響いた。
(やった!)
 重い扉を押し開け、狭い独房の中に転がり込んだ。
 奥の方に人影が見える。地面に蹲っている人物は、背格好や服装から見るに、まさしくエランディーク公子その人だ。

「エラン! 大丈夫!?」
 駆け寄り、すぐ傍で膝をついた。顔を覗き込んでみたり、肩を軽く揺すったりする。
「ねえ、聴こえる? あたしがわかる? えーと、あなたと結婚する予定の、セリカです。とにかくこっち見てください」
 ゆっくりはっきりと呼びかけてみた。

「え、何?」
 咳の合間に青年は何かを言おうとしてるらしかった。まずは意識があるようで、安心した。
 耳を近付けた。吐息がくすぐったいほどの距離だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。懸命に言葉を拾おうとするも失敗に終わった。掠れた声が囁く音の羅列が、セリカの中でうまく意味を成さないのである。

(もしかして……ヤシュレ公国の言葉かしら)
 寝ぼけた人間などは自分が普段から思考に使っている言語を口走りやすい。ヤシュレの言葉がエランの母語であるのだろうが、残念ながらセリカにとってはいくら勉強しても身に付かなかった言語だ。

(つまり、意識が朦朧としてるってことね。どうしようか)
 もう一度エランの苦しげな横顔を見下ろすと、その仮定を裏付ける点を更に見つけた。
 青灰色の瞳は潤んでいて焦点が合わない。こちらを全く見ていないのは明らかだった。怪我をしているのか、熱を出しているのか、おそらくその両方か。
「だからってあたしじゃあんたを運べないのよ。肩を貸すのが精一杯よ。自分の足で歩いてくれなきゃ困るわ!」
 八つ当たり気味に吐き捨てたのは、絶望に打ちひしがれたくないが故の鼓舞である。

 こんなにも具合が悪そうなのに。どうしてやるのが最善なのか、セリカには判断がつかない。動かさない方が良い気がするけれど、ここに放置していても誰も治療してくれなそうだ。
 そして何より――ここにいては、もっと凄まじい危機が迫ってくるのではないだろうか。
 とにかく逃げなければならない。どこへ、どうやって逃げ延びればいいか、は後で考えることにする。



私も昔は寝ぼけてよくルームメイトに日本語で話しかけて「あれ、何故彼女は私の質問に答えてくれないのだ?」と疑問に思ったりしましたw 通じてなかったという。

拍手[1回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

12:58:29 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
六 - d.
2017 / 06 / 21 ( Wed )
「じゃあその地下への入口はどこにあるの?」
「存じません。頑張ってお探しくださいませ」
 突き放すように言ってリューキネは茶菓子に夢中になった。これ以上聞き出せることは無いのだと察し、セリカは感謝の意を述べてその場を後にする。

 周りに人の気配がなくなった途端にセリカはよろめいた。
 近くの柱に片手を付き、我が身を支える。ふと視線が地面に落ちた。石造りの道が視界の中で変に揺れていて、何故だか恐ろしいもののように思える。

 ――地の下に、何がある――?

 リューキネを疑うわけではないが、どうしても理解が追い付かない。追い付きたくないのかも、しれない。
(危険は承知の上だとか、さっきはあんなこと言ったけど)
 自分の力量で何ができるのか改めて考えてみた。しかし先ほどバルバの前では毅然と冷静さを保っていた頭も、今やプディング並に柔らかく形を失っているように感じられる。

(ええい、もういいわ。まずは見つけ出してからよ!)
 いよいよ考えるのが面倒になり、セリカは走り出した。行き詰まればとりあえず突っ走る、こういうところは兄と似ているな――と苦い笑いを漏らしながら。

_______

「聞こえてるなら返事しなさいっ! エランディーク・ユオン!」
 気が付けば、地下牢を駆け抜けていた。
 けれどもどれほど呼ばわっても探し人からの応答がない。次第に、不安という名の刃が数本、胸を突き刺した。
(そうよ。あいつがまだ生きてるなんて誰が言ったの)
 彼の妹姫が「隠す」という表現を用いたから思い込みをしてしまったのであって。エランが殺されていないという確証は、どこにも無いのである。

 死人は返事ができない。かと言って、牢を細かく確認するには、さすがにセリカは気力が足りなかった。
 迷いは見えない足枷となって足をもつれさせる。次いで転倒したが、かろうじて腕と膝をついて着地できた。

 ゆっくりと顔を上げて、闇に浮かぶ鉄格子の鈍い輝きを見つめる。恐怖で声が出ない。
 こんな恐ろしい場所で――生きているかどうかもわからない人を捜している。一国の公女が、なんて滑稽な姿だろう。

「んっ」
 滲み出る涙を、セリカは袖で擦った。膝立ちになり、意気消沈しかけている自分を奮い立てる。
 ――そんなことより、悲しい。
「ね、エラン。死んじゃったの……?」
 もう一度あの笛を聴きたいし、くだらない話もしたいし、約束を果たしたい。ただそれだけだ。それだけを願って、手足を動かす――

 瞬間、微かな咳が聴こえた。
 驚いて思わず静止した。そういえばこの辺りは大分静かである。空いた独房ばかりで、周りから囚人の気配がしないことに、今更ながらセリカは気付いた。
 ではこの先はどうか。恐る恐る足を踏み出してみたら、また咳が聴こえてきた。

(ちょっと、ねえ)
 確信交じりの興奮が沸き上がる。通常、咳で人を識別できるものではないし、希望的観測かもしれない。たったこれだけの音を、昨夜喫煙具に噎せたエランに重ねるのもおかしいかもしれない。
 だが再び走り出す力を振り絞るには十分だった。
 間もなく行き止まりに当たりそうになり、そこで人影を見た。今度は一人だけである。

(わざわざ守ってるってことは別の出入り口があったりして)
 来た道を戻らずに地上へ逃げられるという可能性に、一気にやる気が跳ね上がる。
 幸いと看守らしき男は眠そうに天井を見上げていてこちらの足音に気付く様子もない。隙をついて鍵を盗むくらいは、セリカにもできそうだ。
 咄嗟に身を潜めた。もはや、咳の音源がかなり近い。

(隙を作らなきゃ……)
 胸中で逸る気持ちをなんとか宥めすかし、打開策を考える。思い付いたキーワードといえば、光るもの、金目のあるもの――
 首の後ろに手を回した。豪奢な首飾りを外して、看守の目に入りそうな位置まで投げ捨てる。
 落下の際に、じゃらんと派手に音がした。

拍手[0回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

10:25:39 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
六 - c.
2017 / 06 / 18 ( Sun )
 ――誰がエランの本当の居場所を知っている? 真実は、誰なら教えてくれる? 今すべきことは何だ――

「バルバ。早急にゼテミアンに戻りなさい」
「ひ、姫さま!? 何を!」
「来た時の旅費、まだ余りがあったわよね。全部持っていいわ。なるべく人に見つからずに出て行って……地図も、来た時に使ったものがあるわね」
 狼狽する侍女に次々と指示を出す。自分でもぞっとするほどに頭は冷静だった。

「姫様、まさかわたしから大公陛下にお伝えせよとお考えで」
「いいえ。お父さんとお母さんには黙っていて欲しいの。何食わぬ顔であなたはあなたの人生に戻るのよ。この国で何が起きているかはわからないけど、まだ国家間の問題にしちゃいけない気がする。そうなったら、絶対に後戻りできないわ」
「後戻りって何ですか! 仰る意味がわかりません!」

「ごめん、あたしもよくわかんない。でもこの縁談は国の発展の為に必要なことだから、簡単に反故にしちゃいけないと思う。たとえ別の誰かの思惑が妨害しているとしても」
「だからってわたしだけ帰るなんてできません! 姫さまの御身はどうなるんですか!」
 なかなかバルバは引き下がらなかった。セリカは深く息を吸って語気を強める。

「バルバティア・デミルス、これは命令です。主を捨てて祖国へ帰りなさい」
「嫌です! 嫌です、姫さま……」
「駄々をこねないで。元々、帰す約束だったじゃない」
 困った顔で笑って見せると、ついにバルバは項垂れた。幼馴染との将来を想ったのだろう。

「では太子殿下にだけ相談をしますこと、お許しください」
「お兄さんに? ……いいわ」
 それくらいの譲歩はしてやってもいい。そう思って承諾したのだが、一瞬、不穏なイメージが脳裏を過ぎる。セリカの兄は、行き詰まった時は、剣でものを言わせる人だ。妹の危機と知れば軍を動かさずとも一人で乗り込んで来るやも――いや、さすがにそこまではしないだろう。

「姫さまはこれからどうなさるおつもりで?」
「探るわ」
 それだけ答えて口をきつく引き結んだ。探すべき対象は人物であったり、「事件の実態」でもある。
 もはや一秒たりとも無駄にできない。
 共に国境を超えてくれた友人の肩を抱き寄せ、今まで尽くしてくれた礼と別れの挨拶をする。彼女は終始、目を潤ませていた。最後にセリカは強引にバルバの身体の向きを変えた。やや乱暴に背中を押す。

「……幸せになってね」
「姫さまもどうかお気を付けて」
「わかってるわ」
 返事をするや否や、セリカも踵を返して歩き出した。心の中に押し寄せる寂しさと不安の波を、短い祈りの言葉を綴ることで紛らわす。

 きっとバルバはこちらの急な思考展開についていけなくて、ひどく戸惑っているのだろう。セリカ自身、己の気持ちを整理しきれていない。そんな猶予も、無い。
 あの男に情が移ったとも考えられるし、見捨てるのが不義理だとも思っているし――それでいながら、セリカは自分が土壇場でやはり保身に走ってしまう可能性をも否定できずにいる。確信を持てる一点といえば、急がねばならないこと、それだけだ。

 怪しまれない程度に小走りになって、宮殿の中を移動した。思い付きのままに足を運ぶ。そして目的地に着くなり警備兵に声をかけた。
「リューキネ公女に取り次いでいただけませんか」
 彼らはこちらのただならない様子に驚いたようだったが、それでも申し出を受けてくれた。しばらくして兵士が戻ってきた。

「公女さまがお会いになるそうです。どうぞ」
 促されて、セリカは歩を進めた。ここはちょうど昨日の朝にエランとリューキネ公女が談笑していたバルコニーだ。
 絨毯に腰を掛けて、優雅な仕草で茶を飲んでいる少女がひとり。

「まあセリカ姉さま、ようこそいらっしゃいました。ご一緒に、一杯いかがかしら」
「いえ、あの」
 お茶の誘いを断ろうとして、途中で思い直した。濃い緑色の双眸が威圧的な視線を注いできたからだ。
 数秒遅れてその意図を理解した。周りの侍女や警備兵たちに不審がられない為の、公女からの配慮である。
「いただきます。ありがとうございます」

 セリカはリューキネと向き合うように、卓の前に腰を下ろした。それから果実の香りが濃厚なお茶を二杯ほどいただき、他愛もない話をした。このような何気ないいつものやり取りが、今日ばかりはもどかしく感じられる。
 ようやく公女が人払いをしてくれたところで、間髪入れずにセリカはエランの居場所を訊き出そうとした。

「姉さま……忠告いたしましたわよね。殿方の事情に、姫君が踏み込むべきではないと」
「憶えてるわ。危険は承知の上で、訊いてるの」
 向かいの席の美少女は憂いを帯びた表情で遠くを見つめ、そっと息を吐いた。
「わたくし、兄さまたちが本格的に争い合う日が来れば、アスト兄さまの側に立つと前々から決めていましたの」
「…………顔の崇拝者だから?」
 敵対宣言をされていると解釈すべきか。セリカは目を細める。
 ――これは仮定の話だろうか。それとも公女は既に宮殿内の異変を、兄弟同士の諍いが原因だと、そう突き止めたのだろうか。

「ご恩があるからです。わたくしが自暴自棄になっていた頃に、救ってくださいましたの」リューキネ公女はキッとこちらを睨みつけたが、すぐにまた表情を緩めて嘆息した。「けれど、エラン兄さまにも恩があります」
「じゃあ……あなたの知っていることを話してくれるわね」
「ええ、知っていることであれば。誰がエラン兄さまを隠したのかは存じませんわ。知りたくもありません、巻き込まれたくありませんもの。そうですわね――エラン兄さまでしたらきっと、地下にいらっしゃいますわ」
 地下、とセリカは思わず呆然となってオウム返しにした。

「普通は誰も近付かない場所に『それ』を建てるでしょう。実際に都のすぐ外にあります。でもこの宮殿の敷地内にも、ありますのよ。特殊な理由で公にできなかったりしますから」
 リューキネは、主語を省いた意味深な言を並べ立てる。
「すぐに兄さまをどうこうするには、時間が足りなかったのでしょう。思い立ってから行動に出てまだ一日と経っていないはずです。地下で間違いありませんわ」




返信@ナルハシさん

スマホでしたか! 当初ミスリアをガラケーで読まれていませんでしたっけ? 懐かしい…w

私もたまにスマホからブログの表示を確認したりするんですが(そしてやはり呪われる)、基本的にブログのレイアウトはデフォルトなのですよね。いえまあ、レイアウトで広告が消えるのかは謎ですが… 2011年頃はPCテンプレしかいじれなかったんで、数年後にスマホテンプレができてからも放置状態…一度くらいはいじってみた方がいいですよねw

呪いよ、なくなーれー!

拍手[1回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

07:52:12 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
えいやーさっさ
2017 / 06 / 16 ( Fri )
(記事タイトルに意味はない)

どうもー
明日ようやっと自分の家に帰って、日常に戻ると思われる甲です。

え、今日は何をしたのかって? サンキューカードを80枚ほど手書きでしたためたんですよw しかも住所はラベルにプリントアウトして貼り付けられるように、エクセルに名前・住所・備考ETCを事細かに入力したりして、フォーミュラでぴしっと出力。いやはや、我ながら、まるで本職がデータ管理の人であるかのようだ(⌒∇⌒)ノ(そうだよ)

昨日で一週間経ちました。たかが一週間、されど一週間。そのうちつらい思い出が褪せて幸せな思い出だけが残るのかなと思ったり、それはそれでもったいないなと思ったり。色々がイロイロです。

さて。更新再開は今週末って感じです。ふと思い返してみると、やっべえ黒赤いまめっちゃいいところじゃねーか! 書かないと! ぎゃー! って気持ちになりますw



拍手返信@ナルハシさん

おお、ありがとうございます。
その呪い、もしや…携帯から読まれているのですかw?

そうなんですよー、恋愛カテとさんざん豪語しておきながらなんちゃって戦闘もまじってます。私はどうもお子たちにストレートに恋愛をさせられないようです。しかし必ず爆発させますので(笑)、ごゆるりとお楽しみくださいまし( ^^) _旦~~

読了報告ありがとうございましたー!!!!

拍手[2回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

11:00:47 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
わたくしごとですが
2017 / 06 / 11 ( Sun )
ですが、






拍手[1回]

続きを読む

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

23:19:06 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
ついにというかなんというか
2017 / 06 / 08 ( Thu )
とりあえずしばらく更新できるかわからない、との一報。






拍手[1回]

続きを読む

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

05:55:00 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
六 - b.
2017 / 06 / 07 ( Wed )
 短い回想の旅から戻って来ると、頬が熱くなっているような気がして、つい指で触れて確認する。そして実際に熱かった。意識してしまうとますます恥ずかしさがこみ上げる。

「ねえバルバ。エランを見なかった?」
 気を紛らわせようとして、侍女の背中に向けて問いかける。
「公子さまは、夜にひとりでどこかへ行ったきり、戻らないのですよ」
 振り返った彼女の双眸は憂いに揺れていた。心臓が冷たい手に掴まれた気がした。
「ひとりって……タバンヌスは一緒じゃなかったの」

「あの方は公子さまに命令されて、姫さまの護衛のために屋根上に残りました。でも明け方まで待っても公子さまが戻られないので、通りがかりの兵士に交代を頼んで行かれましたよ」
 バルバが目配せする。その目線が指す方へ、二人で歩んだ。屋根から下りる梯子の前には、武装した見知らぬ男が立っていた。二、三ほどその者と問答をしたが、目ぼしい情報は得られなかった。

 胸騒ぎがする。次にどうすればいいかわからずに、セリカは一旦自室に戻った。身体を拭いて着替えを済ませ、もう一度バルバと共に宮殿内を出歩く。
 気のせいだろうか。やたらと静かである。元々広い宮殿とはいえ、誰かとすれ違うまでに数分かかった。
 最初にすれ違った女中たちは共通語が不得手で、話しかけてもあまりはっきりと受け答えをしてくれなかった。次に庭園で遭遇した官僚たちもよそよそしく、相手にしてくれなかった。

 諦めて朝食に向かおうかと回廊を進み出し、その矢先に小さな人だかりを見つけた。まだ成人していないような年頃の少年と、後ろにぞろぞろ続く男性が四、五人――少年は自分より幾まわりも年上の者たちに向かって助言や命令をしているようだった。話の内容は断片的に聴こえてくるも、難しい話をしているらしいことしかわからない。
 セリカたちは速やかに頭を下げて道を開けた。鋭い目付きと隙が無い立ち姿をしたこの少年は、確か第六公子のハティルだ。

「姫君。おはようございます」
 そのまま通りかかるかと思いきや、少年は足を止めた。
「おはようございます。ハティル公子」
 微笑み、顔を上げる。
 あちらから話しかけてくるとは運が良い。更に運の良いことにいつの間にか人だかりが解散していた。目の前にはハティルと、付き人らしい壮年の男しか残っていない。
 お約束の天気の話題を済ませてから、お伺いしたいことがあります、とセリカは本題を切り出した。

「どうぞ。僕に答えられるものなら」
「では遠慮なく――エランディーク公子が何処(いずこ)にいらっしゃるか、存じませんか」
「エラン兄上ですか。僕は会ってませんけど、まだ寝ているという可能性も……。兄上と何かお約束を?」
 ハティルの声も表情も、本気で驚いている風に感じられた。

(昨日あたしたちが夕食を一緒したのは知れ渡ってるはず。ならその後は、どうかしら)
 セリカの腹の底で勘のようなものが働いた。慎重に返答すべきだと判断する。
「いいえ、約束はしておりません。ただひと目お会いしたいと思った次第です」
「エランなら所領に帰ったって聞いたぞー?」
 回廊の先から人が近付いて来る。歩きながらパンを頬張って食べかすを巻き散らすこの行儀の悪さ、第三公子ウドゥアルだ。

(所領に帰った……? 言伝もなく? 「聞いた」って、誰に)
 最後の疑問はハティルが代弁してくれた。すると第三公子は、大臣が言ってたんだぞ、と答えた。
(ウドゥアルは口裏を合わせてるだけ、それとも本当に何も知らないの? 情報の発信源はその大臣か、別の誰かか)
 セリカはいくつかの引っかかりを感じたが、敢えて何も追及せずに公子たち二人の会話を静聴した。

「帰ったって、こんな時にですか。ベネ兄上みたいに火急の用事でしょうか」
「ルシャンフ領なんて蛮族しか住んでないんだし、なんかあったんだろ。そんなことより、結婚式なくなんのか? せっかくいい肉にありつけると思ったのに。親父殿は、面会謝絶だ。おれももう帰っていーか?」
「帰ればいいんじゃないですか」
 兄の質問に、弟は投げやりに答えた。
 そこでセリカは無難な礼の言葉を並べて、その場をやり過ごした。拭えぬ違和感を胸に抱えたまま、彼らの後ろ姿をそれぞれ見送る。

「ひどい……。姫さまのお立場はどうなるのですか……」
 二人だけになると、バルバがやるせなく呟いた。
「――嘘」
「姫さま?」
「嘘よ。エランは、そんなことしない。何かがおかしいわ」
 そう断言すると、バルバは怯んだようだった。もしかしたら自分は今、かなり険しい顔をしているのかもしれない。

「え、ええ、しっかりしてそうな方ですものね。無責任な真似はされないと、わたしも思います」
「無責任……そうね」
 それだけではない。夜中にいなくなったという事実の異常さは変わらない。
 百歩譲って、既に延期されている結婚式よりも重要な案件が所領で発生したとしても――

「堂々と妃を連れ回すと、あいつは言ったわ」
「はい……?」
「伴侶にそれを望むと。だからどんなに急いでいても、ひとりで発つわけない」
 低く呟きながらも、セリカは思考回路を最大速度で回していた。

拍手[1回]

テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename>

04:06:31 | 黒赤 | コメント(0) | page top↑
| ホーム |次ページ