47.g.
2015 / 08 / 27 ( Thu ) どうすれば自分もそんな強さを手に入れられるだろうかと、改めて悩む。 (今はそんな場合じゃないか)真っ赤な炎に聖気の黄金色が混ざり、やがて鮮やかな光景は解かれるようにして、銀色の素粒子だけを残して鎮まった。 浄化が終わると、急いで衣服を回収して袖に腕を通した。 外ではちょうどゲズゥが小さな魔物を一匹、二匹と倒していた。ミスリアが傍に駆け寄るなり、振り向かずに彼はひとつ問いかけた。 「……オルトは『混じり物』が何体居ると言っていた?」 突拍子のない質問に驚きつつも、ミスリアはつい数時間前の会話を思い返した。 「数は聞いてません。『ヤツ』と呼んでいたので、一人かと……」 「そこが思い込みの始まりか」 「思い込み?」 「俺も、その時の会話は多少聴こえていた。水を伝うようでハッキリとしないが、左眼は聴覚的情報を受けられる」 相槌を打つことができなかった。急に、小型の魔物がそこかしこに姿を現し始めていることに、気を取られたのである。 それなのにゲズゥの落ち着いた視線の先は別の物を捉えていた。 「まともな武器もなしじゃ、厳しいな」 魔物に完全包囲された現状を超える苦境、を予想させる一言。 (これ以上に何があると言うの) 確認する勇気を、ミスリアは己の中のどこかから掬い上げた。 「女だ! しかも珍しい色白! しめたー!」 斜め上辺りの岩の上から声がした。暗闇の中から疎らに魔物の燐光が見て取れるものの、その者の全体像を浮かび上がらせるには足りなかった。 「ほらみろ、オイラの言ったとおり、里行くのやめて正解だったな! 夜まで待って魔物の集まるとこを探すだけで、簡単に見つかるもんだよなぁ」 「さいしょに……みつけたの……ルゾ」 「だな! 滅多に降らない雨にお前がはしゃぎまわったおかげだな。みうしなったけど!」 聴き慣れない訛りとはいえ、しっかりとした北の共通語だった。まるで、こちらにも理解できるように共通語をわざと使っている風に感じた。 (子供……?) 目を凝らして、十五か十六歳くらいの少年を二人見つけた。 (少年、なのかな) 長い髪に華奢な体型、どちらともいえない高らかな声、どれも中性的な印象をつくっている。 そして一目見て、彼らがまともではないとわかった。 何故なら、異形の集いに混ざって平然としているのである。 以前ティナが魔物の群れを連れて行動していたと聞いたが、それとは性質が違う。目の前の魔物は、少年たちに対して遺族への執着のような感情を見せず、食べようともせず、ひたすら無視している。 (魔物の興味を引かない……この子たちが、「混じり物」?) 状況的に、彼らを疑うのは仕方ない。 隣のゲズゥもそう結論付けたのか、迂闊に攻めずに、ただミスリアの前に立ちはだかっている。 「新参――じゃなかった、よそ? よそもんは価値があるってさ。連れて帰ったら、ヤンの奴喜ぶかな。なあ、ジェルーゾ」 「でも、ひとり……にげた」 「いいんだよー、あれはどうせ男だったし」 「よそもの……にがしたら……ヤン、おこる……」 「わーかってるって。この後ちゃあんとさがし出してなぶり殺すから、それでいーんだ」 |
|