頭痛が痛いみたいなことを言いますけど
2019 / 05 / 08 ( Wed ) |
3-3. e
2019 / 04 / 08 ( Mon ) * 狭い空間に充満する確かな死の予感と、臭いが、ミズチの嫌悪感を煽った。 臓腑を絞られるような嫌な気配だ。 生命の終焉そのものに思うところはないが、この類の死には、どうも慣れそうにない。 ――飢餓。 縮む筋肉の代わりに膨らむ下腹部、窪む皮膚に代わって突き出る骨。生物が一生を終えるに至るさまざまな手段の中でも、最もいたたまれないもののひとつだろう。病に屈する者のほとんどは、根本的には臓器と細胞の餓えによって力尽きているのだろうとも思う。 強靭な生命力とずば抜けた回復力を持ち合わせたミズチでさえ、飢餓による死だけは、どこか身近に感じられる。きっと生きとし生けるものがみな、五臓六腑の奥深い場所で実感できる苦難だからだ。 寿命というものから遠ざかった上位個体でさえ、本能を思い出すことはできる。 これが恐怖かと歯噛みする。 恐怖と、それから――憐憫ではない。憤りだ。 何故、平行線なのか。どうすればこの男は、わかってくれるのか。 うまく言葉にできない怒りを視線に込めるしかない。差し出した食物のことごとくをはねのけられ、途方に暮れた瞬間でさえ、自分は未だに諦めきれないらしい。 喪う恐怖――。 ほんの少し、受け入れてくれるだけでいい。かつてのように、こちらが差し出す食料を咀嚼して飲み込んでくれればいい。 どうして拒むのか。死んで無実を証明したとして、意味があるのか。たとえば村人の注意を引いて例の家族が夜逃げするだけの時間を稼げたとして、奴らは遠からず役人に捕まるのではないのか。 ニンゲンの社会はいつだって理不尽だ。それでも彼はこの社会《ムラ》を愛しているという。 そうまで言い切られては、ムラという輪の外に在るミズチが何を言ったところで無駄だろう。 もどかしい。元より先立たれるだろうとはわかっていたが、このタイミングで、こんな形で、とは予想していなかったのだ。 「っ、蛟龍……」 おぼえているか、と痩せ細った青年はため息のように囁く。乾いていくつもの亀裂ができた唇を苦しげに動かして。吐き出された息には、ほとんど体温が伴っていない。 幽閉されたばかりの頃、まだ五体満足だった姿から幽鬼のようなこの状態になるまでの変遷を、ミズチは眺めて来た。決して気分の良いものではなかった。 毎日、水だけは誰かが無理やり飲ませていた。「罪人」が罪を認めるまで死なせないつもりだったのだろう。 村人の目論見は外れた。この男の意地が、勝ったのである。 ただこの試練には果てが無い。期日まで無実を主張しきって生き延びれば釈放、という褒美はなく、ただ死すのみである。 ニンゲンのやることは時々、実に無意味だ。 「……港で、お前に食べさせてもらった、カタツムリ」 「おぼえてる」 確か食した直後にラムは目を丸くして固まったのだった。後になって聞かされた話、あまりの美味さに頭が真っ白になり、泣きそうになっていたのだと言う。 それを聞いた時、大げさなやつ、とミズチは笑い飛ばしたものだが。本人はいたって真剣だった。 「我々は、それを親切と呼ぶ……お前が自分の物を僕に分けてくれたのは、決してあの時だけじゃ、なかったな」 「そーだな。むしろあの日を皮切りにイロイロくわせてみたんだっけな」 「食べ物、以外も、だ」 冷たい闇の中で、青年が笑った気配がした。 ミズチは思わず頭をかいた。最もかけてやったのは、時間と労力だろうか。 本当はわざわざ指摘されなくても、自分の行為は記憶に残っている。このニンゲンが腹が減ったと嘆けば食物を確保し、寒いと訴えれば毛皮となりそうな野生動物を狩った。病に伏したなら、自らの鱗を口に含ませて生命力を分け与えたりもした。 そして歩き疲れたとくずおれた際には――大蛇となって幾里か運んでやったこともあった。他者のためにここまでしてやったのは、ミズチにとっても初めての経験である。 「この国の民以上に、僕に優しかったのは、お前だ。お前にそんなつもりなどなくても。祖国を発つ勇気、新天地を求めて旅立つ力は、蛟龍がいたからこそ……持てた。そそのかれて、『挑戦』してみて、よかった」 長く語り過ぎたのか、そこまで言って、ラムは激しく咳き込んだ。 「むりすんな。もうあんま声だす力もないくせに」 諫言はあっさりと無視される。 「だ……から、最後に、頼まれてくれないか」 「だからやだっつっただろ」 「そう、言わずに。僕にはほかに頼れる相手がいない……いや」また咳を挟んで数十秒。「お前だから、頼りたい」 ――家族だと思っている。 音にならない声で、言った。 |
3-3. d
2019 / 04 / 03 ( Wed ) 「ナマの方がおいしいのに」
「おなかこわすのヤダよ」 ちょっと火をおこしてくるから、と少年が立ち上がる。ミズチは仕方なくついていった。少し離れた浜辺で小枝や薪などの必要なものをそろえ、ようやくカタツムリを調理し完食し終えた頃には、なにやら日が傾きそうな時刻になっていた。 これだからニンゲンは面倒だ、とは言わずに。陸貝の旨味にいまだに目を丸くしている彼に話しかける。 「かえるとこないならいっそあたらしい土地にいけば」 港は、あれから何隻かの船が出航していた。 残るいくつかの大きな船影を、ふたりは足を抱き込んだ姿勢で眺める。常に誰かが何かを運び込んだり、何かを点検しているようだ。いずれも長い船旅を予定しているらしいのはなんとなく感じ取れた。 密航するなら夜のうちに人知れず乗り込んでしまえばいい。そのようにミズチは提案した。 「そんなうまくいくかなあ」 ただでさえ初めての航海に、人目を盗んで乗り込む危険。食事も排泄も寝起きもきっと満足にできないだろうし、見つかったらどのような罰が待ち受けているか――力説する七男に、ミズチは肩をすくめる。 「えらぶのはおまえだ」 個人的には、どちらでも構わなかった。 既に明らかになっている不幸と、あるかどうかまだ知れない不幸。結果がどうなろうとも、選択の責任を負えるのは当人のみだ。 「わかってるよ。でも、妖怪は、ぼくに……ついてくるつもりなの?」 「ん?」 一瞬、何を訊かれたのかがわからなかった。否、改めて訊くようなことだったのかと驚いてしまった。「つもりだぜ」 「海をこえるんだ。きっとたいへんだよ」 「塩水はまずいけど、べつに海なんてこわくねーよ」 「ことばがつうじないよ」 「おぼえなおせばいーんじゃん」 「し、しってるひとがほかにだれもいないんだよ!」 「ふつうじゃね?」 何をそんなに興奮しているんだ、とミズチは首を傾げる。 腕を振り回して抗弁していた七男は、急にがっくりと肩を落とした。疲れたような、呆れたような笑い声を漏らして。 「きみにこわいものはないんだね」 「恐怖かあ。そういわれりゃ、どーゆーかんじかわっかんねーなー」 ミズチが変異を遂げて蛇の「枠」から逸脱して以来、生命の危険を感じなくなったのは、何百年前からだったか。日々を必死に生きなくなったのは、いつからだっただろうか。 生命維持にさほどの努力を必要としないのだ。ニンゲンの不安など、わかろうはずもない。そしてニンゲン側からも、己が理解されることはきっとないだろう。 「もともときみは、ちがうところから……すごくとおくからきたんだっけ」 そう呟いた少年の横顔は、ミズチが模している状態に比べて幾分か成長を経ていた。その成長を細かく追って擬態してもよかったのだが、なんとなく最初に真似た小さい形状が維持しやすいのでそのままにしている。 ミズチは小さく首肯した。 生まれた土地について多くをおぼえてはいない。ひたすらに当てもなくさまよっていると、時間の流れにも地理にも執着を持たなくなるものだ。 「ぼくにもできるかな。こわいけど、きみがいっしょだったら、できそうなきがする」 「んん。なにが?」 「あたらしい……『 』だよ」 七男が口にしたのは、ミズチにとってまだ知らない言葉だった。厳密には、今会話している言語の中では初めて聞く単語である。 どういう意味かと訊ねる。 「ちょっとまって。そのまえに――」少年はゆっくりと腰を上げた。「しのびこむふね、どれにするかきめようよ」 にかっと少年は口を大きく開いて笑った。 出会った頃は欠けていた乳歯が、既に永久歯に生え変わっている。対するミズチは数年遅れの、同じ者のかつての笑顔を返す。 果たして、共に東の島国に渡った。 |
遺伝子っていったい
2019 / 03 / 28 ( Thu ) 以前やったDNA鑑定に新データ追加、よりはっきりとした解析結果が出る。
……なんと私は4割ベトナム人らしいよ! 今まで私は何を信じて生きてきたのか! (12%ぐらいだと思っていた) でもベトナム語は ぜんっぜん わからないよ! |
3-3. c
2019 / 03 / 17 ( Sun ) そうして、はじめの邂逅からしばらく経った頃。 下層の者がより裕福な家に使用人となるために売られるのは、当時にはよくあることらしかった。集団生活においての間引き、口減らし。たとえ売る側が得るのは一時のみの対価であっても、それを選択する家は少なくなかった。なかでも七男の家のニンゲンは「華人」と呼ばれる異邦の少数民族の枠に入るらしく、街に出ても働き口は限られていた。うまく成り上がったほかの華人の家に受け入れてもらうのが、ひとつの生き方だったそうだ。 潮の匂い、浮遊物が波に揉まれてぶつかり合う音。 何日も前から姿が見えなくなった七男の気配をたどった先が、港だった。物陰に縮こまっているところを背後から無遠慮に話しかけたら、見慣れた泣き顔がこわごわと振り返った。 目が合うなり、表情が目に見えて和らいだ。よほど心細かったようだ。 ミズチは隣に腰かけて、これまでどうしていたのかを聞き出した。売られたのだと聞いても、これといって感慨は沸かなかった。それならそうともっと早く教えてくれれば、探し出す苦労を省けたのに。 「つーかおまえはそこまで理解してて、なんでないてんだ」 「うぅ……『ご主人』がすっごく、きびしいんだ」 「それがどうしたよ」 衣食住を得る代わりに働くという仕組み、力関係はもとより一方的だったのではないか。わかりきっていた現実をいちいち嘆く理由が、ミズチにはつかめなかった。 「いたいのもこわいのも、もうやだ……」 言われて見れば着物からのぞく手足が生傷だらけである。まるで鞭に打たれたような痕だった。足は泥に汚れ、皮膚がめくれて鮮血が滲んでいる。 何度目かのせっかんの後、七男は思わず敷地から飛び出したのだと言う。当然、行き先に当てなどなかった。 「なんならおいらがそいつ、始末してやろーか」 「だめだよ! ご主人がいなくてどうやっていきれば……それに、ご主人はぼくの『しつけ』のためにやってるだけだって……」 途中から己の言い分に自信を失くしたのだろう、声が消え入り、ついには波の音にかき消されてしまった。 「じゃあもどるんか] 逆に提案してやった。だがそれにもはっきりとした否定が返ってきた――無我夢中で逃げ出しただけに、帰り方がわからないらしい。 「妖怪……ご主人のいえ、どこかわかる?」 「むり。接触したことないヤツの居場所なんてどーやってみつけだせってんだ。いまのおまえにはいろんなニオイがついてるし」 「ど、どうしよう。これからどうやっていきよう」 「そのうちだれかがさがしにくんじゃねーの」 「さがしに……さがされたら、また、いたいかな……」 目を泳がせて爪を噛む少年に対し、ミズチは頷いた。文脈から考えて、ある程度の覚悟は必要だろう。 七男は再び泣き出しそうな顔をした。だがそれよりも早く、腹部から空気の入った袋をねじるような音が響いた。 「とりあえず腹へってんなら、カタツムリでもくう?」 ミズチはつい先ほど採ったばかりの食糧を差し出した。 お約束のように叫び出すかと思えば、七男は気分悪そうに顔を歪めただけだった。やがて、おずおずと手を伸ばす。 「おっ!? くうんか!」 つい、歓喜に大声を出してしまった。 これまでにもさまざまな食べ物を差し出してみたものだが、このニンゲンがそれを受け入れた回数は、まだゼロであった。 言っているそばから、手が引っ込められた。 「や、やっぱりやめる……それ、どうみてもまだうごいてる……」 「うごかなければいーんだな」 「火! 火、とおして!」 |
そのむかし、
2019 / 03 / 16 ( Sat ) 惣流・アスカ・ラングレイ
みたいな名前にちょっとしたごろの良さというか憧れみたいなものを抱いたことがあったのだが、おそらく我が娘もそんな感じの名前になるw つっても和苗字がミドルネームになるけど。 どうでもよい。 |
ぐちぐちするよ
2019 / 03 / 02 ( Sat ) 胎児のせいにしたくはないのだけど… 一日中ぐりぐりぐりぐり動かれていては何事も集中しづらいよねって話。たまにイラっときて腹叩いてしまうの、ゆるして。元気が一番とか個性だとか言われればどうしようもないのだが(頼むから寝てろ
あと食べても食べても満たされないのめんどくせえ。「好きなものを好きな時に食べる口実ができてうらやましい!」と言われても「は? じゃあかわる?」って気分です。作業したいのに1-2時間ごとにおやつボリボリしてなきゃならないの、煩わしい以外の何物でもないんですけどー。しかも食べるとのど乾くから水のむし、トイレ行きすぎて職場のトイレの壁見飽きたし、なに食べてもやっぱり胎児はあばれるし。まさか職場にいる間に歌うたったり話しかけるわけにもいくまいよ。 これがあと二か月も続くのかーうわーって感じ。体重はまあ、増えすぎてないよ。だんだん歩くのがつらくなってきて姿勢もちょっと気を抜くと悪くなってて、危機感はある。 とまあ愚痴ばかりになりましたが、今夜は友達が遊びに来るので頑張ってもてなします。急遽うちに泊まることになったので掃除がやばかった…w |
3-3. b
2019 / 02 / 21 ( Thu ) 次に会いに行った時も、またその次に会いに行った時も、同様にニンゲンは泣き喚いて逃げた。ようやく話を聞いてもらえたのが何度目の接触でのことだったか、ミズチ自身おぼえていない。
逃げるものを追いたくなる衝動を我慢したのが最初の数回で、ついには逃げる背中に飛びついた。暴れて逃げようとするニンゲンに、ミズチは感心の声をかけた。 「おまえ、足はやいな」 「うわあああしゃべったあああ」 捕らえた獲物は後頭部を手で守るようにして草の上にうずくまった。 「れんしゅうしたからな」 「うわあああああれんしゅうするなあー! ……?」叫ぶ間の息継ぎで、ニンゲンが我に返ったように頭をもたげる。「れんしゅうしないとしゃべれないの」 何か奇異なものを見つけたような目だった。ミズチは肯定した。 「きみは『 』なの」 「そのことば、しらない。なんて言ったんだ?」 「ぃゆぅぐゎぁい」 「ゆっくり言われたからってわかんねーもんはわかんねーし」 「うーん……きみはぼくをたべるの」 「ニンゲンは、すっげーまずいってきいた。べつにたべたくないな」 「たべないならどうするの?」 「そだな、きこーとおもってて」 ニンゲンの姿を真似たついでに、ミズチは衣類の擬態もしていた。帯の中から、赤い果物を取り出してみせた。 手の平に二個のせて差し出す。それを見やり、ニンゲンは黒い目をぱちくりさせた。 「ライチー?」 「って、いうんだな。これのたべかたを、おまえにきこーとおもって」 「ライチ―おいしいよ」 一度的外れな返答があったが、しばらくして、ニンゲンは果物をひとつ指の間に取った。爪を立てて、器用に皮をむきとってみせる。 「ほら」 「おー、はやいな」 「えっへん。とくいなんだ」 褒められて、ニンゲンは嬉しそうに腰に手を当てた。以前までに感じられた警戒心も徐々にとけつつあるようだ。会話ができる相手というのは、それだけで親近感が沸くらしい。 これも後になってわかったことだが、他者を簡単に信じてしまうのは彼の個性の一部でもあったのだ。 「ほかになにがとくいなんだ」 つたない手つきでもう一個のライチをむきながら、ミズチは訊ねた。 「ほかー……ろくじゅうかぞえるまで、いきをとめられるよ。あと、かくれんぼもとくいだよ」 「くわしく」 「ききたいの?」 「おまえにきょーみが、あるからな」 そう答えると何故かニンゲンは頬を少し赤らめて俯いた。 こうして、かくれんぼとは何か、と話題はニンゲンの幼体が取り組むさまざまな遊びに及んだ。 やがて成体のニンゲンの「阿七! 遊んでないで戻れ!」と呼ぶ声によって、この小さなニンゲンとの邂逅は終わった。 次回は、出会い頭に叫ばれずに済んだ。 普段あまり話し相手になってくれる者に恵まれていないのか、それからニンゲンは毎度にこやかに迎えてくれた。自分に興味を持っている相手がいるということ自体がうれしかったらしい。 兄や姉が多くいる家の十二人目の子供あるいは七男で、存在自体が家族に煙たがられているそうだった。卵の殻を自力で破いた瞬間から終始、一匹で生きてきたミズチには家族というものがよくわからなかったが。 「『妖怪』は、どうしてぼくとおなじかおをしてるの」 「んー、あたらしくつくるより、まねするほうがうまくニンゲンになれるから」 「ほんとうはどんなかおなの?」 むき出しの土を枝でえぐるようにして、ミズチは小さく蛇を描いた。と言っても、目や口すら描き入れないような単純な輪郭だ。 「蛇ちゃん、かおがないよ」 「これだけで蛇ってわかったんだから、べつにいらなくね」 「どんなかおしてるのってきいたのに……」 ニンゲンはふくれっ面をしてしゃがみこんだ。指先で蛇の絵に目玉を加えていると、突然何かに気付いたように息をのんだ。 「あのときのちっちゃい蛇だ」 「やっとおもいだしたな」 「だって蛇が、ばけてでるなんて、そんな童話みたいなことがあるなんて」 恐怖の色が眼差しに侵入し、じわじわとニンゲンの表情に広がっていった。今更何を、とミズチは思う。 「おどろきおわったか」 「おわってない」 「それよりききたかったんだ。なんであのとき、ないてた? んだよ」 否定の返事を無視して、ミズチは質問をした。目と鼻から水を流す状態を泣いているというらしいことは調べがついている。そこには、強い感情が伴うものだと。 「さわるの、こわかったから。あと、かわいそうだったから」 何がかわいそうだったのかと訊き返すと、答えはこうだった――おうちからいきなりおいだされちゃうの、かなしいよ。 だがミズチはあの餌場に強い愛着を持っていたわけでもなく、深い目的があって水域をうろついていたわけでもなかった。 むしろ、後に棲家から追い出されて苦労するのは、どこぞの家のこの七男の方であった。 |
ちょいSS
2019 / 02 / 09 ( Sat ) その日の典礼のあと、教会から家に帰りついたのは夕方近くだった。狙ってそうなったわけではなく、気が付かないうちに影が伸びるような時刻になっていた。 教団から除名されてなお、かつて聖女であったミスリア・ノイラートには聖なる気を介して人を癒す力が多少なりとも残っている。そうと知って相談に来る者の相手を、今までしていたのだ。「もうこんな時間……おなか空いてませんか?」 共に行動していた相方に問う。黒髪と色素の濃い肌が印象的な長身の男は、手荷物を長椅子に下ろしながら首を横に振った。 すると特に脈絡もなく麻のシャツを豪快に脱いで、裾で首回りの汗を乱暴に拭いだす。 「そういえば皆さんの片づけを手伝ってくれていたそうですね。お疲れ様です」 今日は午後に差し掛かってから特に暑かったのだから、汗が気持ち悪くなっていたのだろうとミスリアは察した。 「手伝った礼に食い物をもらった」 男は顎で持ち帰った荷物の方を示す。 帰路を歩いていた時には目に入らなかったが、いつの間にか、朝に家を出た時になかった袋が増えている。中身をあらためると、温めればすぐに食べられるような品物ばかりだった。 「今夜はこれで楽に夕食の用意ができそうです」 「飯の前に水を浴びてくる」 バサリ、脱ぎ捨てられた服が音を立てて洗濯籠の上に落ちた。洗濯物はあまり溜まっていないが、早めに洗わないと臭いがしつこくつくかも――内心でミスリアは苦笑する。 「お湯を沸かさなくて大丈夫ですか?」 「別に井戸水でいい」 「わかりました」 眼前を横切る素肌に向かって手を伸ばしたのは、無意識からだった。そして無数に目につく傷痕の中で腹部のひとつに触れたのは、ちょうどそこがミスリアの肩ほどの高さにあったからだった。 黒ずんだ窪み。本人ですら、どうやってついたのか忘れていそうなほど古い傷痕である。 「私が、死に別れるまでに貴方のためにしてやれることは、そう多くないのでしょうけど」 「…………」 「明日の食事にありつけるかわからない生活や、こういった生傷が増えるような生活をしなくていいように、寄り添うことはできると思います。いえ、そうしたいです。私が」 伸ばした指を包む温もりがあった。 出会った当時とほとんど変わらない、大きくて武骨な手。汗ばんでいるのも気にならないほどの心地よさ。 「それでいい。それは、お前にしかできない」 「はい」 彼は少しかがみこんで、掴んだ手を口元に引き寄せた。かかる吐息が熱いが、やはり気にならない。 あの、とミスリアは首を少しばかり傾げて切り出した。 「お背中流しましょうか」 ああ、と答えたゲズゥは微かに笑っていた。 「頼んだ」 *この時点でのゲズゥは既に働き口を見つけています。教会にも毎週顔を出す、立派に社会の一員……。ていうか昔は他人と一緒に食事もしなかったんだよなぁ、となんかしみじみ。 |
3-3. a
2019 / 02 / 04 ( Mon ) 出会ったのは、水田の近くでだった。 ミズチがその地に流れ着いて日が浅かったため、近辺の民が使う言語はまだ理解できなかった。ニンゲンの生活習慣、表情の機微などに興味もなかったので、何のために捕獲されたのか、当初は見当がつかなかったものだ。後になって聞いた話、ラムは害獣退治を押し付けられていたらしい。むやみにどうこうするよりは近づかない方が懸命だというのに、兄や姉たちはおそらく末弟をいじめて楽しんでいたのだろう。本人はそう推測していた。 小蛇の姿で昼寝をしていた。 つまみ上げる指の圧力と持ち上げられる感覚に意識が呼び覚まされ、しばらく空中を移動してから再び地面に下ろされた。元居た場所を振り返り、何をされたのだろうと不思議に思っていると、幼体のニンゲンの視線に気が付いた。 ニンゲンは目と鼻から水を流していた。しきりに口から言葉を発していたようだが、何を言っているのかはわからなかった。脱兎のごとくニンゲンは走り去った。 それだけだった。それだけの関わりで相手に興味をおぼえ、ついでに体臭もおぼえたので、探し出して観察することにした。 次に接触したのは果物の樹の下でだった。 果物の外皮は赤く分厚く、中の実は白かった。ミズチは自らのストーキングの標的と定めた小さいニンゲンが地面に座って果物の皮をむいていたのをしばらく観察した。あまりに真剣に手元を睨んで、あふれ出た汁をさも美味しそうに舐めとっていたので、自分も食べてみたら美味しいだろうかとふとミズチは考えた。 同じ姿になれば同じようにして食べられる。当時はニンゲンに化けるのがまだ不得手だったが、この個体は既に何日も眺めてきたのだから、概容はわかったつもりでいた。 そこに相手を驚かせようと意図はなかった。なかったのだが、そういう結果になった。 ニンゲンは悲鳴を上げてやはり走り去ってしまった。声をかけようとしたものの「うあ……か……」という具合に言葉を成すには至らなかった。 仕方なく、皮が半分むかれた果物を拾った。だが指を動かすことをはじめ何もかもが不慣れで、うまく口にすることができなかった。 あのニンゲンにコツを訊かねばなるまい。次に接近する時までにもっと完全な声帯をつくり上げて、ついでに言葉を習得した方がいいだろう――。 * 「のんびりだね」 途中まで聞いた唯美子の感想が布団の中に響く。 他には、相手と同じ姿に化けて出たら驚かれるのも無理ないとも思ったが、これには本人も後に気付いたであろうから指摘しないでいた。 「そうかあ? なにが」 「なんだか思ってたよりゆっくり知り合ったんだねって思って。長命だとそんなペースが普通なのかな。初めての異種間交流だから慎重になっちゃったり?」 比較対象はあくまでナガメと自分との出会いになってしまうが、それに比べると、のんびりとしている。 「慎重とかじゃなくて、まあ、ひまだったし。いそぐ理由なかったし」 「わたしと会った時はそういえば言葉の壁がなかったね」 思い返せば、最初から彼は日本語がペラペラだった。数百年前とでは状況が違ったのだろう――そう考えた時点で、素朴な疑問が沸く。 「ラムさんはもともとどこの国から来たの。村人は南蛮って言ってたと思うけど……タイ? フィリピン?」 「さー。ニンゲンがつくった線引きなんてすぐズレるし……位置的にベトナムだったんじゃね。あいつ、クニでも『いほーじん』だった気もするけど」 「う、うん?」 生まれ故郷でも異邦人というのは、どういうことだろうか。そのうち腑に落ちるものかなと思い、再び唯美子は聞き役に徹した。 |
らくがき雑多
2019 / 01 / 28 ( Mon ) |
3-2. f
2019 / 01 / 26 ( Sat ) 「あったかいフトンってやつで眠ってみたいとおもったことならある。そういうのはアリか」
「いいね! あったかい布団、いいと思うよ」 唯美子は手を叩いて賛成した。手軽に叶えてやれるリクエストだし、新しいものを発見する感情は、どんなにささやかな挑戦からも得られるだろう。 「……でも何百年も生きてるのに温かい布団が未体験って、ちょっと信じられないね」 「それはほら」 「!?」 少年は一瞬で唯美子の腕の中に飛び込んでくる。勢い余って後ろに倒れると、まるで出番を待ち受けていたかのように布団一式がそっと受け止めてくれた。 しゅふん、と微かな音を伴い、ふたりして沈み込む。 腹の上にかかった重みに戸惑った。水辺を思い起こさせるほのかな匂い。小柄な体は、相変わらずぬるま湯といった程度のぬくもりだ。 「じぶんじゃほとんど産熱しないから。ただフトンにくるまってもあったかくなんねーんだな」 「擬態でも一応、体温はあるんだよね」 「恒温動物のまねしてな。たべたものを熱に変えて血を皮膚にめぐらせて……燃費がわるくてやってらんね」 哺乳類ならば内臓も一定の体温で保たなければ生きていけないはずだが、そのぶん一日に何度も食事を採らなければならない。ナガメの食事頻度では人間の基準である三十六℃に届かないのもうなずける。 「えっと、じゃあ一緒にくるまってみる? わたしの体温でよければおすそ分けするよ」 おそるおそる言い出してみた。 みる、と言って唯美子の胸にうずくまっていた頭がひょっこり持ち上がる。 (わるい顔) 茶色の瞳が光ったように見えたのは、天井の丸型蛍光灯を反射したからか。 「なんでかな。誘導された気分だよ」 「へへ」 軽やかで気持ちのいい笑い声が返ってきた。 いざ消灯する時間になり布団の中で腹這いになって肘を立てていると、浴衣を着たままのナガメ少年が隣に潜り込んできた。闇の中でスマートフォンをいじる唯美子をじっと見つめる。 観察されている、ふとそう意識した。 小学生がダンゴムシにするように、生物学者が研究対象にするように。微かに黄色の輪を描いて光った双眸は、画面ではなく唯美子自身の動作を追っていた。 気になるのでやめてほしいとも何がそんなに面白いのとも訊けなかった。温かみをまるで感じさせない無機質な視線に気圧された。何かを探しているようだとも思った。 誰かに送ろうと思っていたはずの他愛ない言葉を忘れてしまい、画面の上で指を宙におどらせる。 ――ヘンな感じ……。 いつかの彼も、こんな風に至近距離から覗き込まれたことがあったのだろうか。知りたい。知りたいが、どう切り出せばいいかがわからない。 「ゆみさー」 「はいっ!?」 耳にかかった息に飛び上がった。考え込んでいて、接近されたことにまったく気が付かなかった。 「ずっとなんか言いたそうにしてるけど、なに」 こちらが言葉を選ぼうとしたのに対してなんてダイレクトな訊き方か。数秒ほど唖然となったが、気を取り直して咳払いした。 「織元さんにね。見せてもらったというか見せられたというか、不可抗力だったんだけどわたしも拒んだわけではなく……あの」 喋り始めてから段々としどろもどろになる。ため息をついて、スマホを枕元に置いた。 画面を消し忘れたため、ブルーライトが暗闇を頼りなく照らし上げている。 冷ややかな青い光が不思議と少年によく似合う。 ヒトではないモノを相手取るのがどういうことか、何度考えても自分はやはり理解できないような気がする。けれど――ナガメ単体を理解したいと願うのは、本心だ。 「きみの過去を少し見たよ」 「へー」 瞬きすらない、平淡な応答。 「驚かないんだね。頭の中? を覗かれるのって、嫌な感じがしないの」 「みられてヤなもんをわざわざ狸にやらねーし」 「な、なるほど」 あっけらかんとしすぎていないか。唯美子は拍子抜けした。 「んで、それがどーかしたか」 「あのね。できればナガメの口から聞きたいんだ……ラムさんって、どんなひとだった? きみが一番使いまわしてるふたつの姿は、あのひとを模したんだよね……?」 質問の内容にも驚いた様子はなかったが、答えるまでに意外なほど長い間があった。やがて、スマホの明かりがフッと消えた。 どんなやつかー、と少年は短く唸る。 「いつもは押しが弱いくせに、しょーもないとこでガンコ。潔癖? そんで昔はなきむしだったな」 「うん」 彼の言う「昔」がいつを指すのかよく掴めなかったが、唯美子は相槌を返した。 「いっぱいあそんでくれた。いいやつだった」掛け布団を頭から被ったのか、布が擦れる音の後、言葉が途中からくぐもって聴こえる。「もっと、あそべたのに」 言葉尻に向かって早口になっていた。 あのひとの結末は、思っていた通り、明るく幸福ではなかったのだと察する。 (どんなに経ってようと辛いものは辛いんだ) 嫌なことを思い出させた罪悪感に、とにかく慰めなくてはと慌てる。逡巡してから、布団の盛り上がりにそっと手の平をのせることにした。 一転して、気が付けば布団の中に引きずり込まれていた。 己の右手首の方を見つめた。暗がりで何も見えないが、確かに巻き付いたぬくみが――細い指が、あった。 「もっときくか」 「きみが話したい分だけ、わたしは聞くよ」 それから続いた間が数秒だったのか数分だったのか、正確なところはわからない。ただその間ずっと、小さな手から力が抜けることはなかった。 「…………ハカを」 「え?」 ハカオとは何だろうと首を傾げると、ナガメは静かに続けた。 「すげードラマじゃあないし、たぶん特別でもなんでねーんだけど。おいらが――」 ――ニンゲンに墓を建ててやった話をしよう。 亀の歩みで申し訳ない…。 3話でお会いしましょう! |
3-2. e
2019 / 01 / 15 ( Tue ) 「どうやって」
「誰かに教えてもらいなさい」 織元はそっけなく答えた。立候補をするつもりはないようだ。打って変わって、笑顔で唯美子に向き直る。 「すぐに食事をお持ちします。食べられないものがありましたら、教えてください」 「ありがとうございます。食べられないものはたぶんないです」 「わかりました。ではしばらくお待ちください」 彼は会釈してその場を後にした。 (至れり尽くせり……) 唯美子ひとりのみのためのルームサービスとなれば、いよいよ先ほどの懸念が現実味を帯びてくる――彼らには食卓を囲う習慣もなければ、その必要もないということだろう。 ついでに言って、部屋の隅に用意された布団は一組だけだった。 (そこに面白い意味は一切ないんだろうけど) ドラマなどで旅館のスタッフが「あとは若いお二人で」と気を利かせるのとはわけが違う。ナガメはどんな場所でも寝るので布団を用意しなくてもいいだけの話だ。彼は寝心地の良し悪しに頓着したためしがない。 むろん、知り合ってこれまでの月日、同衾した回数はゼロである。 荷物を置いて座布団に腰を落ち着かせると、静まり返った空気が気になってくる。この家にはほとんど生命の気配が無いような気さえする。 「織元さんの家って、ほかに住んでるひといないの」 「僕《しもべ》ならいるぜ。ふだん地中に潜ってるみたいだから姿をみかけたことねーけど」 手元の本を未だ睨みつけたナガメが答える。 (地中かぁ。盲点だったな) おもむろに足元に目線を落とした。白い靴下をはいた己の足の下に、畳が敷かれた床よりずっと下にも、未知の世界が広がっているという。 「『自分の知る世界が、世界のすべてではない』」 「んー? なんだそれ」 「どこかで聞いた言葉……意味はたぶん、自分が日頃意識している世界以上に世界は広いんだって感じじゃないかな。わたしにとってのナガメたちは、まさに知らない世界の有無を意識させる、ふしぎな存在だよ」 「しらないと、どうなんだ」 ――こわいよ ひと呼吸の間をかけて迷ったが、結局言い出せなかった。 ひゅるり、冷たく湿った風が部屋を吹き抜ける。何かに追い立てられたように、二匹のトンボが慌ただしく飛び込んできた。窓が開け放たれている点に、唯美子はその時はじめて気が回った。 寒いから窓を閉めてもいいかと訊ねる。どーぞー、と興味なさげな返事があった。 夕食を待つ間が手持ち無沙汰だ。床に座ってスマホを弄っていると、衣擦れの音がした。 ナガメが本を持ったままごろごろ回転している。よく目が回らないものだ――漏れそうになる笑いをこらえて、声をかける。 「ひらがなとカタカナ、わたしでよければ教えようか」 回転が止まった。かと思ったら小さな背中が反転した。転がりすぎたのだろう、いつしか紺色の浴衣が大きくはだけてしまっている。そこから覗く胸元の皮膚は鱗に覆われていた。一日に何度か変化すると段々と粗が目立つようになるものらしい。 浴衣だけでも直してやりたいが、訝しげに細められた双眸に躊躇した。 「なんで? ゆみ、別にひまじゃねーんじゃん」 「暇かどうかじゃなくて、わたしはきみが日本語が読めるようになったらいいなって」 「なんで?」 同じ質問が繰り返された。どう答えたものか、唯美子はやや首を傾げて言葉を探した。 「知らない世界が開けた時の感動を、味わってほしいから……? そういうのって、傲慢かな」 「ぬー」 少年は本を閉じて四つん這いから起き上がる。分厚い小説のタイトルは「籠城の果てに慟哭」だった。いったい織元は彼に何を読ませようとしているのか。 「昔、ナガメがわたしにひとつの感情を手放してみろって言ったよね。その逆かな。いろんな気持ちを取り込んでみたら、面白いんじゃないかな」 |
3-2. d
2019 / 01 / 06 ( Sun ) 「戦利品の提示をどうぞ」
「おう」 促され、少女は胸元に手を突っ込んだ。そんな真似をしたら襟元が伸びてしまう――唯美子は制止の声を出しそうになり、思いとどまる。 (ほとんどの服も擬態だって言ってたっけ……って、わっ!) ブラウスの下からにゅっと現れたのは、干からびた手に似た何かだった。正直、見つめていて気分の良いものではない。だというのに美丈夫もまた、何でもなさそうに干からびた手首を着物の内にしまっていく。 「確かに受け取りました、これにて依頼完了とします。ご苦労様でした。報酬は食糧と金品のどちらにしますか」 「んじゃ、今回は金目のもん」 「了承しました」 ビジネスめいた会話が終わると、こちらに気付いて、ナガメが軽く手を振りながら近づいてきた。かと思えば怪訝そうに片眉を捻った。 「なんでゆみ、泣きそーな顔してんだ」 「え?」 無自覚のうちにどんな顔をしていたのか、確認のため己の表情筋に手を触れてみる。それでもよくわからなかった。泣きそうと言われても泣いていたわけでもないらしく、頬は濡れていない。 もしも悲しい顔をしていたとすれば、きっと先ほどまでに辿っていた過去の像を想ってのことだろう。そのことを詳しく語るのは憚られる。 「ところで」音もなく織元が傍まで歩み寄ってきた。「風呂を沸かしてあります。お使いになりますね? いっそのこと、ふたり一緒に入りますか」 「それはだめ!」 半ば条件反射で否定するも、はたとなって現在のナガメをまじまじと見上げる。見られている当人は、きょとんとした表情で長い睫毛を上下させた。 どこをどう見ても女性でしかない。では何故、揃って風呂に入るのがだめなのか。彼の中身を異性と意識しての反応かもしれないが、そこでもまた疑問が沸き起こる。この異形のモノは異性と思っていいのだろうか。今更ながら、蛇であった頃に雄だったと明言されたことがない。 「……まさか小さい頃に一緒に入ったことがあったりする?」 「じょーだん。湯はむかしから苦手だ」 滑らかそうな女子の手をひらひらと振って、ナガメはあっさり否定した。 「そうなの? わたしのアパートで入ってるのはお湯じゃないの」 「冷水にきまってんじゃん」 「えぇ……寒いよ」 想像してみたら遅れて身震いがやってきた。どこまでも彼は唯美子の当たり前の感覚とかけ離れている。だがひそかに、一緒に水を浴びたことがないというその答えに安堵した。 気が抜けたらふいにくしゃみの衝動に襲われた。風邪をひいてしまう前に、風呂には入っておくべきだ。 「お言葉に甘えて、わたしは浸かってくるかな」 店の裏に居住スペースがあるらしく、奥に案内された。店を後にする時に目に入ったアナログ調の壁の時計は既に七時を回っている。夕食はいつも何時くらいなのかと問うと、「あなたの望んだ時が食事時です」などと曖昧な答えが返ってきた。彼もナガメ同様、毎日食べなくても平気なのだろうか。 まとまりのない思考で風呂に入り、芯まで温まって、ぽかぽかとした気分で上がった。心地良い眠気を迎えつつ、持参していた寝間着に着替えた。 廊下に出ると、壁に背をあずけて織元が待っていた。縦縞の入った揃いの浴衣と羽織を纏い、髪をゆるく三つ編みにしている。 「ヒヨリ嬢の古い衣服を見つけたんです。背丈もあまり違わないようですし、差し上げます」 「ありがとうございます。おばあちゃんの服、持っててくれたんですね」 丁寧に折りたたまれた着物の束を受け取る。 「元より、返す機会を逃したもので」織元は薄明かりに艶美な笑みを浮かべた。「では客室に案内いたします」 彼の足取りに応じて、ぎ、と一度だけ床が軋んだ。 家に漂う木材の匂いにどこか懐かしさをおぼえながら、唯美子は廊下を進んだ。あとは柔らかい布団に飛び込めれば言うことなしである。 織元の手がスッと襖を開ける。明るくなった視界に慣れようと、唯美子は目元に手をかざした。 部屋の中には先客がいた。畳の上に仰向けに寝転がる子供は、分厚い本を手に持って唸っていた。 その少年の姿を認めて、唯美子の心臓は小さく跳ねた。 「いかがですか、その小説。結構面白いでしょう」 「んにゃ、ぜんぜん読めねー」 「いい加減、平仮名と片仮名をおぼえたらどうです」 |
2018年に読んだ本まとめ
2019 / 01 / 01 ( Tue ) あけましておめでとうございます! (・∀・)
今年もどうぞよろしくお願いします。 さてタイトルの通りですが、ネタバレ感想もあるのでお気を付けください。 2018年の読書メーター 読んだ本の数:51 読んだページ数:12695 ナイス数:397 姉飼 (角川ホラー文庫)の感想 怖いというよりは奇怪な(&気色悪い)話ばかりだった感想。奇抜なアイデアにぐいぐい引き込まれはしたが、どれも破滅に向かってスッと終わって印象に残るのかと聞かれればそうでもない気がしている(後味が残らないのはある意味いいことかもしれない)。何故「姉」というキーワードを使ったのか、普通の姉は村の中でどういう扱いになるのかが謎だが…それにしても全篇を通して「女」の立場が良くないw 読了日:12月29日 著者:遠藤 徹 地獄くらやみ花もなき 弐 生き人形の島 (角川文庫)の感想 どこか水車館を思わせる屋敷と少女の設定。地獄勢が積極的に事件に絡んできたのにはびっくり…それはアリなのだろうか。今回、裏にあった想いが人数と共に複雑化してて、ついていけなかった感も否めない。でも看病パートなど、青児と皓が順調に仲良くなっているのは嬉しい。 読了日:12月15日 著者:路生 よる イサック(5) (アフタヌーンKC)の感想 この作者様方、「重い運命を背負った少女」と「ストイックな武士」の組み合わせを最高にクールに書きよる。今回登場したハインリッヒ様のいとこ様も素敵で、ますます目が離せない。そしておじいちゃん。うん。うん……。 読了日:11月23日 著者:DOUBLEーS 燦然のソウルスピナ 2 (プライムノベルス)の感想 主軸にあった敵キャラの背景や謎は、個人的に一巻をはるかにしのぐ引力を持っていたように思う。新キャラのアスカはいい味だし、イリスは最初好きになれるか不安だったが、クライマックスに向けてどんどん好感度が上がっていった。イズマとの師弟の絡みが特に良い。予想していた以上のノーマンの活躍に大満足。おっさんが魅力的な作品である。しかし、ねがいを集めるカラクリは誰が作ったのでしょうねェ…。 読了日:11月14日 著者:蕗字 歩 地獄くらやみ花もなき (角川文庫)の感想 分類はキャラ文芸なのだろうか、話も世界もスラっと入り込んできて気が付けば終わっていた。「めちゃくちゃ好きー!」という感じではないが、それなりに先が気になり、謎解きや怪異が面白かった。続きも買う。 読了日:10月20日 著者:路生 よる 図書館の魔女 第二巻 (講談社文庫)の感想 面白かった。節目の巻って感じ。世界説明をされても目が滑った一巻に比べ、今度は話が進みながらの説明だったのですんなり入ってきた。キリヒトは忍者の里の子か何かと思ってたが、まさかそうくるとは…機械的に実行する彼と少年の彼の危ういバランスが、実に好きだ。うん、好きだ。完全な闇の中に二人しかいないとか、手から水を飲むとか、えr…萌えシチュエーションである。ラストシーンの夜がきれい。余談、名前が出て来た時点で死亡フラグかと思ったらいい意味で裏切られた。 読了日:09月24日 著者:高田 大介 燦然のソウルスピナ 1 (プライムノベルス)の感想 ウェブはかなり序盤で読む手を止めちゃってたので、電子書籍化に際して購読。迫力あるバトルシーンや、縦横無尽に広がる世界がおいしい。力がそこにあるから人は狂うのか、狂った先に力があっただけなのか…。ただひとつ消化しきれなかったのは主人公の恋愛観、複数の女性の間ふらりふらりと心が飛んでるのはこの世界の基準的にアリっぽい(?)けど、囚われの女を救いに行くのに手伝ってくれる女にドギマギして…うーん。そも、シオンとは色恋じゃなく戦友でいてほしかったような気も(複雑)イズマさんが好きなので続きも追っていきたいところ。 読了日:09月19日 著者:蕗字 歩 HUMINT(2) (ヤンマガKCスペシャル)の感想 一巻に引き続き派手なアクションはもちろん、人間らしい表情とか、必死に生きる人とか、心を打つところ多し。しかしこの二巻に抱いた一番強い感想:こわい 読了日:09月19日 著者:マツリ 夏の庭―The Friends (新潮文庫)の感想 これは安易に感想を書けない本。丁寧に、繊細に、心に呼びかけるものがあった。読み終わったら他の人も読めるように手放そうと思ってたけれど、いまちょっと迷うくらいに美しい。文は淡々としているように見えて、そんなことは全くなかった。出会い。思い出。少年たちの成長。よい。 読了日:09月05日 著者:湯本 香樹実 クマとたぬきの感想 かわいい…ほっこり…さいこう……いきるってすばらしい…すばらしい…。ツイッターで前からたまに読んでたのを単行本化に気付くのに遅れた不覚。これは一生大事に読み返して、人にも貸してあげたいレベルのよさです。ありがとう。 読了日:08月30日 著者:帆 マグメル深海水族館 2 (BUNCH COMICS)の感想 新キャラが増えて既存キャラも掘り下げられて、ますます面白い。嵐くんの話、同年代で、立場が違うけど道が交差する友達っていいよね。いつも作中は深海水族館にいるだけに、今回けっこうあった地上描写が新鮮。 読了日:08月10日 著者:椙下聖海 マグメル深海水族館 1 (BUNCH COMICS)の感想 くらげバンチで読んだときよりも絵がきれい! 話が面白い! キャラに愛着沸いた表情がとてもいい! 動物すごい! 目が離せない! ただしあっという間に読んでしまい、四話のみの収録であることに少々不満を感じたので★4 読了日:08月09日 著者:椙下 聖海 図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)の感想 ファンタジーを探してた時に目に入って、試し読みの冒頭部分が性に合ったからの衝動買い。もとは上下巻だったのを四分冊したからか、終わり方にやや唐突感。でも下手に危険を出すより「世界が広がった」というイメージに好感。概念の説明や掛け合いがすらすら読めて面白いのに対し、状況描写がテンポ悪く感じてなかなか進められなかった部分もあったが、新しい指話で距離が縮んだり地下探検したりと、ボーイミーツガールの質は高い。マツリカキリヒトの肉体的生命力の対比が好き。続きに期待。 読了日:08月08日 著者:高田 大介 殺し愛 (1) (MFコミックス ジーンシリーズ)の感想 以前から名前だけ知ってたけどウェブ漫画総選挙で試し読みして、クリティカルヒットだったため勢いで全巻購入。控えめに言って最高。危うい駆け引きと距離感の男女が好きな人には絶対に萌える。続刊が楽しみすぎて、これから幾度となく読み返すことだろう。 読了日:07月26日 著者:Fe イサック(4) (アフタヌーンKC)の感想 三巻を読んでからしばらく経ってたから人物の相関がちょっと思い出せない…読み返さねば…ゼッタの射撃センスが冴えててうれしい。れんぞーさんのぶっ飛び具合はなぜか逆に安心できた。それにしても、毎度いいところで終わりおる(*´Д`) 読了日:07月22日 著者:DOUBLEーS 遺跡発掘師は笑わない 元寇船の紡ぐ夢 (角川文庫)の感想 毎度まいど大事件に巻き込まれ過ぎではないかw ツッコミどころは多いけど、今までなかったチームの団結が気分よかった。オークションも面白かった。野郎同士が随所でなかよくしすぎ…いや、何も言うまい。今回、忍ちゃんと黒木が一番輝いてた気がする。続刊どうしようかなぁ、ちょっと興味薄れてきたな…。 読了日:07月16日 著者:桑原 水菜 しゃばけ (新潮文庫)の感想 スロースターター…? 最初のシーンで、おっ! と引き込まれたのに、日常パートに中だるみを感じなくもない。でも最後はきれいにまとまってて、伏線漏れもなくよくできた物語だと思ったよ。仁吉佐助の活躍が足りない気はしたけど。 読了日:07月13日 著者:畠中 恵 双亡亭壊すべし 1 (少年サンデーコミックス)の感想 この屋敷は一体なんなのだ… 藤田先生の作品はこのわけわからない謎の絡み合いが徐々に晴れていく時の「そうだったのか!」が好き。青一君を見ているだけでも面白い。今後も楽しみである。 読了日:07月10日 著者:藤田 和日郎 水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)の感想 ラストシーンがこの物語の狂気…。本作は本格を謳うだけあって、細かい。ヒントも多かったし、過去の事件の犯人と共犯者には割と早い段階で気付いたけど、実行するためのトリックや全体像はおそらく半分も掴めていなかった。一人称パートに感じていた違和感をもっと追究すべきだったか。私は普段あまりミステリを読まない(=必ずしも推理をしながら読んでいるわけではない)のだが、このシリーズは気に入った。 読了日:07月05日 著者:綾辻 行人 ケロケロちゃいむ 全5巻完結(りぼんマスコットコミックス ) [マーケットプレイス コミックセット]の感想 電子でみつけて再読。やっぱり面白い。私の中では立川恵のタカマガハラと並んで、少女漫画旅ファンタジーの原点って感じ。衣装とか小物がかわいいし、アオちゃんが後日談で素直に笑ってるのが◎ 本誌で読んだ当時はマホラの話が結構怖かったな…。 読了日:07月02日 著者:藤田 まぐろ うらみちお兄さん (2)の感想 キャラを掘り下げただけあってみんなかなり好きになってきた。この作者さんは、コマの隅での一挙一動までを楽しめるように作ってると思う。続きも楽しみ。 読了日:06月28日 著者:久世 岳 うらみちお兄さん (1)の感想 久世岳作品すきだー。ずっとチェックしてたのをやっと買った。連載部分の読み返しもよかったけど書下ろし部分がとても好き。休日! 読了日:06月28日 著者:久世 岳 横浜駅SF (カドカワBOOKS)の感想 面白い。世界観がまず圧倒的に独特で、ふしぎで、身近なようで異様だった。世間知らずの青年が旅をして、発見をして、出会いをする。主体性に欠ける主人公は場合によっては耐え難いが、本作には彼のような者が一番合っていたように思う。コロンブスに関する問答がすごく好き。人物や背景描写含めて文体はあっさりめだが、展開される思想や論理にまったく飽きがこない。これは二、三度読んでこそ楽しめるはず。続刊を読むのも楽しみ。 読了日:06月20日 著者:柞刈湯葉 しをちゃんとぼく 2 (ヤングジャンプコミックス)の感想 うわああん終わっちゃってさみしいぃいー! でも書下ろしと解説はうれしかったし、これから何度もじっくり読み返しては笑いたい。作者さまお疲れ様です。温かい世界をありがとうございました。 読了日:06月18日 著者:T長 夏と花火と私の死体 (集英社文庫)の感想 表題作はさくっと読めた。語り口が斬新で狂気は確かに感じたけど、いちばん動き回っていた二人が好きになれなくて、終わり方もおおむね予想通りで、ピンとこなかった。優子の方は最後のひっくり返し方に「やられた…」は多少感じたけどそれよりも花の話に無理やり感…まあ、この乙一は好みじゃなかったな。これがデビュー作だったらしいので、なるほどといえばなるほどである。 読了日:06月15日 著者:乙一 夢幻伝説タカマガハラ (1) (講談社コミックスなかよし (873巻))の感想 子供の頃すごく好きだったのを今になって電子で単行本購入。再読でも、やっぱりドキドキわくわくするのはさすがよ。 読了日:06月08日 著者:立川 恵 死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)の感想 身を乗り出したとたんにスパッと読めたのはさすが乙一。心をすり減らす展開にしてややそっけない文章、ひたすらに主人公に救われてほしくてページをめくった。ある種、立ち上がる力と許す力を探す話かもしれない。二度は読まないだろうけど確かに面白かった。 読了日:06月01日 著者:乙一 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)の感想 すごい話というかエンタメとしても社会風刺としてもレベルが高く、ものの見方のアングルもいろいろ攻めていた。複雑だけどわかりやすい。世界観はもちろん、構成や主人公の変遷にも引き込まれる。ただただ筆者の著作が少ないままいなくなってしまったのが惜しい。次はアニメ観たいな… 読了日:05月24日 著者:伊藤 計劃 デビルズライン(11) (モーニング KC)の感想 やっと読めた。キャラ増えて来たのに描き分け…いや何も言うまい。恋愛話はいいけど成人男性が資料見ながらの雑談に交えるかなぁ…w バランス的に恋バナがここ数巻ずっと前面に押し出されてるのがかなり気になってる。でも短命と環の話や同期鍋はよかった。ゼロナナが過去と折り合いをつけようとしているのも。次回こそ、大きな波乱が来るかなと期待。 読了日:05月17日 著者:花田 陵 しをちゃんとぼく 1 (ヤングジャンプコミックス)の感想 ネット友の猛烈な勧めでウェブで読んでみて、ビビッときて購入。描きおろし部分もいい感じ。しをちゃんを取り巻くやさしい世界(´∀`*) 読了日:05月17日 著者:T長 闇狩り師 蒼獣鬼 (徳間文庫)の感想 1と2の短編たちもよかったけど、長編はさすがに面白い。胸を抉る切なさとグロさの夢枕先生、儚い美少年を書かせたら右に出るものはいない…。印象に残るシーンがいくつもあり、戦闘は迫力一杯。個人的に玄角さんが好きなので活躍しまくってくれてうれしい。 読了日:05月07日 著者:夢枕 獏 まほろばの疾風(かぜ) (集英社文庫)の感想 感無量。滅びの美学というものがあるが、歴史上の人物の話である以上、結末は最初からわかっていた。わかっていながら、彼の一生のなんと輝きに満ちていたことよ。最後の方の流れはおおよそ予想通りだったけれど、それでも心に響くものがある。モレはいい女だなあ。誰かの人生を辿る感動が、熊谷先生の作品にはいつもある。地の文がひいて会話だけのところにはその表情や駆け引きを想像させる力がある。故郷への愛と誇りに満ちた民の軌跡。とても充実した時間だった。フレオ好きー 読了日:04月23日 著者:熊谷 達也 聖獣の神子と糸の巫女 (レジーナブックス)の感想 よくも悪くもアルファポリス&レジーナ。さくさく読めて、キャラや世界観が可愛く(活躍がなくて持て余され気味の人物もいたが)地の文での作者の遊び心も感じ取れた。個人的には聖獣と契約する魅力と神子の必然性がいまひとつ伝わらなかったかな(王が躍起になるほどのことか?)…一番の悪役となりえるはずの王や兄王子のイメージが弱いままに終わったのも、やはりアルファ。千年いたとはいえ王と王子を軽率に衝突させる聖獣でいいのか?? しかし何はともあれ大団円、続きを続きをと読ませる力は十分にあった。続編があればよむ。 読了日:04月11日 著者:草野 瀬津璃 ふくわらい (朝日文庫)の感想 当初、だいぶ変な話だとか変な主人公だと思っていた。やがて主人公の異常な生い立ちよりも感性に注意がいき、著者の高い文章力や描写にとらわれていった。めちゃくちゃはまった物語ではないが、印象的な場面やディテールが多く、何度かページを戻って読み返しながら進めた。「その動きに意味があるように、小暮しずくの行動にすがった」の段落が特に好き。これ以外の感想は、上橋菜穂子先生の解説と近いものがある。誰もが一読すべきと思われ。 読了日:04月04日 著者:西 加奈子 魔法使いの嫁 1 (BLADE COMICS)の感想 アニメに際して再読。こんなエピソードあったっけとか登場人物が出てきた順番を完全に忘れていた…。チセの過去にこんなに前から触れてたのか… 読了日:03月26日 著者:ヤマザキコレ イサック(3) (アフタヌーンKC)の感想 ぎゃひい! 相変わらずいいところで終わりおって… 続きはいつ出るのォ! 読了日:03月22日 著者:DOUBLE-S 十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)の感想 面白かった。館シリーズはこれが初めてだが、なんていうか、アートだった。島田さんとはまた会えるのだろうか? 綾辻先生の他の本に手を出すべきか迷っている…。 読了日:03月20日 著者:綾辻 行人 イサック(2) (アフタヌーンKC)の感想 相変わらず画がすごい。人種の顔の描き分けも。この巻では物語の核心に触れる瞬間があったりして、ドキドキハラハラした。プリンツへの好感も上がった。今月中に次の巻が出るとしって今から待ち遠しい(これアニメ化してくれないかな… 読了日:03月08日 著者:DOUBLEーS イサック(1) (アフタヌーンKC)の感想 DOUBLE-S氏は死がふたりを~から好きで、あらすじもどう考えても面白そうだったから購入。レビューだと人間ドラマが物足りないと言う人もいたが、私はこのストイックさに感じ入るものがあった。イサック、よい。もちろん、頑張る娘さんもよい。 読了日:03月08日 著者:DOUBLEーS 黒い季節 (角川文庫)の感想 読んでいた最中は色々思ったことがあったけど、読み終わった今ではただ余韻に浸りたい気分…。全ての登場人物に深く感情移入し(悪役にすら)、全員に幸せになってほしいと切に願いながら読んでいた。これは、絶対二度以上は読みたい一冊。 読了日:03月07日 著者:冲方 丁 十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)の感想 エンタメとしての完成度は相変わらず高い。謎のつなぎ方や展開の勢い、登場人物の人間臭さが好き。十三人目が殺人鬼なのは妥当かなと思ったけど、正体を知った時の「やべえ想像してたよりずっと怨念抱えてそう」とか「これはめっちゃ追って来るぞ」みたいな気持ちで、夜中にトイレに行くのが一瞬怖かったのは白状しよう。天使の囀り、青の炎、悪の教典に続いて本作を読んだ今、貴志先生作品では男女は結ばれないものだという結論に至っている。最後は、ホラーとしてはテンプレな終わり方かな。ひとつ解決しても、環は閉じず… 読了日:03月06日 著者:貴志 祐介 青の祓魔師 21 (ジャンプコミックス)の感想 ゆっきー…こじれてんなぁ。出雲、シュラとヒロインたちの問題をひとつず払拭して結束を固めている流れの中、最後(?)に雪を持っていくのは当然に思える。同年代グループで彼だけが生徒でなく先生だったのが、心を打ち明けられる仲間を作るむずかしさを助長したようだ。世界は変わりつつある。今後の展開が楽しみ。 読了日:03月01日 著者:加藤 和恵 乙嫁語り 10巻 (ハルタコミックス)の感想 これは内容を詳しく語っては野暮だろう…もうね、最高。 読了日:02月14日 著者:森 薫 闇狩り師2 (徳間文庫)の感想 相変わらずの面白さ。悪役でも悪じゃない人たちとか、シャモンのサイドキックではない自由気ままな立ち位置が好き。 読了日:02月13日 著者:夢枕獏 ばけもの夜話づくし 三 (MFコミックス ジーンシリーズ)の感想 繋がる繋がる。なにか大きな流れに向かう予感がしてくる。プールの話でまさかの女の子再登場…佐々木氏と退治屋のコンビが面白い。 読了日:02月05日 著者:マツリ 遺跡発掘師は笑わない 元寇船の眠る海 (角川文庫)の感想 海が舞台なのが新鮮で面白かった。喧嘩した無量と忍に挟まれるヒロインや元寇の背景も興味深く、ピンチになって終わる上巻の図は恒例ながら今回は萌絵なのが良い。続きも楽しみ 読了日:01月31日 著者:桑原 水菜 雨水リンダ(4)(完) (ガンガンコミックスONLINE)の感想 登録忘れ。大団円の完結、小松はいいやつだったなー。最終巻は巻末おまけがなくてさみしい。 読了日:01月23日 著者:HERO 宝石の国(1) (アフタヌーンKC)の感想 前から気になってたら、0円だったので。色々と独特…めちゃくちゃ続きが気になるわけじゃないけど、アニメは観たいかも。 読了日:01月21日 著者:市川 春子 闇狩り師1 <新装版> (【徳間文庫】)の感想 やはり夢枕獏は面白いのう…。エログロ、切ない話、伝奇&アクション、望むすべてがここにある。「月の王」アーモンのキャラが引き継がれているというから興味を持ったけど、世界観がだいぶ違うので新鮮。再登場しそうなキャラが何人かいて、まだまだ序盤って感じで、続きも楽しみ。 読了日:01月16日 著者:夢枕 獏 銀狼王 (集英社文庫)の感想 これまで読んだ熊谷先生作品に比べると人間社会と野生動物の関わり合いの部分はあったもののドラマ性は薄く、そのおかげあってか純粋な狩猟物語として楽しめた。余計なものが無い分、大自然を肌で感じ取れるような。終わり方には森シリーズっぽさがあった。ドラマ性が薄かったから印象に残らない予感もするが、面白かったのは間違いない。疾風ちゃん… 読了日:01月13日 著者:熊谷 達也 鴨川ホルモー (角川文庫)の感想 良質なエンタメ。全員のキャラが立ってて魅力がするりと伝わってきた。読み終わってから裏表紙の紹介文を目にしたのだが、これが実によく内容を表していた。試し読みをした時点で珍妙そうだなと思い、やっぱり珍妙で、そして青春くさくて摩訶不思議だった。意味不明だけど…人生こんなもんだよねっておもいました、まる 読了日:01月10日 著者:万城目 学 読書メーター |