52.d.
2016 / 01 / 20 ( Wed ) 「ジュリノイの本部が近いのは偶然です。私はこの町で……」
イマリナが卓上の食器を片付ける間、ミスリアは肩掛けのポーチから書類を取り出した。紐にくくられていた数枚の紙切れを解き、食卓に広げる。 「……お姉さまの手がかりを見つけられると思いまして」 一瞬だけ視線を逸らした。深く語ることはしない。誰に何をどうやって聞いたのかまでは、言えない。我ながらあまりに確証の無い話であったからだ。 リーデンの明るい緑色の双眸は察したように瞬いた。 「お姉さんも聖女さんだったんだよね」 「はい。教団に登録されていた情報によると、聖女カタリア・ノイラートは護衛三人と巡礼に向かったと記録されています。うち二人は連合を介して雇った魔物狩り師であり、前もって交渉したそうです。名はディアクラ・ハリド、イリュサ・ハリド」 「家名が一緒ってことは親類かな」 「優秀な魔物狩り師のきょうだい、と記されています。三人目は、二人と合流する前か後に出会ったのかはわかりません。教団の記録に詳細はありませんでした」 ふうん、と言ってリーデンは腕輪代わりのチャクラムをひとつ、指でくるくると弄び始めた。ついそこに視線が釘つけになってしまうのは、考え事をしている時の癖にしては危ないからである。 幸い、鉄の戦輪は数秒後には静止した。 「一行の足取りが途絶えたのって、どの辺?」 「それも詳しくはわかりません。お姉さまからの最後の報告書は、この国のどこかから提出されたそうですけど」 そう答えると、リーデンはすっと目を細めた。口元の笑みには、警戒の影が落ちている。 「んー。この国って、所謂アレが盛んだって聞いてるよ」 「アレ、とは……」 彼の言わんとしていることに気付く。 「旧信仰って言うんでしょ。皮肉なもんだよね、この大陸って北へ行けば行くほど信心深い人が集まってるらしいね。聖獣信仰も、旧信仰も。ついでに、魔物信仰だってそうなんじゃないの」 いつの間にかリーデンは声の音量を落としていた。 全て事実だ。一概に信心深いと言っても、信仰対象には多少の幅がある。アルシュント大陸の宗教組織はヴィールヴ=ハイス教団のみ――けれども、宗教組織でなくとも公に神を掲げる組織は存在し、密やかに活動する集団に至っては数えようが無い。 「今更だとは思うけど、君は、僕らとなるべく手を繋いでた方がいいね。こんなところで攫われるのはまずい。お姉さんの手がかりを探すどころじゃなくなるよ」 「ご、ご冗談を」 思わずそう返すも、リーデンの微笑は本気だった。既に彼は、いつも使っている「聖女さん」呼びを改めている。 「冗談じゃないよ。ねー、兄さん」 「ああ」話を振られたゲズゥは銅製のコップからぐいっと水を飲み干して、同意した。「それと、これから仮眠を取れる場所を探すべきだな」 「さんせー。なんなら四人で雑魚寝しよっか」 「いくらなんでもそれはできません!」 ミスリアは即座に反対した。この人は何を言い出すのか。明らかな冗談だとわかっていても、声を荒げずにはいられない。 他の食卓の客から好奇の視線がちらちら向けられる。 「あはは、しょうがないなぁ。添い寝はマリちゃんだけで手を打とう! 残念だよ。ねー、兄さん」 「…………」 無言は賛否どちらであるのか、わからないからこそ恐ろしい。気まずさを感じてミスリアは隣を見ることができない。 対して、添い寝する権利を唯一与えられたイマリナは嬉しそうに手を叩いている。 (もう、みんなして私をからかって!) ――と思うものの、言わない。この能天気さは救いである。 先週の内に町に着いてからずっと、ミスリアは気が重かった。姉の失踪の真実を探ることの重さは、ふと立ち止まった時に襲ってくる。覚悟は決めたはずなのに、例に無い苦痛であった。 果たして結論が見つかっても、見つからなくても、その先で自分はどんな顔をするのだろう。 そう考えると、なかなか寝つけられない夜が続いた。 _______ でんでんは主人公になんてセクハラを… PR |
52.c.
2016 / 01 / 19 ( Tue ) 名残惜しいような気持ちでその背中を見送っていたら、往来に面した雑貨屋から店主の女性が出てきた。 「お嬢さんたち、あの人のことは放っておきな」「え? あ、こんにちは。うるさかったですか」 「別にそれはいいんだよ。あのね、あの人は特殊って言うか、事情アリなんだ」 恰幅の良い、年配の女店主が「ここだけの話」をするように声をひそめた。 「精力的に魔物退治をしてくれるから有難いんだけど……ちょっと不気味なんだよねぇ」 「彼は魔物狩り師なのでしょうか。不気味、とは?」 つられて小声で返す。 「記憶が無いってさ。自分がどこの何者だったのか、誰と関わって生きていたのか、どこで生まれたのかさえ、何も憶えてないって。得体が知れなくて、怖いんだよ。もしかしたら逃亡中の犯罪者かもしれないだろ? 今はいい人っぽいけど、本当に記憶喪失なのかもわからないからさ。何か企んでるかも」 「それは怪しいねー」 リーデンが横から相槌を打った。女店主はぎょっと目を見開いて絶世の美青年を見上げる。 「そ、そう。怪しいんだよ」 店主の言葉にうそ偽りは感じられない。あの男性が「大事なことが思い出せそうだった」と口走ったのも、記憶が無いからこその言動だと思えば辻褄が合う。 (でも……あの人は私を誰と間違えたの? まさか……) 或いは彼はミスリアの探している答えのヒントを持っているのかもしれないと思うと、もう一度会って確かめたくなる。 (せっかくの忠告は有り難いけれど) いつの間にか世間話を交わしている店主とリーデンの間に踏み入った。 「あの! 危険は承知の上です。あの人とまた会うには何処へ行けばいいでしょうか。お願いします、教えて下さい」 ミスリアよりいくらか背丈のある店主が、気圧されたように仰け反った。 「どこで寝泊まりしてるのかはわかんないけど、夜な夜な魔物退治をしてるらしいよ。一応、シュエギ、って呼ばれてる。この地の言葉で『泡沫』って意味だよ。他の人に聞き込むならそう言えばわかるんじゃないかい」 「僕らも夜な夜な魔物の出る場所へ出かければ会えるってことだね」 「まあね。でもあんたたちみたいな若い衆は、そんな危ない真似、よした方が――」 「ありがとうございます! では」 それ以上踏み込まれないようにミスリアは女店主の言葉を強引に遮り、両手を掴んでぶんぶん振り上げる。彼女は怪訝そうな目をしたままとりあえず「いいってことよ」と挨拶を返した。 そうしてその場を立ち去り、一同は食事処に入った。午後の予定を話し合う前に腹ごしらえをするのである。 胃の容量が小さい女性の方が先に食べ終わったため、ミスリアは二人分の食器を給仕係に返しに行った。席に戻ると、リーデンとゲズゥがまだ野菜炒めを頬張る横で、イマリナが何かを話していた。手話が速くて何を言っているのかまではわからない。 「イマリナさんは何て?」 「ん。どうして魔物狩り師って職業があるのかって。傭兵も警備兵も聖職者も魔物退治するし、専門職として枠を作る必要はあるのか? って訊いてる」 その疑問はもっともであった。戦闘能力と専門知識を有していれば、他と兼業でも良さそうなものだ。しかし実際はその枠が存在し、魔物狩り師連合という職業別組合(ギルド)も一般的に見られる。 「聖女さんはどうしてか知ってる?」 「はい。第一の理由は、生活リズムです」 と、切り出す。他の三人は興味津々に静聴した。 「常勤の魔物狩り師は陽の出ていない間ほぼずっと活動していなければならないので、昼間に寝てるはずです。時々深夜に駆り出されるだけの立場の私たちと違って、毎夜待機していなければなりませんから」 「なるほどね」 「第二の理由は……なんと言えばいいのでしょうか。心の強靭さ、です。それこそ刹那の間に魔物に引き裂かれてしまいそうな距離でも、怯まないような精神力。元の素養以外には、魔物と相対した回数を積み上げることでしか、培われないものだと私は理解しています」 「そっかー。そういうのは兼業だったら色々と難しそうだねぇ。別の仕事やる為に現場からしばらく離れたら、感覚鈍りそうだし」 とにかく異形と相対して生き延びることでしか精神力は鍛えられない。一方で、相対して生き延びたからといって心が折れないとも限らない。 前衛を決して務めることのないミスリアにはその恐怖が想像できない。 中でも、聖人・聖女の護衛という役割を毅然とこなす人たちを想う。たとえば、聖女レティカに楽しそうに付き添ったエンリオやレイ。たとえば、今目の前で麦粥を呑気に啜る兄弟。 (人選が良かったって思っていいのかな) そう思うとちょっと嬉しかったり安心したりもする。願わくば彼らの負担が少しでも減るように―― ふと視線を感じて顔を上げた。隣のゲズゥがじっとこちらを見ていた。コンタクトという代物によって、今は両目とも黒い。 どうかしましたか、と首を傾げながら問うと、一言の返事があった。 「予定」 「あ、そうですね」 「そうそう、聖地が近くにあるわけじゃないんでしょ。そろそろ何の為にこの町に来たのか教えてよ。どんな目的でも僕らは付き従うけど、流石に某組織の近くだしさ、気になるよね」 向かいのリーデンが頬杖ついて言った。最後の指摘に、ミスリアは苦笑で応じる。 |
52.b.
2016 / 01 / 14 ( Thu ) よく見ると不思議な人だった。服は旅装っぽく動きやすそうで、生地や縫い目などの作りはしっかりしている。なのに、汚れや破れが目に付く。男性は身なりに頓着しない方なのか、伸び放題の白髪(はくはつ)は耳飾などと絡まったりしていて、かなり長い間梳かれてもいないようだった。それと、埃と泥と森林の匂いがする。旅人だろうか。 (まだ温かいし、呼吸もある) 呼び続ければいずれは目を覚ますのだと信じて、ミスリアは揺さぶるのを止めなかった。 髪と髭に覆われている所為で顔がよく見えない。 目が開いているのかどうか判然としないまま、ついに渇いた唇が震える。隙間から漏れた声は掠れていた。 「……ア……」 「よかった、気が付きましたか」 そう声をかけてやると、男性は起き上がり、視界から前髪をどけた。ミスリアの顔を灰銀色の瞳に映すや否や、衝撃を受けたように動かなくなった。 あの、ともう一度声をかけようとした瞬間。 ばっと男性は近付いて来た。 「みぎゃ!」 ただ近付いたのではない。窒息しそうなほど強い力でミスリアを抱き締めたのだ。 「――リア……」 男性は何かを呟いたけれど、よく聴こえなかった。 ゴッ、と凄まじい音がして、彼は次の瞬間には離れていた。平たく言えば、ゲズゥに蹴飛ばされたのである。突然のことでミスリアは反応しそびれた。 「は~い、おにいさん、勝手にうちの聖女さまに触らないでね。口より先に足が出る人に、この通り制裁を加えられちゃうからね」 「……リーデンさん、その警告は少々遅いのでは」 肩にぽんとのった手の主を仰ぎ見て、言った。 「あはは、そうだねぇ」 「はあ」 ミスリアは呆れはしても、護衛たちの行動を怒ることはできない。彼らは純粋に心配してくれたのだ。とりあえずこちらの落ち度だと考えて、ミスリアは男性に頭を下げた。 「え、っと。大変失礼いたしました。私の方から不用意に近付いたのに、乱暴な真似を」 「こちらこそ失礼しました」 男性は思いのほかダメージが無いようで、何でもなさそうに立ち上がって頭を下げ返した。 「い、いいえ。もしかして私を、どなたかと間違えたのでしょうか」 人違いをしたのかと問いかけてみたら、男性は「さあ」と頭を振った。 「よくわかりません。衝動でした。貴女を見て、大事なことを思い出せそうな気がしたのに……」 僅かに男性の眉根が寄ったが、すぐに無表情になる。次いで平淡な言葉を連ねた。 「本当に失礼しました。では」 外套が翻る。彼は驚愕の潔さで立ち去ろうとしていた。 「ま、待ってください。行き倒れていたのではないのですか? いきなり立ち上がって大丈夫ですか?」 なんとなく呼び止める。男性は振り返らずに答えた。 「眠かっただけです。続きは宿で貪ることにします」 やはり平淡な返事の後、ぐうぅ、と音がした。ミスリアはリーデンやゲズゥ、イマリナとそれぞれ顔を見合わせる。皆の視線は自然と流れ、男性の背中に集まった。 「あの、もしまだでしたらお昼を一緒にどうでしょうか」 「ご厚意ありがとうございます、親切な方。でも私は寝ているべきです」 「え、でも」 目を離した隙に柱にでもぶつかりそうなほど、不安定な足取りで再び彼は歩き出す。 |
ホラー短編
2016 / 01 / 13 ( Wed ) http://ncode.syosetu.com/n4525db/
あ、石投げないでっ もちろんミスリアも書いてますよww 明日までには更新します多分! でも先週からこいつで遊んでました。ゆるして。 |
52.a.
2016 / 01 / 07 ( Thu ) それは出会ってまだ日の浅い頃のことだっただろうか。どこかで買い物をしていた時――理不尽なほど長い間店員に待たされて、青年は苛立ちから来る頭痛に苦しんでいた。隣でのほほんと笑っている少女を見下ろす度に、その苛立ちに拍車がかかるようだった。 少女はどこへともなく視線を彷徨わせ、息をつく。そして己の体温と気温の差により生じた湯気を見つめながら言った。「この世界は、素敵ですね」 「そうかぁ? 別に普通だろ」 青年は言葉じりを吊り上げて問い返す。 「素敵ですよ」 「具体的に何に対してそう言ってるんだ」 彼に言わせてみれば世界は喪失や苦難、欺瞞などに満ちている。素敵と言える要素よりもそうでない部分の方が圧倒的に多いように感じられた。 「空が青くて木の葉が赤くて、吐く息が白いです。落葉のにおいも、吹き抜ける風の冷たさも素敵でしょう」 「……全部当たり前のことじゃねぇか」 「当たり前だからこそ、愛おしいんですよ」 少女は楽しそうに落ち葉を一枚拾った。湿気た地面の水分を吸い、茶色く変色したさまは決して美しくない。なのに聖女カタリア・ノイラートは、くるくると楽しげに葉柄を回している。その動作から滲み出る穏やかさに、青年は不覚にも感じ入った。 「あー……あんたはすげーな」 「え?」 「何も無いところに愛を感じるのか。そういうのって、信仰の力かねぇ。それとも性格なだけか?」 「何も無いなんてことはありませんよ。世界は常に命と光に満ちています」 両手を振り回しスカートを翻しながら舞う少女の言葉は、冬の空気と同じくらいに透き通っている。 「あんたと話してると、俺は自分がくだらない人間なんだなって思い知らされるよ」 淀んだフィルター越しでしか世界を見つめられない自らの目を恥じた。 「くだらないだなんて。貴方はご自身の良さを、まだ自覚できていないだけです」 朝日みたいな笑顔で彼女は断言した。 見惚れるよりも先に、嘲笑が漏れる。 「良さ、ねえ」 「――あ! 店員さん戻って来ましたよ。あの二人も呼んだ方がいいですよね」 「そうだな。ちょっくら探してくるよ」 会話の焦点が逸れたのを有り難く受け入れ、青年は近くに居るはずの仲間たちの方へ足を運んだ。自分の話をするのはむず痒いし、あまり長く自己分析していると、卑屈さが全開になってしまう。 だけど本当は、嬉しかった。 たとえ彼女のそれが妄信だったとしても。誰か一人だけでも手放しで認めてくれたことが嬉しかったのに――いつも、うまいこと礼が言えなかった。 もっと大切にするべきだった。 そんな風に後悔しか生み出せない己が、何よりも惨めで醜い――。 _______ 「ミスリア、足元」 「はい?」 何気なく歩いていたら、背後のゲズゥが急に注意喚起を投げかけてきた。ミスリアは言われた方の足元に視線を向けずに、思わず振り返る。足を止めるべきだったのに、しなかった。 躓いた。 転びそうだったのを、後ろからがっしりと抱き抱えられて凌ぐ。 (なっ、何を踏んだの) ゲズゥの腕に支えられたまま、地面に横たわる大きな物を一瞥した。姿形は成人男性だ。道端で横になっているから、既に息の無い者かと疑ってしまう。けれども腐臭はしなかった。踏んだ感触も、柔らかかった。 「往来で仰向けに行き倒れるなんて、豪快だねぇ」 隣でリーデンがころころ笑う。 「行き倒れって、ええっ!? お気を確かに! 私の声が聴こえますか!?」 どうしてこの人は道行く誰からも見向きされていないのか。などと、気にしている場合ではない。ミスリアは膝をついて男性の肩を揺さぶった。 まだ十分に練っていない気がしますが、まあいっか。はじめちゃう! |
おねむだよ
2016 / 01 / 05 ( Tue ) だがチェリー味のコーヒーで乗り切るぞよ。
………………! (飲み終わった)(かなしい) 藻のおはなし、コミコで更新しました。特にハプニングはなく、地名が出る回です。 ミスリアの次話に関しては、投稿はじめる前にもうちょっとだけ練ると思われ。 そうそう、今日はアパートを引き払う日なのです! |
2016年 あけましておめでとうございます
2016 / 01 / 01 ( Fri ) 今年もよろしくお願いします!
私はまだですがw 今年もたくさん創作しますよっと。 私から創作を引き離すことは不可能。 リアルでの生活を大切にしつつ、詰まれる経験からネタを捻出しつつ、目に見えない世界をどんどん構築していきます。 2015年に読んでくださった方々、絡んでくださった方々。 2016年も元気に頑張っていきましょー! |
魔物狩り師メモ
2015 / 12 / 30 ( Wed ) なり方:
魔物狩り師という職業は基本的に誰かに弟子入りしてその技術と経験を積んでなれるものとする。 師が認めればそれで一人前であり、資格取得などの明確な制度が確立されていない。 つまりフリーの魔物狩り師の中には自称しているだけで実力の伴わない「にわか者」も存在する。 そのため、可能な限り魔物退治は連合に依頼するのが推奨される。 <魔物狩り師連合> 魔物狩り師が五人以上集結し、拠点を立てたもの。職業別組合(ギルド)のようなもの。 村などの小規模な単位でも魔物狩り師が足りれば稀に連合が在る。逆も然り、巨大な都だろうと連合がない場合もある(人数が足りても、集結する意思がない)。 基本的にひとつの町にはひとつしか連合拠点が無い。 管理体制に関しては、主に会員たちが多数決で役職を決める(連合長・副長・書記・会計など)。 会員の人数が少ない場合は多数決のみで決め事を解決する。 <魔物狩り師連合の仕事> ヴィールヴ=ハイス教団、対犯罪組織ジュリノイ、その他警備団や軍、近隣の町の連合との連絡・連携。 一般市民からの魔物退治や用心棒などの依頼を会員にあてがうこと。内容によっては任務別にチームを組ませる。 大規模退治の作戦立て、報酬の振り分け。 魔物狩り師を目指し師事する相手を探している者に、適した人材を紹介すること。 会員たちの武器・防具入手や戦力向上を手伝うこと。(ある程度、会員の能力の性質・バランスなどを把握している) |
2015年 執筆活動まとめ
2015 / 12 / 30 ( Wed ) http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/341105/blogkey/1310762/
を、やってみました。 いやぁ、まだ片付いてない新居に私の家族が泊まりに来ただけでなく、相方の親戚も二人泊まって、2ベッド2バスの住処に7人で過ごした週末でした。 私の家族はああいう騒がしい集まりは最近なかったと思うので、楽しかっただろうなぁ。 うるさかったけどw そうそう、プロチームのアメフトの生試合を観に行きました。途中けっこう眠k…じゃなくて、まあ、生はなかなか迫力ですよね。アメフトは格闘技だ~、とか言う人の気持ちはわかります。どんでん返しが面白い、いい試合でした。チケット高すぎだけど。 やっと一息つけるぜ…。 そしていい加減、寒くなって欲しい。私の冬はいつ来るんだ。 |
51 & 四章 あとがき
2015 / 12 / 25 ( Fri ) |
51.f.
2015 / 12 / 25 ( Fri ) 「あ! すみません。気が付きませんでした」
少女がいきなり声を挙げる。大きな瞳が、青年の右手を注視していた。 「は?」 「怪我をされたんですね」 「ああ、さっき殴った時に擦り剥いたっぽいな」 鮮血のついた指関節のことを言っているらしかった。いちいち手当てするほどの怪我でもない。 それに普段は青年は非番の日も欠かさず革の籠手を嵌めていたのだが、職を失った途端に、半ばヤケになって手持ちの防具をほとんど売り飛ばしたのだった。 (我ながらマヌケだよな。武器まで売らなかったのが幸いか) 職を失ったその日でいきなり金に困りはしない。務めも無いのに凝った装備をつけて街中を闊歩するのが、滑稽に思えて悔しかっただけだ。 (どうせ自意識過剰だよ) 一旦卑屈な気分になれば、浸るようにどんどん沈んでいく。人生うまく行かないのはこの性格の所為かもしれない。 「ありがとうございます」 「……?」 少女を改めて見下ろした。 その時、右手が不可解な温もりに包まれた。 少女の両手に指先が包まれてはいるが、それとは別の、芯まで染み入るような温かさだ。 「いっ」 つい奇声が漏れた。皮が擦り剥けて赤かったはずの箇所が、見る見る塞がっていく。 (なんだぁ!?) 気味の悪い光景だ。青年は震えを抑えるのに必死だった。 「はい、治りました」 「治りましたじゃねえ……もうちょっとこう、心の準備をさせろ」 自分の皮膚じゃないみたいだと思っても、左手で撫でてみれば確かに感覚はあった。間違いなくこれは自分の皮膚だ。今のはどういう現象だ―― 「そういえば、とてもきれいな髪だなってさっきから思ってました。スターアニスの種の色みたい」 突発的な容姿褒めが始まる。欠片も嬉しくない。 落ち着いて物思いもできやしないな、と青年はやはり諦めた。 「せめてシナモン色と言ってくれよ」 「アニス、嫌ですか?」 「薬っぽくて苦手な味だ」 「じゃあシナモン色ってことにしますね。ああでも、アニスを練り込んだパンが食べたくなっちゃいました」 「あんたは何を言ってるんだ。さっきたらふく食ったじゃねーか、肉を」 反論してみたら、少女はぷっくりと頬を膨らました。 「美味しいパンの話ですよ。お腹が空いているという話ではありません」 「どうでもいいわ! それより、あんたが今何をやったかの話をしようか」 最後を低い声で告げると、少女は「あ」と唇を驚きの形に動かした。スカートの両端を指先で持ち上げ、腰を折り曲げる礼をする。 「失礼、申し遅れました。私はヴィールヴ=ハイス教団に属する聖女、カタリア・ノイラートと申します。今のは我々が『聖気』と呼ぶ清浄化の力です。よろしかったら、貴方の名前も教えてくださいな」 聖女カタリア・ノイラートは、服の下に収めていたらしいペンダントを取り出してみせた。教団の象徴をあしらった、二つの紫水晶が印象的な銀細工――なかなか偽造できる代物ではない。治癒能力といい、本物だ。 「聖女……」 はああああ、と彼は露骨に長いため息をついた。 自分は厄介な何かに巻き込まれようとしているのではないかと、頭の中に警告が鳴り響く。 (ヒューラカナンテ。思い出した、それって教団の本拠地だったな) 旅の聖女となると、連合への用事も単なる魔物退治の域を超えたものかもしれない。 事情は変わりつつあった。その辺の田舎娘ならともかく、人類の宝とも言われる聖人・聖女の一人を目の前にして、手助けをしないわけには行かない。 (連合に送り届けてからトンズラしよう。うん、そうしよう) 今度こそ縁を切るのだ。でないと胃が不安だ。 「あんた一人じゃ心もとないから、連合拠点まで案内してやるよ」 「本当ですか!?」 喜びすぎだ、とは口に出さずに、気を取り直して青年は咳払いをした。 「門前まで送るだけだぞ。いいな」 「十分助かります。よろしくお願いします!」 「よろしくしなくていい。俺の名は――――……」 そして求められたがままに、青年は名乗った。どうせ憶えられることも無いだろうとの軽い気持ちで。 ――しかしこれは、青年のその後の人生において、激動をもたらす出会いとなる。 |
51.e.
2015 / 12 / 25 ( Fri ) 脱力して青年は道端に座り込んだ。 「それはそうと、どうして逃げたんですか?」「……逆に訊くが、どうしてあれで『お金に困ってる人を助ける』って考えに至るのか教えてくれ」 「困っている人に手を差し伸べるのは当然のことかと」 相変わらず田舎娘の思考はあさっての方向に向かっている。呆れからか、青年は大げさに手を振り回した。 「じゃあ何か? あんたは相手が困ってさえいればなんでもあげるのか? 家族でも知り合いでもない奴を、助ける義理は無いってんのに」 「ダメですか?」 少女が膝上に腕を組んで、正面にしゃがみ込む。首から胸辺りの肌が近付いてくるが、残念ながら布面積の多い服によって肝心なところは隠れている。服の下にネックレスでもつけているのか、銀色のチェーンだけが目に入った。 「ダメだ。いいか、そういう過度に慈善的な考えが人を怠慢に追い込むんだ」 「たいまん……?」 本気でわからなそうにしている少女に、青年はずいと顔を近付け、暑苦しくまくし立てた。 「そいつはあんたの為に何をしてくれる? 靴を磨くとか荷物を持つとかなんでもいい。何か雑用をやってやるから一食恵んでくれって言ったんならいい。こっちから一回くらいは催促してもいい。でも、自分から言い出せない奴は、いずれにせよクズになるんだ」 少女は真剣な表情を動かさぬまま、聞き入っている。酒臭い息がかかっているだろうに、嫌な顔ひとつしていない。 「ましてや悪事に走る奴だ。それは、何もしてやらないけど何かくれって言う奴よりもっとずっと悪質だ。あんた今、売り飛ばされそうになってたんだぞ。危機感なさすぎだろ」 「――すごい! 目から鱗が剥がれ落ちた気がします。貴方は社会についてよく考えているんですね。私の思慮が足りませんでした。深く反省します」 「そこまで素直だと逆に気持ち悪いな……って、危機感については何も思うとこ無いんかよ」 文句を垂らしながらも青年は諦めていた。何せ少女はもう話を聞いていない。両手を合わせ、その視線はどことなく宙を彷徨っていた。 ここまで噛み合わない会話をしたことがかつてあっただろうか。青年はまたしてもため息をついて、のろのろと立ち上がった。 「大体なんでここに居たんだよ。まさかまた迷ったんじゃねーだろな」 「ええと、それは非常に申し上げにくいのですが」 所在なさげに俯きながら少女も立ち上がる。 「…………迷ったんだな。まあ逃げている内にさっきよりは近づけたとは思うぜ。ほら、こっからでも見えるだろ。まだちょっと遠いが、あの丘の上のでっかい建物だ」 青年は目当てのものを指差した。 この町の魔物狩り師連合拠点は夜になると物見の塔の灯りを一晩中点ける。水路を渡る船にとっての灯台とは少し違うが、助けを必要とする人々が速やかにそこまで辿り付けるように。 ゆえに、初見でも見間違いはありえないほどにわかりやすい。 「あれがそうなんですね」 感心したように少女は言う。おう、と青年は答えた。 「わかりました、重ね重ねありがとうございます。親切な方。お礼はするなとのことでしたよね」 ぺこりと頭を下げて少女はその場を去ろうとする。夜も更けてきたことだし、急ぎたいのだろう。 が、青年はその細い肩をガッシリと掴んで引き止めた。 「待て待て。なにまた路地裏通ろうとしてんだ」 「だってこの方向でしょう?」 「だからって一直線に進めばいいってモンじゃねえ。治安考えて道を選べよ。つくづく、よくファイヌィ列島からこんな遠くまで来れたな」 大抵の町というものには夜は絶対通ってはいけない路があって、特に丸腰の若い女が一人となると、どこを通ろうと危険は倍増する。目の前のこの少女がこの現実を理解できていないのは最早疑う余地も無かった。 「私、列島出身ではありますけど、此度の出発地点は別ですよ。ヒューラカナンテから南下してきたんです」 「ヒューラカナンテ、ってどこだ」 「非法人地域で無国籍地帯らしいです。ご存じありませんか」 言われてみれば聞いたことがあるような地名だ。青年は懸命に記憶を探り、何も思い当たることなく終わった。 |
51.d.
2015 / 12 / 23 ( Wed ) 思わず足踏みした。 人間とはどうしようもない生き物である。見ず知らずの他人が襲われていようが全力で無視できても、それが顔見知りとなった途端、放って置けなくなるのだから。青年は思いきり舌打ちした。ここで見捨てたら、寝覚めが悪くなる。 (くっそ、なんでまだこの辺に居るんだ! 田舎娘が) 怒りと呆れで一気に酔いが醒めた。 だが、どうするべきかを未だに決めかねる。 「ではお渡しします」 「それで手持ち全部かい? お嬢ちゃん惜しみないねぇ、いいねえ」 「私はまた稼げばいいので大丈夫です。どうぞ」 「そーかい、じゃあいっそのことおいらたちのもとで稼いでもらおうじゃねえかい」 「それはできません、すみません。私にはこれから向かうべき場所が――」 その先を待たずに青年は駆け出した。 少女を取り囲む大きな人影が三つ、目に入る。その内の一つが猿ぐつわのような布を両手に持ち、腕を上げている―― 他の二つの人影が、駆け寄る青年に気付いて振り向く―― それらを無視し、彼は少女に一番近い者に足払いをかけた。 不意打ちが決まり、男は派手に転倒する。 「なんだてめえ!」 面白味の無い文句と、重そうな拳。それらが右隣から飛び出した直後、青年はカウンターパンチを相手の頬骨に決めた。 残る一人は、攻撃態勢に移る動作を見せている。 構えの軸が左脚であろうことを見抜き、青年は敵のスタンスが完成するより先に膝の内側を蹴り崩した。 (よっしゃ、チャンス) 少女の腕を引っ掴んで、逃げに入る。 一分としない内に路地裏から逃げ出せた。運の良いことに少女は一度も転ばなかった。 だがその時点で二人とも息が上がっている。 「いたっ――」 少女から漏れた小さな声で青年はハッとなった。 「悪い。一刻を争う事態だったから」 手を放しつつ、条件反射で謝る。 (って、何で言い訳みたいになってんだ。そりゃー勝手に引っ張ったのは悪かったけど、助けたんだからいーだろ) 自分はこんなに下手に出る奴だったか、と首を捻る。 「よく、わかりませんけど……貴方は足が速いのですね」 何故だか予想だにしていなかった感想が返った。 「……第一声それか。言っとくけど、俺は体調万全だったならもっと逃げ足速いぜ」 「あれ以上に速くなるんですか? すごいですね」 「他人事みたいに感心してんじゃねーよ。ま、あんな三人、万全だったら逃げずに余裕で片付けられる自信だってある」 変な矜持が発動し、青年はべらべらと強気に語った。 (いやほんとに何言ってんだ俺は) 未だに抜け切らない酒の悪影響だろうか。青年は我に返り、自らの発言に気色悪さすら覚えた。 「片付ける? とは?」 「……まさか。危ないとこだったって自覚すら無いのか。あんたの脳内お花畑はさぞや立派なんだろうな」 「花畑? 冬に花はあまり咲きませんよ」 真剣に考え込んでいるような顔をして少女が返答する。 ――ここに表れているのは果たして、人を拍子抜けさせる才能か――髪をかき乱しながら、青年はため息をついた。 「よし。あんたに皮肉が一切通じないんだってのはよーくわかった」 |
息してるよ…
2015 / 12 / 22 ( Tue ) そういえばレビュー祭なるものに参加しまして、私のレビューが投稿されましたので、よかったらどうぞ
http://ncode.syosetu.com/n6430cz/27/ 引越しいそがしす。 ペンキ終わってからは 荷造り→足りないものに気付いて買いに行く→荷物運ぶ→冒頭に戻る の繰り返しで、連日体力消耗してます。 ふひい。そういえばブログ開設四周年過ぎてた。なんも用意できてませんぜ。 もうこのまま知らん振りで行こう!! 本編は… 数時間くださいw 拍手返信@ナルハシさん ありがとうございます! 私も好きです!(なんぞ 報われんなぁ、とたまに思うことはあれど、逆に全面肯定されたらそれはそれで私自身おもしろくない気がするんですよね。ちょっと異端であるのが楽しいみたいな。 |
51.c.
2015 / 12 / 17 ( Thu ) 「いいか、町ってのは村と違って複雑だし、似たような建物がぎっしり並んでる」
「はい。初めて見た時は本当に開いた口が塞がりませんでした」 「だから路は景色じゃなくて名前で識別する方が確実なんだ」 「そう――なのですか?」 青年が力説する中、少女はどんどん不思議そうな表情をしている。 「今までどうやって旅してきたんだ」 「町に着くまでは案内の方が居ました」 「案内役……」 これで合点がいった。そして、もう雇わないのか、と問う。この田舎娘は単独で旅をさせてはいけない気がする。 「連合にさえ辿り着ければ、そちらに頼もうと思っていまして」 「あー、なるほど。しっかし遅ぇ時間に行くんだな。とっくに日も落ちてるから、みんな任務で出回ってると思うぜ」 「もう少し早く行くつもりだったんです。道に迷っている間に二時間が過ぎてました」 「――どんだけ迷ってんだよ! 人に訊けよ!? この町そんなに広くねーぞ!」 「訊きましたよ。それでも何故か着けなくて」 少女がのんびり笑う傍ら、ポットローストが給仕係によって運ばれてきた。芳醇な香りがもわっと鼻先に伸び、青年は一瞬吐き気を催した。 少女はいただきますと言って早速バッファロー肉の塊に切り込んでいる。 「ん~、美味しいですね。これまで食べたことがなかったのが悔やまれます」 一口目の後に感想が挙がる。 「そいつぁよかったな。別に俺に報告しなくていいから」 青年は口と鼻を手で覆い、仰け反りながらその様を眺めた。 (にしてもコイツ、肝が据わってんのか頭がおめでたいのか。二時間さまようって相当だぞ) 焦りもせずにただのほほんと飯を食いに来ている辺り、後者だろうか。単に、連合への依頼内容が火急のものじゃないのかもしれない。 「……こっから連合拠点までの行き方を教える。気合いで覚えろ」 「本当ですか! 助かります」 咀嚼していた分をごっくんと飲み込んでから、少女は明るく返事をした。 「食べながら聞け」 「はい。ありがとうございます、親切な方。このお礼は必ず――」 「いやいや、礼はいらんって。あんたはちゃんと着くことだけ考えてろ」 これ以上関わってたまるか――と早々にその流れをぶった切る。少女は不服そうに口の端を下げたが、結局頷いた。 そうして青年は懇切丁寧に、なるべく噛み砕いて、行くべき道順を伝えた。 _______ さて――座っていた間は平気だったものの、いざ歩こうとすると急激に気分が悪くなる夜もある。それが酒を飲みすぎた直後とあらば尚更だ。 酒場を立ち去ってしばらく歩いた頃、青年は路地裏に入って排水溝の前に立った。溝の向こうの建物に片手を付き、もう片方の手で解かれつつある髪を押さえ、胃の中身を排水路に逃がす。 (サイアクだ) 喉からは空気が圧縮される音が漏れる。口や鼻の中には酸味が粘り付き、目からは熱い涙が溢れた。 だがこの行為は最終的には気分を良くしてくれるものだと、彼は経験から知っていた。 (あーもー、何もかも最悪だ) 呼吸の合間に人生に対する憂いがどっと蘇るが、とりあえず雑念を捨てて吐くのに集中した。ここで手を抜けば、二日酔いで明日は移動どころではなくなる。 やがて胃が空となり、青年は咳き込んだ。 「――はやく金目のものを出せやい」 ぼんやりとしていた頭と聴覚が、その時はっきりと一つの不穏な台詞を拾った。 時と場所を思えば、真夜中の路地裏である。他人を襲う輩の一人や二人など別段珍しくもなんともない。彼自身、排水溝目当てでなければ一人で訪れたりしない区域だ。 聴かなかったことにして、青年は人の気配のする方から背を向けた。だが次の一歩を踏み出すには至らなかった。 「貴方がたはお金に困っているのですか?」 カツアゲされていながらそんな緊迫感を全く感じさせない、どこかで聴いたような若い女の声がした。それはつい先刻、酒場で別れたはずのあの少女の澄んだ声であった。 |


