04.e.
2012 / 01 / 09 ( Mon ) 追跡されにくいよう巧妙に回り道を組み込んだりして、そのまま日が暮れる時刻近くまで馬を走らせ続けた。
定期的に休んできたとはいえ、馬の方に疲れが出ている。 「夕暮れまで一時間半でしょうか……」 ミスリアは陽のほうを向きながら呟いた。 隣でゲズゥが樹の根元に寝そべり、黒馬はそこらで草を食べている。 貴重な休憩時間だ。日中は人間から逃げるように、夜中は魔物から逃げるように移動し続けなければならない。 シャスヴォル国を出たら少しは人心地つくのだろうか。 何かしら妨害されない限り、運がよければ明日中につけるかもしれない。馬を使って短縮できた時間は大きい。 「今のうちに寝るんだな」 「……はい」 どこで、なんていちいち彼女は訊かなかった。 自分が持っていた肩掛けバッグを枕にして、ミスリアも樹の根元に寝そべった。ゲズゥに背中を向けるように横になる。 心地よい静寂が訪れる。 でも、まだ眠れなかった。 「あなたが、聞きしに勝る強さで安心しました」 慌しかったこともあり、必要最低限の会話以上を交わさないので、言い足りないことが溜まっている。今のうちにほんの一部だけ垂れ流してみようと思った。 「どうして一緒に来る気になったのか、できれば教えて欲しいです」 起きていそうな気配はするけど、反応がない。ミスリアは構わず続けた。 「伝書鳩の件は困りましたね。総統さまのお約束はどこまで有効なんでしょう」 「……」 「本当はあの馬売りの夫婦も、姿を見られたからには口封じをすべきだということは理解しています」 といっても、後になって考え直してから気づいた事実だが。 頭で理解しても絶対に許したくなかった。命を奪うことだけは。 「あの」 深呼吸してから、本日一番言いたかった言葉を用意する。 「人を殺すのはもう……やめて下さい」 拳を握り締めた。出すぎたことを言っているのは自分でもわかっている。 ミスリアはそれでも、願わねばならなかった。 昨晩の夜盗は、どうなったのかわからない。頭を強く打った者もいたし、魔物の襲撃もあって決して無事ではすまなかっただろう。彼らはミスリアを襲った敵だ。しかし、自分のせいで命を落としたのかもしれないと思うと寝覚めが悪すぎる。 今日に至っては、ゲズゥはただの一般人に鮮烈な殺気を向けていた。 きっと彼はミスリアを殺すことにだって何の躊躇も無いだろう。教団からの報復や国からの処罰は歯止めにならないと思う。そんなものを恐れて生きるようなら「天下の大罪人」にならないはずである。 「――何で」 数秒後、静かに理由を問われた。 もう一度深呼吸してから、ミスリアははっきりと告げた。 「死後、間違いなく魔物になるからです。あなたは罪を重ねすぎてしまっています。私は、あなたにそうならないで欲しい」 _______ 間違っているからとか、誰かが悲しむからとか、どんなくだらない理由を提示されるのかと思っていた。毎回それで泣きながら邪魔されるのかと想像しても鬱陶しい。 意表をついた返答だった。 罪を重ねるのは止めた方がいい、みたいな似たようなことを以前にも言われているが、こんな理由を示されたのは初めてだった。 ゲズゥは魔物が生じる条件などを知らない。多少興味を引く話だ。 でも本当は死後のことなんて全然気にしてないし、そんなことより今は眠い。 そうか、とひとことだけ答えておいた。 |
--無題--
誰だったは忘れてしまいましたが…orz 中世のとある王族たちが 国民からかなり恨みを買ったので 明日にも処刑されるというとき。 城から夜逃げしたのですが 次の日、あっけなく捕まってしまったとかw 何でも、王族御用の馬車を用意し その上で豪華なドレスを身に纏い 更にはコインに肖像画が彫られていたため、 農村を通りがかっただけで 農民たちにひっ捕らえられたという… 事実は小説よりも奇也とはこのことです。 それに比べればミスリアは賢いですね。 やっぱり『徳』の違いなのかな?(・ω・*
by: sun * 2012/02/14 10:47 * URL [ 編集] | page top↑
--因果ですか…--
恨みを買うような身分でありながら、省みる心を持たないからどこかで帳尻あわせが来たと解釈したくなる話ですねー^p^ ミスリアはある種の箱入りで世間知らずだけど、それを自覚するだけの賢さがあるので対応のしようもまだあるんだと思います。覚悟もあります。主人公二人とも中身が老けてるともいうw 慰問したり徳を積んで生きてるから、甘くてもなんだかんだで道中は助けてくれる人が現れて、運(或いは加護)も相まって今のところあまり酷い目に遭ってませんね。対するゲズゥは一人で何でも背負ってきたけどその限界に気付きつつある感じ……? 「生き方を変えるつもりはない」って最初のとこで言ってますけど、徐々に考え直すのか…どうでしょうね(◕‿‿◕) |
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