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拍手御礼ログ 11~15
2014 / 04 / 29 ( Tue )
はやい。

最初のログをつくった頃は500HITありがとうございますとか言ってたのに、今となっては5000HITありがとうございますですよ。私もあっという間にBB…(禁句)になるのかな。

まあ後悔は無いからいいのだけど!

1万なんか行ったら記念に何かしないといけないですよね<DOUSHIYOU



続きは拍手御礼ログになります。


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11 ホームメイド

 夕方、ラサヴァの役人ルセナンは自宅である料理屋に帰ると、妻がバーカウンターに頬杖ついて何やら唸っていることに驚いた。妻はどちらかといえば楽天家で、悩みもあまり引きずらないタイプだからだ。
「ただいま。どうした、何か悩みか? 珍しいな」
「あらあなた、お帰りなさい。大したことじゃないのよ。自家栽培を増やそうと思ってるんだけど、キノコにしようかヨーグルトにしようか決められなくて」
 ほう、と妻はため息を漏らした。
 元々ルセナンたちは趣味で自家製の酒を作ったり野菜やハーブを育てたりしていて、うまくできたものは店のメニューに出すこともある。最近で言えば、ハーブ入りクリームパンなどが近所で結構好評だった。
「お前の料理はどっちもよく使うな」
 なんだ、本当に大したことじゃなくてよかった、と安心しながらルセナンはスツールに腰をかけた。妻はいつもの癖で夫の肩を揉みに回り込んでくる。
「自家製の味が欲しいのはやっぱキノコよねぇ。でも収穫期を思うと、あんまりモトは取れないかしら」
 ちなみにヨーグルトは知り合いの牧場が美味しく作っているので、そこからまとめて買うのが常である。値段も手頃だ。ただ、自分で作って味や食感を実験したいという気持ちはよくわかる。
「試すだけなら別に両方作ればいいんじゃないか? それくらいの余裕はある」
 ルセナンは目を閉じて妻の指先が作り出す心地良い圧力に身を委ねた。
「それもそうね。うん、そうしよう」
「おう」
「あ、そういえば今日のお仕事どうだった? それとお腹空いてるなら何か温めるわ」
「そうだな、今日は……」
 顔を覗き込まれ、ルセナンはその日の出来事を思い返し始めた。
 うんうん、と相槌を打つ妻はすっかり明るい様子に戻っている。


12 先ずは飛べ

 執務室の戸がノックされても、男はすぐには羽ペンを繰る手を止めない。彼の護衛として常に傍についている二人の黒服の男性が、代わりに戸を開いて相手と対話してくれるとわかっていたからだ。
「主君、謁見の者がいらしています」と、用件を聞いた二人が振り返る。
「どうぞ通して下さい」
 男は羽ペンを置いた。ほどなくして、厳かで彫りの深い顔立ちと白と青銅色の混じった髪が特徴的な男性が、部屋に入ってきた。飾られた白装束は枢機卿の位を持つ者が纏う正装である。
「アンディア氏ではありませんか。お帰りなさい」
 出張でヴィールヴ=ハイス教団本部を数ヶ月ほど離れていた彼に、席につくように手で示した。しかし来訪者は机の隣の客用の椅子には座ろうとせずに、執務机の正面に立った。
「ええ、ただいま戻りました、猊下。……ではなくて。南東地方に向かった聖人たちに何か変なことを吹き込みましたでしょう。関所ですれ違った時に聞きましたよ」
 現枢機卿が一人・アンディア氏とは気の知れた昔なじみなので、一対一での会話では互いに丁寧なのは語尾のみであって、結構踏み込んだ接し方をする。
「変? と、申されますと?」
「地元の民と早く打ち解けたければ崖から飛び降りてみなさい、みたいなことを」
「ああ! あの方たちですか。はい、彼等が慰問の為に向かった地帯には崖から海に飛び込んで根性の有無を証明する習慣があるそうなので、そのように助言しました」
「なんてことを……。教皇猊下が仰るならば、と彼等は本気で挑むつもりでしたよ。若者たちが不用意に命を落としてしまってはどうします」
「良いではありませんか。人生何事も経験です」
 教皇はそう言って、へにゃり、と顔中の筋肉を緩めて笑った。
「そうやって怪しい挑戦ばかりを薦めないで下さい。それに、教団のイメージに関わります」
「貴方は世間体を少し気にしすぎではありませんか」
「貴方様はもう少し世間体を気にして下さい」
「まあまあ、そういうお小言も含めて帰還報告を聴きますから、座ってはいかがです」
 ね、と教皇は椅子の方を示して微笑みかける。
 アンディア氏は諦めと呆れがない交ぜになった顔で、椅子に腰をかけた。


13 こうして子供はできる

「次。君たちで最後だな」
 設計士は疲れを隠せない声で呼びかけた。呼ばれた二人の少女がおずおずと前に出る。
 かつてはウペティギの城だった住居を乗っ取ってから数週間後、城主や残党の処理をようやく終えた設計士とその仲間たちは、今度は城内の奴隷や使用人の身の振り方を検討していた。
「希望があるなら聞こう。使用人として残りたいのか、元居た場所に帰りたいのか、或いは全く別の何かが欲しいのか」
「わ、わたしたち、帰る場所、ない、です。ううん、あんな所、帰りたくないんです」
 二人のうちの色素の薄い方の少女が答えた。どちらも十二、十三歳未満に見えるのが痛々しい。
「そうか。ならばどうしたい?」
「わかりません。でも、ここに居させてください」
「それは構わないが……君たちは使用人になりたいのか? 他にも道はあるぞ」
 ふと設計士は全ての発端であった、小さな聖女と彼女を救いに来た青年のことを思い返した。関わったのは僅かな時間で、彼らのことを深く知ることもできなかった。だがあの若さで自分の生きる道を掴み取る意志を持っていたのは確かだ。それはとても素晴らしい、できれば目の前の少女たちにも手にして欲しい強さである。
「あ、あなたさまと一緒にいたいです!」
 色素の濃い方の少女が耐えかねたように顔を上げ、潤んだ瞳を向けてきた。
「助けてくださった、お、恩師さまのお役に立てるなら何でもやります! 恩師さまの命令通りに!」
「いや、気持ちは有難いが。あと、君たちはもう『命令』を聞く必要がない」
「おねがいします!」
 二人の少女が揃って飛び出し、設計士の左右の脚に抱き付いた。
「な――」設計士は硬直した。後ろに控えている協力者たちがクスクス笑いを堪えているのが聴こえる。
「結婚もしていないのに、いきなり娘が二人できたな。よかったじゃないか」
「よかったのかどうかはこれから決める」
 ため息混じりに返事をする。これまでにも恩師と呼んで感謝を表した元奴隷は居たが、こんなに直球に感情のままに縋り付いてきたのは初めてだ。この子たちの経歴と年齢を思えば無理もない。
「引き取るのは構わないが、私は君たちに奴隷か使用人としての一生以外にも道があることを知ってもらいたい。ゆえに教育を施す」
「きょう、いく?」
「そうだ、学問だ。明日からビシバシと叩き込んでやるから、ついて来い」
「「はーい!」」
「……その意気だ」
 何を言われているのか意味を完全に理解していないであろう少女たちは、未だ抱き付いた脚を離すことなく、新しい保護者に無邪気な笑顔を返した。


14 怒りの沸点

 気になっていた臭いについに耐えられなくなり、レイは後ろの階段に座る小柄な男に文句を言ってやった。それはまだ奴と出会って数週間と経たない頃の出来事であった。早朝の朝稽古に一人励んでいたら、いつの間にやら後ろに居たのだ。
「臭いぞ、エンリオ」
「え? 体臭がですか? 朝稽古のあとにちゃんと着替えたんですが……」
 いきなり糾弾された当人は自身のシャツを鼻の下まで引っ張って嗅ぐ。
 十ヤード以上は離れているのだから、ドブに飛び込むなり魔物の腐肉でも浴びない限り、普通の体臭が届くはずが無い。苛立ちが募り、レイはロングソードを振るう手を止めた。
「じゃなくて、煙。お前が吸ってるソレだ」
「コレですか。ああはい。適当に無視してればいーんじゃないですか」
 エンリオは管が太くて短い煙管を指の間に転げて言う。
「無視できないから言っている」
「そうですか。すーいませんでしたー」
 奴はそう答えて煙管を膝にトントンと当てることで中身を捨てた。灰なのか砕かれた葉なのかよくわからないカスが散る。
「間延びした返事だと? 私をバカにしているのか。家か? 父親が気の迷いでは済まされない金額を盗んで処刑されたから、貴様は私をも軽く見てるのか」
「ハァ? 飛躍しすぎでしょ。被害妄想ですよ、それ。あーあー、剣を振るうだけの脳筋女とまともに会話ができるはずありませんね」
 レイの中で何かの糸がぷつんと切れた。ロングソードの先を奴に向ける。
「よしわかった。貴様、剣を抜け。対等に接するのが難しい以上、武術で上下関係に白黒つければいいだろう」
「ヤですよそんなの。ボクがコテンパンにのされて終わるのが目に見えてます。大体、剣なんて持ってませんし」
「き、さま……! 男がそんな逃げ腰で良いのか! 矜持はどうした!」
「逃げ腰上等。矜持とかそこら辺の墓場に埋めてきましたよ。武力で上下関係を決めようだなんて短絡だと思いません? これだから脳筋は」
 この男、いちいち気に障る笑い方をする。
「身体が小さいと肝も小さいのか、よくわかった」
 しかしそう吐き捨ててやった途端にエンリオの表情が激変した。
「んなっ――体格の話は卑怯です!」
 がばっと立ち上がり、懐からナイフを取り出している。
 奴の怒るポイントを発見できたことに思わずレイは口の端を左側のみ吊り上げた。
「いいぞ。かかって来い。お望み通りコテンパンにのしてやる」
「上等です怪物女。正面から剣でぶつかる以外に戦い方があるってこと、今教えてやりますよ」
 向けられたナイフの先はレイの眼球を一直線に狙っている。
「やれるものならやってみろ」
 そうして二人は、主たる聖女レティカが気付いて説教しに来るまで、死なない程度に殺し合ったのだった。


15 同志であるから

 出会ったその日から、気に食わないと思っていた。
 いつも変な草ばっかり吸っていて臭いし、うるさい上に卑屈だし、決闘を挑んでもちょこまかと逃げ回って鬱陶しい奴である。小柄な体型も、中途半端な長さの髪も、女々しくて鬱陶しい。あの男を好きか嫌いかで分類するなら、間違いなく「嫌い」に入っている。
 生活習慣から話し方やみだしなみに至るまでに、とにかくことあるごとに衝突しては大喧嘩に発展し、主たる聖女レティカを困らせたものだ。
 ただ一つだけ認めざるを得ない事実がある――
「エンリオ!」
 前方では、異形に四肢を拘束されつつある小柄な男の姿がある。
 レティカを安全圏に送り届けた後、結界の傍に残って彼女を守るべきか否かで迷った。それが、自分でも意外な決断をした。
 レイは魔物を次々と薙ぎ払って駆けた。ずっと疎んでいた相手を救わんとして。
「死ぬな! 何故なら私たちは――」
 ――同志であるから!
 周囲の乱闘と喧噪によって、叫びはかき消された。進んでいるつもりなのに、ちっとも距離は縮まらない。それでもレイは諦めずに剣を振るった。そうするしかなかった。
 エンリオとは生まれ育った境遇に違いはあれど、聖女レティカという一点に道が交錯した。護衛になってからは、人生をつまらないと思わなくなったのは、奴も一緒だったはずだ。日頃いがみ合う度に、そう感じる部分が心の中に大きくなった。
 今ならわかる。対抗心が生じるのは、愛する相手が一緒だからだ。その人の気を引きたいだけなのだ。
 たとえ護衛としては間違った判断だったとしても、レイにはエンリオを見捨てることができなかった。それは自分の存在をも否定してしまうような気がするからだ。主を失うのは目を失うようなものなのだろう。唯一の同志を失うのはきっと、片腕を失うようなものだ。
 突然、死角から側頭部に強い打撃を受けた。体格に恵まれたレイでも宙を飛ぶほどの威力だ。
 受け身を取る間も無く地に落ちた。打ち所が悪いのか、下半身の感覚が急に途絶えた。視界も安定しない。忽ち何かが鎧に吸い付き、恐ろしい力で引き剥がしている。見えない敵を殴りつけようと腕を振り上げたら、激痛が走った。巻き付いてきた何かが、腕をあらぬ方向に曲げたのだ。
 私もここまでか、と心が沈みかけた時。
「どう、か……あな、たの――願いを、りそう、を……かなえて――」
 よく知った声が囁くのを聴いた。レイは俄かに安堵に似た感情を覚えた。身体を襲う痛みも少しの間忘れていられた。
 ――ああ、そうだ。やはり私たちは同志だ。同じ女性を慕い、守る為に命を賭す覚悟を決めていた。だから私も、最期の瞬間にはお前と同じ祈りを抱いて眠ろう。
 エンリオと舌戦を繰り広げる時を除けばあまり喋るのが得意と言えないレイは、巧い言葉が思い浮かばなかった。だから短い一言に精一杯の気持ちを込める。
「レティカ様、頑張って下さい」
 精一杯の笑顔を添えて彼女は逝った。

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