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2016 / 06 / 05 ( Sun ) 巡りめぐって数週間、場所はウフレ=ザンダの首都に戻る。 午後の日差しは温かく、平日の公園でのひと時は穏やかなものだった。おまけにお腹いっぱいな所為かぼんやりと眠い。前々から話に上がっていた合同生誕祝いの催しは、本日ピクニックという形で実現された。他愛ない話を挟みながらさまざまなご馳走を平らげ、そして人数分を倍にした量の甘味を堪能したのである。 後片付けを手伝わなくていいときつく言われたミスリア・ノイラートは、ややだらしない姿勢で公園のベンチに腰を掛けていた。 (うーん) 眠い。けれどいざ瞼を下ろすと、思考が落ち着かなくなって眠れない。昼寝の時間に限らず最近は夜もずっとこの調子だ。 膝を軽くとんとんされて、ミスリアは瞼を上げた。長い紅褐色の髪を三つ編みにして垂らした女性が、目の前でしゃがんでいる。 『聖女さん、元気、ない』 彼女は手話で問いかけてきた。 「いいえ大丈夫ですよ。ちょっと頭がぼーっとしてきただけです。お昼があまりにおいしかったものですから」 『白い髪の人が、心配だから、じゃないの?』 この質問には即答できなかった。姉の護衛の一人であったエザレイ・ロゥン氏にも今日のささやかな生誕祝いに参加して欲しかったのも本音である。しかし彼はあのサエドラの件の後始末の一環として対犯罪組織ジュリノイに連行されてしまったので、それは叶わない。 『あの人はもう、だいじょうぶ、だよ』 「わかっています」 聖地から無事に脱出する間、エザレイは一度も人の命を奪わなかった。ミスリアたちが首都に戻って教会や組織の助力を請い、サエドラの町の問題が片付くまでずっと、大人しく理性的な態度を取っていた。 ついに、裁かれる時が来ても。 ――貴様は随分と面倒な立場にあるのだな。貴様がこれまでに殺してきた連中はまた、我々にとっては粛清の対象だった。だが秩序の為には貴様のような輩を野放しにはできん。死刑は免れても処罰は免れん。 数日前、ジュリノイの代表者の一人が自ら足を運んで後始末を引き受けたのである。と言っても暗灰色のローブを頭から被っていたため、顔は見えなかった。その人は男女どちらともとれない中性的な声で判決を言い渡した。 ――喜べ、貴様の身柄を引き受けたいと申し出た者どもが居る。貴様が魔物狩り師となる以前に弟子入りした人物が所属していた連合だ。日中は牢で寝泊りすることとなり夜は任務で酷使されるだろうが、食と寝床のつく破格の待遇だ。監視の者は常に付く―― エザレイは二言も無くその話を快諾した。どうせここ数年の生活よりはマシだ、人として扱われなくてもいいから身を粉にして働きたい――そう意見を呈した彼の瞳や表情には濁りない生気がみなぎっていた。 本当にもう大丈夫なのだろうと、安心して別れられた。 『でも、お姉さんのことは、残念、だったね……』 そう言ってからイマリナはもじもじと身をよじって目を反らした。話を続けようとして、思い直したのか、くるっと表情を変えて明るく笑う。 (私の反応をうかがって話題を変えようとしてるのかな) 正直自分がどういう顔をしているのかわからないので、ミスリアはイマリナの気遣いに甘えることにした。 『お兄さん、あそこの角で、お菓子買ってるよ。そろそろ戻ると思う。迎えに、行ったら?』 彼女の指す「お兄さん」とはゲズゥのことだ。今日のお祝い会でイマリナの方が彼より五歳年上なのが判明したが、この呼び方を貫くつもりらしい。 『片付けは、わたしとご主人様で、十分だよ』 「そうですね。行ってみます」 気分転換になって目も覚めるかもしれない。ミスリアはベンチから腰を浮かせて、角まで小走りで行く。 (あれだけのデザートの後にお菓子……) けれどよく考えてみるとゲズゥはあまり甘味を口にしていなかった。やたら甘い物が苦手だと言っていたので、今買い求めているお菓子は別の味を極めたものなのだろう。 予定通りに行かないのが創作であってw、こっちやるよと言ってもあっちをやっている。 気が付けばミスリア書いてたw |
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