整理加筆修正のおしらせ
2012 / 06 / 30 ( Sat )
どうも! すみません( ・ρ・)

いつも訪問・拍手・コメントなどありがとうございます。毎日のように来て下さる方まで居て卒倒しそうなくらい嬉しいです (((( *ノノ) キャ


で。

本当はこんなことするのは非常~に気が引けるのですが、どうしても納得できなかったので13d-f あたりの切り方を調整しました。13f の最後の方にだけ二文くらい加筆してます。わざわざ読み返すほどでもないかもw

既に前の更新で読まれた方もいるでしょう。13f の一部を14の冒頭部分にして、多少の加筆修正もしています。こちらは見覚えがあるでしょうけど普通の更新のつもりで読んで下さいね
(ノ)・ω・(ヾ)

では今後はこのようなことが無いように気をつけます!

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15:05:51 | 補足 | コメント(0) | page top↑
13.f.
2012 / 06 / 28 ( Thu )
 時折弾ける焚き火を見張っていた。
 傍らでは、毛布に包まった少女が安らかな寝息を立てている。
 
(年頃の女の子に、道端での野宿はできればあんまりさせたくないな……)
 眠るミスリアになんとなく微笑みかけてから、カイルサィートは正面にいる長身の青年を見上げた。
 
 程よい大きさの石をどこから見つけ出したのか、ゲズゥはその上に座って瞑目している。腕を組み、右足を曲げて踵を左の膝にのせた姿勢だ。瞑想しているのか寝ているのかは知れない。
 どちらでも構わない。言いたいことを一方的に言いたいだけなので、カイルサィートは口を開いた。ミスリアを起こしてしまわないよう、小声を用いる。
 
「ゲズゥ・スディル、或いは『天下の大罪人』。ミスリアは君が『語られているほど凶悪じゃない』と見ているみたいだけど、僕は少し違う解釈をしている。君は背徳に、何も感じないんだ。祖国にすら見捨てられ、何もかもを奪われた境遇――結果として君が人間として何か欠如しているのかもしれないという話を聞いたけど、実際に会ってみてあながち外れていないと思う」
 
 カイルサィートは目を閉じた。自分の言葉の重さは十分に理解している。いっそ、一方的に言い捨てるだけで終わってもいい。
 逆上されて殺されるなら、せめてミスリアが逃げ切れるまでの時間は稼ぐ。
 
「別に君の生き方が間違っているとか、そういうことが言いたいんじゃない」
 彼の生き方自体を全て理解できているなんて思わない。まだまだ気になる点は多いし、誰も他の誰かを全て理解できやしない。そんなものは驕りだ。それでも、他人を理解しようと努力をし続けるべきである。
 
 ふと視線を感じた。
 目を開けると、色の合わない両目が炎越しにカイルサィートの姿を写していた。といっても黒い右目はともかく、白地に金色の斑点と縦に細長い瞳孔の左目では、写っているものがはっきりとは見えない。
 
 その双眸は威圧的でありながら静かだった。背筋が凍り、微動だにしてはいけないと本能が訴える。
 本能とは裏腹に、不思議と頭では恐れることは無いとわかっていた。出会ってからの時間を思い返せば、簡単に納得できる。彼はむやみに暴力を振るわない。
 
「……ほら、ミスリアって道端の虫の死骸にでも心を痛めるから……危ういと思ったんだ。君が傍にいて、いつかはそういう意味で傷付くんじゃないかと思って」
「遅い」
 低い声が短く答えた。返事をくれるとは思わなかったので少しだけ驚く。
 
「うん。確か、ミスリアが対話していた最中の魔物を君が豪快に斬ったらしいね? まぁ、相手が生きた人間じゃなかっただけ幸いかな。でも、何だろうね、要するに」
 カイルサィートは自分の言いたいことをまとめようと、一息ついた。
 
「僕はミスリアを信じているし彼女の選択を応援するけど、やっぱり君の方からも少しでも気を遣って欲しい。ということを、頼んだところで聞いてもらえなくても、せめて記憶のどこかに留め置いてくれると助かる」
 言い終わると、軽く頭を下げた。
 しばらくして頭を上げると、ゲズゥは訝しげな顔をしていた。
 
(何か皮肉を吐きそうな雰囲気だな)
 確かにゲズゥは口を開けている。が、彼が何か言う前に森の方から物音がした。
 刹那、ゲズゥの顔から表情が消え去った。
 
 残るのは敵を探す獣の瞳だ。
 カイルサィートも、己の吐息を静めた。

 最初の音がしてから、二人は動かずにただ待ち続けた。
 どれほどの間、そうしていたのかはわからない。
 はっきりとした音はもうしなかった。草がふみしめられるような、微かな音なら聴いたかもしれない。
 
 やがて、ゲズゥが興味をなくしたように目を伏せ、剣の柄を握っていた右手を開いた。
 
「通り過ぎたな」
「……そう」
 張り詰めていた息を吐き出した。どの道、結界があるのでどんな敵だったとしても簡単に入り込んだりできなかったろうが、だからといって無視できない。
「狐か何かかな。それとも魔物?」
 一定のリズムで寝息を立てているミスリアを眺めながら、呟いた。
 
「人間」
「え? よくわかったね」
 彼には音の大きさや間隔か何かで判断できたのだろうか。カイルサィートに聴こえなかったような音か、空気の揺れか、はたまた臭いのひとつでも感じ取った可能性もある。
 
「ただの勘だ」
 返ってきた答えはあっさりとしていた。ただの勘でいいのか。
 夜盗やら賊の類を懸念して、カイルサィートは眉をしかめた。何かしら対策を立てるべきかもしれない、と相談を持ちかけようと思った途端。
 
 ゲズゥが道端に生える樹を登り始めたのである。
 考えうる理由としては――見晴らしがいいので危険要素をいち早く発見できそうだからか、それとも単に寝るつもりなのではないかと思う。
 
「三時間したら起こせ。交代する」
 頭上から降ってくる声。見張りの話だ。どうやら登った理由は後者の方が当てはまるらしい。眠気に抗う方法なら多く持ち合わせているので、こちらとしては断る理由は無い。
「わかった。お休み」
 樹の上に向かって答えた。

 不審な気配を、ゲズゥ・スディルが気にしないと決めたのならこちらとて過剰に気にしても仕方ない。
 カイルサィートは日記帳と羽ペンを荷物の中から取り出した。

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12:49:47 | 小説 | コメント(0) | page top↑
13.e.
2012 / 06 / 26 ( Tue )
 ――主のために行ったらしい所業だというのに、最終的にそのせいで主に切られた女。
 ゲズゥは不敵な笑みを絶えずたたえていた女騎士に思いを馳せた。滑稽である。
 といっても、オルトはいわば海か空のような、広いような深いようなとらえ所の無い男だ。かつて一年以上と行動を共にしただけに、ゲズゥは直感でわかっていた。
 
「どうだろうな」
「何が、ですか?」
 力なくミスリアが訊く。
「……あの女に利用価値を見出す限り、オルトは多分そいつを助ける」
 
「どうやって?」
 ある程度抑制しているとはいえ、聖人の目は興味深々だ。
「顔や背格好が似た人間を代わりに処刑すればいい」
「そんな――」
 
「あの男はそれくらい何とも思わん」
 ますます気分が悪そうなミスリアに構わず、ゲズゥはまた歩き出した。
 オルトが女騎士に対して見出した利用価値に関して、あの女と刃を交えた時からゲズゥには密かに思うところもあった。しかしそれを理解できない相手に教えても無益だ。

 食べ終わった林檎を森の中へと投げ捨てた。
 トスッ、と落ちた瞬間の控えめな音がする。その衝撃か音に驚いたらしい小動物が、ガサガサと逃げ回る音が聴こえる。
 そういえば聞きそびれたことがあると思い出して、ゲズゥは歩く速さをゆるめて背後の聖人を振り返った。
 
「うん? どうしたの」
 すぐに気付いて、聖人の方が声をかけてきた。馬上のミスリアもこちらに注目している。
「夜の魔物をどうしのぐ気だ」
 
 ゲズゥはミスリアと聖人の二人に問題提起をした。まさか夜通し移動を続けるつもりは無いだろう。しかも小さな村が点在しているとはいえ道から大分外れてしまうため、宿泊先を探すより野宿の方が手間が少ない。
 
 野生の動物は炎などで近寄らせないなどと対策は立てられるものの、魔物除けに効くのは「結界」といった術だけのようだ。それらの類は専門家こそがどうにかすべき問題である。
 そうでなければ、交代で寝ずの番をするしかない。
 
「カイル、考えがあると言っていましたよね」
 ミスリアは聖人の方へ視線を向けた。
「そうだね。例の水晶をまだ持ってる?」
 
「はい、ここに」
 ミスリアは懐から何か小さな袋を取り出した。細い指で引き紐を解いている。
「村の封印が解けた時、空から降ってきた石のようなものを覚えていますか? これがあの時の水晶です」
 
 覚えている。空が歪んだかと思えば一点の石に収まった、という不思議現象。あの時は母を見送った直後であっただけに深く気に留めなかった。
 こちらからも見えるように、ミスリアが手のひらを差し出す。
 
 水晶といえば面の多い宝石みたいなものを想像した。ところがミスリアの手のひらにのっている青みがかった透明のそれは飾り物の石みたく、滑らかだった。人の手によって磨かれたものに思える。
 ゲズゥは今まで生きた年月の間にさまざまな石を見てきた。見た目で似ているのはガラスの小玉辺りだが、この青水晶は何かが根本的に違う。何がとなるとはっきりとわからない。どうにも教団やら聖気がらみとなると曖昧な感想ばかりになってしまう。しかし、近づいて確かめたいほどでもない。
 
「これを使って簡易式の結界を練るんだけど。聞く?」
 理解できるかどうかあやしいが、いつかは生きるために役に立つ知識となるかもしれないという可能性を検討してから、頷いた。
 前を向き直り、歩き出す。背後からゆるやかな馬の蹄の音と聖人の声が続く。
 
「今は込み入った説明は省くよ。即ち水晶とは、とある何かを別の何かに『繋ぐ』のをより簡単にする、媒体なんだ」
 聖人は軽い調子でそう始めた。
 端から理解の範疇を超えているが、ゲズゥは何も言わないでおいた。道端の倒木を踏んで、ひとり先頭を黙々と進む。
 
「村の封印の要だったのはこの水晶で、核の魔物が消えれば封印も解けるように二重に術がかかっていたんだね。封印と魔物という二つの不安定な存在を繋ぐのは難しい。でも如何に高等な術でも既に解けた今では、この水晶は空白状態に戻っている」
「術が書き込まれていない空白状態なので、私たちが新たな術に使えるわけです」
「そういうことだね。水晶が無くても術を練ることは可能だけど、それだと成功しにくいからね。それで、封印と結界の原理については別の機会に話せばいいかな」
 
「大体わかりましたか?」
 遠慮がちにミスリアが問う。
「…………」
 振り返って、頷いた。わかったといえばわかった。
 でもこの話はもういい、とも思う。

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14:48:19 | 小説 | コメント(0) | page top↑
ひとりごと1
2012 / 06 / 23 ( Sat )
建物の描写が適当で自然ばっかり丁寧に書き込んでいるのは愛の比重の問題です。
 
すみません精進します

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04:10:59 | 余談 | コメント(0) | page top↑
13.d.
2012 / 06 / 19 ( Tue )
「そうだな」
 ルセナンは深く頷いた。
「噂だと、睨んだだけで人を呪い殺す力を持った眼って説もあるぜ。どうなんだろうな? あの兄ちゃん、そんなことしてたか?」
 好奇心と畏怖の入り混じった目で、ルセナンが訊く。
 
「いいえ」
 頭を振って否定した。ミスリアの知る限りではゲズゥが睨んだだけで相手がどうこうなるなんて現象は起きていない。だからといって、知らないところでそれをやっていないとは言い切れない。真実であれば末恐ろしい能力だ。
「噂は、あくまで噂に過ぎないでしょう。でも貴重な情報を有難うございました」
 信じていないといった具合で、カイルが笑んでいる。もとより、俄かに信じられる話でもない。
 
「それより僕らもそろそろ出ないと。下手すると置いていかれるかも」
 ミスリアにしか聴こえないようにカイルは小声で言った。
「え」
 一瞬想像して、硬直した。
「冗談。でも、一人で先に行ったとしても余裕で自分で生活できそうだよね、彼」
 カイルがあまりに爽やかに笑うので、ミスリアも釣られて破顔した。
 
「……では、お話の途中ですが私たちはもう行きます。色々とお世話になりました」
 二人は揃って会釈した。
「いや、こちらこそ世話になったな」
「お気をつけて。旅、頑張ってくださいね!」
 ルセナン夫婦が会釈を返す。そして明るく手を振って送り出してくれた。
 
_______
 
 ラサヴァの町での馬の入手は困難だった。数が少なく、値段が高い。そのため、買ったのは一頭だけである。荷物を背につけて、鞍にはミスリアが乗っている。一人で乗るのに不安そうな顔をしているが、聖人が手綱を引いているので問題無いだろう。
 町から伸びる一本の道を、旅装姿の三人と一頭は無言で進んでいる。まもなく町から出るため、道のレンガの舗装が途切れ、前方に続いているのはただの土手道である。
 
 談笑が無いのは気にならないどころか、むしろ理想的だった。
 背後の二人は料理屋を出てからずっと何か聞きたそうな様子である。言い出しづらいのだろう、時々こちらに視線を投げかけては口を開き、しかしとて問いを形にすることなくまた目を逸らす。
 察していながらも思いっきり無視を決め込んで、ゲズゥは歩を進めた。
 
 彼は多少の荷物を腰に提げ、大剣を背負い、片手の林檎を時々かじりながら程よいペースで歩いていた。いつしか周囲の景色は人間の建てた建築物から大地より伸びた木々に切り替わった。記憶の中の周囲の地理・地形を、実際のそれと比べながら、脳内の地図を書き換えている。
 この先には森、丘、岩壁、低い山。ミョレンの国境を抜ければ、視界に収まりきらないような高山が現れ、山脈を成す。
 
 国境を抜ける手前で聖人とは道が分かれるらしい。
 そこからの行き先への地図はミスリアが持っているが、地図と方位磁石を読んだだけではあの山脈の抜け方を知ることはできない。最後にあの付近へ行った頃のことを、ゲズゥは思い返した。夜な夜な襲ってくる魔物は当然のこと、獰猛な野生動物が居た気がする。山賊などもおそらくまだあそこで縄を張っているだろう。
 
「……結局、流行り病騒ぎは、全部の責任をセェレテ卿と某商社に押し付けて円満解決に仕立て上げたみたいだね、町長と役人たちが」
 ようやく口火を切った聖人が最初に触れたのはラサヴァの話題だった。
「そうですね」
 未だになんと感じればいいのか決めかねているような声で、ミスリアが答える。司祭の名誉は守られたということだ。
 
「商社の人間は牢入りだったり死刑判決になったりしたけど、セェレテ卿は、数日のうちに公開処刑にされるそうだよ。やっぱり、そうしないと元が騎士だから示しが付かないのかな」
 聖人が抑揚の無い声で言うと、ゲズゥはぴたりと足を止めた。
 振り向けば、ミスリアが血の気の引いた顔になっていた。鞍を掴む手に力を込めたのか、間接が白んでいる。この少女は、敵の立場だった人間の死を聞いても動揺するのか。

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11:07:48 | 小説 | コメント(0) | page top↑
13.c.
2012 / 06 / 15 ( Fri )
 思わず、ミスリアは顔をしかめた。その言葉に思い当たる節が無いでもない。
 
「……そういうことだね、多分」
 カイルは目を閉じて同意し、それ以上は何も言わなかった。
 ミスリアは両手を握り合わせた。かける言葉が思い付かない。
 
 結果、ぎこちない静寂が広がる。
 
「……食って寝てればそのうちどうでもよくなる。心がいくら落ちようが体の方は生きるのを諦めたりしない」
 そう言い残して、ゲズゥは宿屋の中へ戻っていった。パタン、と裏口の戸が閉まる。
「あれ、もしかして慰めてくれたのかな?」
 ゲズゥの姿が見えなくなってから、カイルが訊ねた。
「私にもそのように聞こえました」
 
「いいアドバイスだったね。ひとまず僕は、寝ることに再挑戦するかな」
 カイルは身を起こし、そのまま立ち上がった。
「はい、私も」
 ミスリアは差し伸べられた手を取った。
 
 柔らかい風に打たれ続ける湖を、二人はあとにした。
 
_______
 
 料理屋の夫婦に向けられた憐憫と後悔の眼差しを、ゲズゥは快く受け止めなかった。彼にとっては何の意味を持たないものだからだ。
 面倒くさい方向の話だ。
 踵を返し――曇天の朝に出発して大丈夫か、崩れないだろうか――などと天気の問題へと思考を切り替えた。
 
「当時のシャスヴォル政府があんたらの村に何か不穏なことをしようと考えてたって、隣町のオレらは本当はわかってたぜ。何もしなくて、悪かったな……なんて言っても仕方ないか」
 今更謝罪しても無意味だということを、役人は理解しているようだった。
「事情に気づいたのはほんの一握りの人間だった。騒ごうものなら、オレらは間違いなくシャスヴォル軍に口封じとして消されたはずだ。みんな、怖かっただけなんだ」
 役人は更に話し続ける。
 
 あの日、「呪いの眼」の一族を抹消するつもりでやってきたのはシャスヴォル軍だった。
 近隣の村や町の人間は一族をまったく助けようなどとしなかった。こちらがひっそりと隔絶されたように暮らしていたとはいえ、昔から物々交換などの付き合いはあったというのにだ。
 
 そうしてゲズゥは人類に失望したと同時に、納得した。人は、自分以外の誰かを助けたりしない。それが醜いのかというとそうではなく、ただそれが当たり前の在り様なだけで、生き物はいつでも自分のことだけで精一杯だったのだ。
 
「私たちは『呪いの眼』の一族を嫌ったり怖がったりしなかったわ。本当よ」
 役人の妻が必死な声で訴える。
 
 詮無きことだ。誰が何を言おうと時は遡らない。
 驚愕の表情を浮かべる聖人と聖女ミスリアの間をすり抜けて、ゲズゥは店から通りへ出た。
 
_______
 
(えーと……)
 一度も振り返ることなく去っていったゲズゥの後姿を、なんとなく見送った。
(うぅ、気まずい)
 ミスリアは知らず後退っていた。目立たない程度にカイルの背中側に回る。
 出立の朝だというのに、天気だけでなく旅の先行きもあやしい。
 
「彼らの村を滅ぼしたのは、自国の軍だったんですね」
 沈黙を破ったのは、カイルだった。
「ああ。知らなかったんだな」
「彼は語ってはくれませんでした」
 俯き、ミスリアはそう答えた。
 
「どうしてそうなったのかご存知ですか? 僕なりに考えはありますが」
「さあ……詳しくは知らない。政府が村と『呪いの眼』を危険視してたのだけは間違いないな」
「でも明確な危険性を示す証拠は無いです」
 ゲズゥの処刑を止めた日に総統閣下に言ったのと同じ言葉を、ミスリアは繰り返した。
 
「そうは言っても、人は得体の知れないものを駆除したがるよね。証拠やはっきりとした結果が出るのを待つほどの勇気が無いから、先にどんな不安の種をも潰そうとする。あとになってそれが過ちだったと知ってもね。為政者としてそのやり方が最善なのかどうかは、一概には言えないと思う」
 カイルは重いため息をついた。

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23:54:43 | 小説 | コメント(0) | page top↑
13.b.
2012 / 06 / 12 ( Tue )
 しばらくして衣服の擦れる音がした。静まるのを待ってから、視線を戻す。
 幸いゲズゥはズボンを穿き終えたようで、上半身だけ夜風に晒している。デッキに脱ぎ捨ててあった服を淡々と拾い集め、肌に付着した水をシャツで雑に拭っている。タオルを使えばいいのに、と思ったけど言わない。
 
 ミスリアは風に揺れる水面を黙って眺めることにした。
 静かな夜だった。結界に覆われていないこの町ではなかなか味わえない、魔物の騒がない夜。主にここ数日での魔物狩り師たちの働きのおかげである。勿論、ミスリアも討伐の手助けをしてきた。数が減った今では、余計な聖気の気配が遠くの魔物を惹きつけないように注意を払っている。
 
 ラサヴァを初めて訪れてから一週間半ほど経った。
 諸々の騒ぎの後始末を手伝いつつ、ルセナンの料理屋を手伝ったり、図書館や評判の菓子屋へ寄ってみたりと、ちょっとした観光もしている。
 
 本来の目的を思えば進んだ方がいいのに、ついカイルに気を遣ってしまう。それに、彼も近いうちにこの町を発つそうなので、途中まで一緒に行く約束をした。
 ゲズゥはというとずっと、意見一つ漏らさずに見守っていた。何も言わないのは肯定の意か、それとも関与したくないだけか。護衛らしくほとんど行動を供にしてくれるけど、付かず離れずの距離で数歩後ろを歩く形だ。
 
(でも……なんとなくだけど、何も言わないからって何も考えてないわけじゃない、気がする)
 むしろ彼が呆然と遠くを見つめるのは、色々と物思いに耽っているからだと思う。日頃、何を考えているのかものすごく知りたい。
 
「あと一人って何? なんか意味深だね」
 爽やかな青年の声にはっとなって、ミスリアは後ろを振り向いた。
 ミスリアにとってのたった一人の友人、カイルサィート・デューセが宿屋の庭からデッキに踏み出している。ゲズゥは問いかけを無視すると決めたようで、無言を保った。
 
「カイル。今晩は魔物討伐の予定は無いはずでは」
 深夜にどうして起きているの、という意味合いで訊いた。けれどもカイルが近付くにつれて彼の服装が目に入り、的外れな質問であるとわかった。
 彼は寝巻きとも取れるような無地の大きめなシャツとズボンに、上着を羽織っているというだけのラフな格好だ。とても今から出かける風には見えない。
 
「うん、知ってるよ。風に当たりに来ただけ」
 カイルは笑って、隣に腰掛けている。やはり夢見が悪くて目が覚めたのだろうか、などと考えた。
「そんな薄着じゃ冷えるよ」
 彼は自分が着ていた上着を脱ぎ、ミスリアのキャミソールワンピースの上にかけた。
「ありがとうございます」
 上着に残る温もりを素直に受け取った。
 
「で、そういう君らは何してるの? 水泳の特訓?」
 シャツを使って髪を乾かす半裸のゲズゥに対して、カイルは不思議そうに首を傾げている。
「私は眠れなくて……」
 ミスリアの返答にカイルは「そっかー」と頷いたかと思えば――いきなり上半身を後ろに倒して、デッキに仰向けになった。片腕で顔を覆っているので表情が見えない。
 
「え、どうしたんですか?」
 心配で友人の顔を覗き込む。もしや相当に疲れが溜まっている?
 確か今日は、午後からの役人たちの集まりにカイルも出席していたはずだ。ミスリアは部外者だし、聖女として慰問の仕事もあったので参加していない。その会議が半日以上にも及ぶ長さだったらしいのはルセナンの妻に聞いている。
 
「あーあ、おうちに帰りたいな」
 彼にしては珍しく子供っぽい言い回しに、ミスリアは伸ばしていた手を止めた。
 カイルは五年前に一番近しい家族を失っている。直後に父とは疎遠同然になり、そして今度は、叔父とは二度と会えない流れになっている。もうすぐ二人で暮らしていた教会をも離れる。

 教団の思い出では集中的に修行ばっかりしていたから、あそこはおうちって雰囲気でもない。
 彼の帰りたい家はどこにも残っていない。だからこそ、この一言は重い。
 
(私は両親ともに息災だけど、どっちかといえばあの家にはあまり帰りたくないし……)
 これでは友人の気持ちを汲んでやれない。
 
「ごめん。君らに言うことじゃないね」
 カイルは特にゲズゥに気遣わしげな視線を向けた。そのゲズゥは視線を返さないで、腕の柔軟をしている。
「謝らないでください」
「僕がもっと早く気付いて、行動に移していれば叔父上を止めることくらい出来たかもしれないけど。それを言えば『全部私の咎なのに、君は真面目すぎる』って返されそうだなって思った」
 
「……お父様にはお会いできそうに無いんですか?」
「無理だよ、多分。父上は僕に会いたくないはずだから」
 カイルは腕を組んで枕代わりにした。
「どうしてですか、ご自分のお子さんなのに。残った家族を大事にしたいと思うでしょう?」
 
「それは違うよ」
 目を閉じて、カイルは静かに告げた。どういう意味なのか、ミスリアにはわからない。
「つまり……」
「残った人間を見ると失った家族がどんなだったか思い出すから、会いたくないんだろう」
 言いかけたカイルを、ゲズゥの低い声が遮った。

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大自然
2012 / 06 / 11 ( Mon )
どうも、また週末旅行から帰ってきました。(疲れた!

小さな島。

なんか絵になる場が多くて、そういうことばっかり考えながらうろついていたので始終取材をしているような気分でしたw
友人たちはさくさく歩いてました。

Photo06090942.jpg フェリーから近づくとこんな感じ。蒸し暑い。

Photo06091005.jpg とにかく樹がすごかった。無駄に蚊に刺されまくってイライラしましたけども!

Photo06091125_2.jpg 沼の上に歩道橋? Photo06091137_1.jpg 白砂…

Photo06091047_1.jpg 超お金持ちな一家の居住地の跡地。

Photo06091031_1.jpg 跡地+野生の馬。馬刺しが無性に食いたくなったのは私だけ^p^

Photo06091058.jpg 絡み合うようにして生えてた樹同士。抱き合っているようだとかコメントしてる人いましたが私には生存戦争で潰しあっているようにしか見えません!

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13.a.
2012 / 06 / 07 ( Thu )
 衝撃は、解放感に似ていた。
 泡の音。水の中を落下する時のみに味わう独特の重圧。
 
 人間の体温より遥かに冷たい水に全身を包まれ、芯まで震える。浮上し、水面を突き破って息を吸い込んだ。ひんやりとした空気が肺を満たす。淡水の臭いは割と好きだ。
 目を開けたまま、再び夜の湖に潜り込んだ。視界の曇りから察するに、藻で月明かりが湖底まで届きにくいとわかる。小魚が足の指を掠めた。長い水草が左手首に絡みつくのを、右手で剥がした。
 
 暗闇自体は気にならないどころか、むしろ安寧を与えてくれるものに感じられる。
 時折、闇の中に浮かび上がる記憶と言う名の映像だけが余計だが。
 昔から幾度となく、繰り返し思い出してきた場面の一つがまた脳裏にちらついている。瞼の裏に焼き付く光景を払いたいがためにとにかく体を動かす。
 
 十代半ばの少年が地面に横たわり、血にまみれた手を伸ばしていた。
 いつだって、少年の全身を汚す血と煤と体液よりも左の眼窩(がんか)から溢れる赤黒い血ばかりが気になる。
 
 ――頼む、――してくれ。――――ったら、かならず――――を―せ――
 途切れ途切れに記憶を波打つ、少年の必死な声。
 
 ゲズゥ・スディルは息を止めて二十秒ほど泳いだ。
 苦しいのは、息をしていないからではない。彼は柄にも無く悩んでいる。

 目が覚めて仕方が無い時は、体を動かすに限る。疲労感だけが確実に深い眠りの世界へ沈ませてくれるからだ。普段はそういう睡眠ばかり取っているので夢すら見ない日が多い。
 気分は未だ晴れないが、諦めて水面を目指した。
 
「眠れないんですか?」
 湖から頭を出した途端に、背後から少女の澄んだ声が聴こえた。
 
 振り返るとそこには、デッキの端に腰をかけた聖女ミスリアの姿がある。縁に手をかけ、白い素足をぷらぷら揺らしている。栗色の髪を後頭部で束ね、身に着けている淡い色のワンピースは暗くてよくわからないが橙か黄色だろう。
 
 小柄な少女は僅かに上半身を傾け、湖面を見つめた。手すりに囲われていないデッキだからできることだ。
 見たところ、眠れないのは寧ろミスリアの方なのではないかと思う。
 ゲズゥは岸に向かってゆるやかに泳いだ。
 
「……夢を、見ていました。怖いというとそうでもなかったんですが、後味が悪くて目が覚めたんです」
「そうか」
 いつもなら相槌を打たなかったかもしれない。今夜はたまたま自分も似たような気分だったからか、つい先を促すような視線を向けた。その意図を受け取って、ミスリアは話を続けた。
 
「螺旋の階段を、のぼる夢でした。目指す先は雲の上にあって見えないんですけど、そこに欲しいものがあると確信を持って走り続けるんです。でも息が切れるまで走っても、たどり着かなくて。疲れて立ち止まって階下を見ると、幸せそうに笑う人が一杯いて、楽しそうだなって羨ましくなって。引き返して階段をくだるんですけど、今度はどんなに頑張っても下の方へいけないんです。いつの間にか上へも下へも進めないんだって解って、自分だけ取り残されたと解って、階段に座り込んで泣き崩れました」
 
 そこで目が覚めたのだと予想がつく。
 ミスリアは両膝を抱き抱えて、膝の頭に顎を乗せた。ワンピースの裾が柔らかい風になびく。
 
 世界に一人取り残される気分なら、ゲズゥには覚えのある感情だった。そんな夢を見るくらいだからミスリアにも何か心当たりがあるのだろう。多少の興味は沸いたが、訊きたいほどでもない。
 ゲズゥは岸まで泳いだ。
 
「夢なら、俺も見た」
 居心地悪そうに目を潤ませる少女に、同情したのかもしれない。気がつけばそんなことを呟いていた。
「どんな夢でしたか?」
 茶色の瞳には驚きが彩られた。
 しかしその質問には答えず、ゲズゥはひとりごちた。
 
「……約束を果たすまで、あと一人……」
 両手を岸にかけ、水の中から上がった。
 
_______
 
 湖から岸へ上がってきた青年は全裸であった。ミスリア・ノイラートは一瞬遅れて顔を逸らした。
 下半身に何か穿いていると思ったから吃驚だ。
 
「ご、ごめんなさい」
 デッキに灯りが灯されていないからおおまかなシルエット以外は何も見えなかった訳だけど、一応直視した形になったので、謝罪せずにはいられない。
 視界の端を、細かい傷跡だらけの足が通り抜けた。向こうは気にしている様子は無い。

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08:33:56 | 小説 | コメント(0) | page top↑
くるくる
2012 / 06 / 05 ( Tue )
塗っちゃいましたわね…えびの奴め…
最初の頃に話し合って、「ミスリア」のキャラ絵はなるべくリアル塗りを目指そうって結論に至りました。あくまでガイドラインとして(シューリマはアニメ塗りでしたね

絵の中に他の人の影をかけようかとか冗談が飛び交いましたけど

はんざい臭が強すぎて怖いわ^p^



服何色がいいと適当に訊かれたら適当に黄色と答えた私。
いい感じなのでこの服をこのまま次のシーンに採用します(・∀・) 

mithrya02.jpg
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*拍手御礼入れ替えました

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13:35:28 | | コメント(0) | page top↑
戦闘スタイルメモ
2012 / 06 / 03 ( Sun )
ゲズゥ
 
武器: 曲がった大剣。何でも扱えるけど曲がってるのと鋭利な刃物が一番好きらしい。素手でもかなり強い。殴るより蹴る投げる飛ばす派。
攻撃: タイミングを見計らって大技を叩き込む。緩急つけるのも得意。
防御: 受け流す、かわす・避ける。鎧は動きが鈍るので却下。
 
まとめ: 理にかなった動きを教え込まれているため、相手を無力化させるための順序や重力、周囲の環境をも考慮に入れて効率良く動く。ただし、本人の身体能力が高いので効率はさほど問題にならないし、長時間戦闘も問題なし。アクロバティックな動きも得意。
 
 
 
カイル
 
武器: 一般的に普及してる剣(直線型、両側に刃、鋭利さよりどちらかというと勢い・剣圧で斬るタイプ)。素手の体術はあまりできない。
攻撃: 深く考えずにチャンスあれば攻める
防御: 受け止める、かわす・避ける。戦闘においては一般人なので鎧は滅多につけない。
 
まとめ: 対人戦より魔物を相手にする場合が多いので、剣に聖気をまとわせることが多い。日ごろからそんなに鍛えているわけではなく、護身術が主なので前衛に向かない。
 
 
 
シューリマ
 
武器: レイピア系。ランスも使う。素手だと手刀技メイン。
攻撃: 素早い手数の多さで相手を翻弄し、隙あらば急所を狙って刺す。柄で殴ることも。
防御: 避ける、たまに受け流す(武器が軽いため相手によっては難しい)。鎧は最新技術の、軽くて丈夫なタイプ。チェーンメイルもつけたりする。
 
まとめ: 速さ自慢。相手をあっという間に穴だらけに、またはあざだらけにする。肩書きは騎士だけど、たぶん騎馬戦より白兵戦派。鍛えているので腕力・脚力は並の女性の比ではない。



オルト
武器: ゲズゥ同様に何でも扱えるオールマイティ型。普段は剣。素手だと柔術みたいな一本背負いを繰り出す。
攻撃: フェイントを巧みに組み込んで隙を誘う。相手の裏をかいたり卑怯な手口を何の抵抗もなく使う。
防御: 受け止める、受け流す。鎧は全身じゃなく部分的につける。
まとめ: たぶん彼は騎馬戦大得意で、戦闘・身体能力自体は中の上くらいでそんなにめちゃくちゃ強いわけではない。常に頭を使う。戦術を知っていて、軍の指揮者向き。
イトゥ=エンキ
武器: 直刀を持ち歩くが本命は腰にかけてる鎖(先はフックに似ている)。素手だとキックボクシングに近い戦法をとる。ナックルと似た容量で拳に鎖を巻いたりもする。
攻撃: その場その時の目的による。鎖で相手の動きを封じたり牽制したり、一撃必殺を狙ったり。
防御: 腕を中心にした防御の型を使う。必要とあらば甲冑をつける。主に籠手。
まとめ: どこか一つ突出した力を持たず、バランス良く強い。相手の出方を見つつ戦い方を決める、慎重な面がある。試合なら楽しむが実戦だと必要以上に好戦的ではない。生き延びれればそれでいいと考えている。



リーデン

武器: チャクラム、仕込みナイフ。飛び道具系全般が得意。素手だと間接狙いと蹴り技。
攻撃: 離れた場所から襲う。常に大量に持ち歩いているチャクラムで相手を怯ませ、接近して一気に叩く。
防御: 手先で弾くか避ける。防具の類は服の下につける(主に軽い革製品を好む)。

まとめ: 手先が器用な上に両手利き。鋭利な刃物大好き。力よりも速さや不意打ち重視で暗殺向きだが、血統の関係で基礎体力もそれなりに優れている。



エンリオ

武器: 投げナイフ(右利き)
攻撃: 中・長距離から的確にナイフを投げる。懐に入られたら多少の体術も使える。
防御: 避けるの一択。防御そのものは不得意。接近されればなるべく距離を取ってからまた攻勢に出る。防具はつけない。

まとめ: 先手必勝型。すばしっこい上に視力が良い。相手に姿を視認されない距離から叩ける。体重が軽く力も弱い為、接近されると一気に不利になる。



レイ

武器: ロングソード
攻撃: 正面から衝突する。猪突猛進型だが、手数の多さより一撃ずつを重く繰り出す。
防御: 剣で受け止める。受け止めきれない攻撃は全身につけた鎧で対応。(主を守る為)一度その場から動かないと決めれば、腰を落として強固な壁と化す。

まとめ: 女性の肉体を限界までに鍛え、剣技を磨くことに余念が無い。両手で剣を持つがゆえに盾を使えないが、通常の護衛業や魔物退治だとあまり問題になることは無い。エンリオと対照的に動きは遅い。

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03:07:42 | 補足 | コメント(4) | page top↑
らくがき天国1
2012 / 06 / 02 ( Sat )
どうも~。

この前えびが落書きをいくつか提供(掘り起こ)してくれたので、曝しちゃいます!
妙にげすさん率高いのは気にしない…

キャラの初期設定とかも近日公開する…かも?


001.pnggezouh03.pnggezouh04.png




ところで…

みっすん可愛いよみっすん^p^
萌えすぎて色塗りたいけどソフトが無いww 
そしてマウスを極めるだろう…


mithrya01.jpg


皆様も絵の練習したいのに描く人が居ないなんてジレンマに出会いましたら、どうぞうちの子たち描いてね(・∀・) !

もう着せ替え人形のつもりでコスプレとかさせてもいいから★

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08:14:24 | | コメント(0) | page top↑
12 あとがき
2012 / 06 / 01 ( Fri )
お疲れ様です(・∀・) 

すみません。10を超える長さになってしまいましたね。
流石にk以上は意地でもいかせたくなかったので今回の更新はかなり長めです(ξ∀`)

それにしても今回は、「ミスリア」最多記録を一つ作りましたよ。
なんと、同じ場面に名前のあるキャラが7人登場しました。むしろ既出全員じゃないですか。全員を把握し続けるのとても大変でした…もうやらんぞこんなことは…(苦笑


続きは12読み終えた人向けー

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13:59:03 | 挨拶 | コメント(0) | page top↑
12.k.
2012 / 06 / 01 ( Fri )
「お二人とも何だか辛そうです」
 独り言のように小声で、ミスリアは呟いた。カイルと神父アーヴォスのやり取りを指して言っている。
「兄弟、か……」
 すると同じく独り言のような小声で、ゲズゥも呟いた。何か後に続くのかと待っても、彼のは本当に独り言らしい。兄弟という単語で何を連想しているのか、表情を見ても想像できない。
 
「カイルにも、妹さんが居たそうですよ。五つ年下の」
「死んだのか」
 グラスの水を飲み干して、ゲズゥは無機質に訊いた。
「……お察しがいいですね。お母様と妹さんはカイルが修道士見習いになって間もない頃、魔物にかかってお亡くなりになっています」
 五年ほど前の話で、その時ミスリアはまだ彼と出会っていなかった。
 
「妹はお前に歳が近いな」
 そう言われてみれば確かにそうだ。カイルには妹のように接されたことがほとんど記憶に無いから、常に対等に話してくれたから、意識していなかった。
 
 厨房からまた女性が現れ、「失礼します」と言っていくつかの料理を運んできて手際よく並べている。
 
「お兄さん、左目の色珍しいですねー」
 女性は軽い調子で指摘した。
 ミスリアは小さく呻いた。そういえばゲズゥの包帯が外れている。店まで来る道中、誰かに見咎められれば問題になりそうだったけれど、誰ともすれ違わなかった。
 
 今はなき「呪いの眼」の一族が住んでいた村はラサヴァから近い。ルセナンの妻は事情を知っていそうなものの、知らないふりをしているのだろうか。
 入り口の扉の軋みによって、短い沈黙が破られる。
 
「おかえりなさい、アナタ」
 夫を迎え入れる彼女の声は明るい。
「おうただいま」
 役人ルセナンがカイルたちのテーブルの椅子を引き、腰掛ける。
 
 彼らの分の食事が揃うのを待って、神父アーヴォスは身の上話から静かに語り出した。
 
_______
 
 兄上は私の憧れでした。
 ここよりずっと北の不便な田舎村。生まれつき体の弱かった私を守り、気分が悪くて外に出られない日は私の代わりに駆け回り、いつもたくさんのお土産話を持ってきてくれたので、不自由に思うこともありませんでした。
 
 両親の農園を手伝いながら慎ましく暮らしていた私たちの元に、ある時教団の一味が通りかかりました。慰安の旅を続ける聖人様たちは、聖気を受け賜わり続ければ私も元気になれると、仰ったのです。ならば聖人を目指すと、兄はその時に決心致しました。
 自らの足で村を去る姿を羨ましく想いながらも、私は兄上の教団入りを応援しました。
 
 数年後凛々しくなって戻ってきた兄上は、幾月かけて私に完全な健康を取り戻させてくださいました。あの時の感動は何年経っても忘れられません。
 私も奇跡の力を望みました。
 けれどもどうしてか、兄上にはあっても私には聖気を扱う素質がまったく無かった。
 
 ――アーヴォス、気を落とすな。聖人になれなくても他にいくらでもご奉仕をする方法はある。
 ――そうですね。では私は教役者(きょうえきしゃ)となって社会に貢献します。
 
 受け入れるしかなかった。
 
 私の心にさざなみが立ったのはそれからいくらか後のことでした。
 兄上はある魔物討伐の旅にて知り合った魔物狩り師の女性と、恋に落ちたのです。
 聖人・聖女に配偶者は許されません。その女性と結婚するために、兄上は聖人の位を返上しました。
 
 どれほど妬ましかったことか!
 私がいかに切望しても決して手に入れられない物を、いとも簡単に手放したのです。兄の選択は私には浅はかに見えました。家庭を守りたいという兄上の主張に私は納得できなかった。
 
 ところが五年前。またしても兄上に大きな変化が起きました。そう――カイル、君の母上とリィラのことだよ。気の毒だったね。
 
 義姉上とリィラを失ってから兄上はどこかおかしくなりました。今まで以上に教団に傾倒し、妻と死別したことによって特別に修道司祭への道を進む許可を得たのです。教区司祭である私と違って今後の一生を修道院で過ごすでしょう。私は兄上が同じ司祭になると知って、嬉しいよりも暗い予感しかしませんでした。
 
 そうして数年後。兄上がもうすぐ司教になると聞いた時、私は不公平を嘆きました。何故私は、自分と違ってこれほどまでに才ある兄の後に生まれなければならなかったのか。羨望のあまり、今までに受け取った多くの恩さえ忘れそうでした。
 
 私は、「忌み地」付近への配属を自ら志願しました。
 何か大きな手柄を立てたくなったのかもしれません。でも同時に、自分の原点であった故郷みたいな村や町に何かをしてあげたかった。そうすれば心安らげると思ったのです。
 
 自分から問題を起こそうと考えたのは、ある時の偶然に始まりました。
 死者の魂が溜まりやすい場所に居て、水晶を誤って壊してしまったのです。封印されていた中の瘴気が解放され、数時間のうちに魔物が溢れると予想がついたので、魔物狩り師を呼びました。予め魔物が出没する位置を知っていたのでうまく彼らを導けました。
 
 その後、彼らと町民が向けてきた感謝や尊敬が、どうしようもなく心地よかったのです。
 味を占めるべきではなかった。
 それからのことは、カイル、君の想像している通りだと思う。魔物の発生を密かに促してはタイミング良くその場を救う、を繰り返した。
 
 セェレテ卿を誘ったのは、単に彼女が私のしていることに勘付いたからであって、口をつぐんでもらうために巻き込んだことになりますね。せっかく協力者ができたので、新しい手法――流行り病のことです――を試してみました。セェレテ卿はこのやり方がうまく行けば、他の町でも実行して、全て第三王子殿下の手柄に仕立てようと企んでいたようです。
 
 上辺だけでも私が活躍していた姿を、なんとしても兄上に見せ付けてやりたかった。しかし兄上は俗世との縁を切った修道士の身。面会を願っても、手紙を出しても、返事はありませんでした。
 叶わないならばと、代わりに私は甥を呼び寄せたのです。憎くも、聖人と成り得た彼を。
 
 カイル、私は君に止めて欲しいとか、助けて欲しいとか、そんなことは考えなかったよ。他の者と同じ尊敬の眼差しを、兄上に似た君の顔に見たかっただけなんだ。
 目論見は失敗に終わったけれど。君の表す尊敬は熱っぽくなくて、ただ暖かかった。
 
 でも振り返れば共に暮らした数ヶ月間は、それなりに満ちていたと思う。
 
_______
 
 叔父が口を閉じ、辺りに重い空気が満ちた。話し終えた本人だけ、やけに穏やかですっきりした顔をしている。
 カイルサィートは天井を仰いだ。ちょうど、蜘蛛が視界を通りかかる。
 
「以上が、貴方の本音ですか。叔父上」
「そうだね」
「……本当に?」
「君は何を疑っているんだい? この期に及んで嘘をついたりしないよ」
 叔父の笑い声に偽っている様子は無い。
 
「さて、それは判断しかねますが。僕は、物の本質を見詰められる人間を目指したいと思います」
 天井から目前へと視線を戻した。
「いいんじゃないかな。君なら達成できると思うよ」
 本心から言っている風に聴こえる。
「でもオルト王子の言葉を借りると、今は自分の望むように解釈します。叔父上はやっぱり後悔していたから僕を呼んだんです」
 カイルサィートはにっこり笑った。
 
「貴方は言い訳をしませんね。誰かの所為だとは言わずに、始終、自分の気持ちと行動の責任を自分で受け止めようとしています。
 結局実害が残ったのは、最後の疫病騒ぎだけでした。それも、もともとは死に至らないはずの病が数人の内で突然変異したもののようですね」
 既に調べが付いている。命を落とした最初の四人は体質的に共通点があって、同じ病状でも過去に例の無い結果だ。
 
「人が死んだのは確かなのだから、その違いにはあまり意味が無いよ」
「それでも叔父上に悪意が無かったことは、教団への報告書には記させていただきます。町長や役人方の結論がどうであっても、教団からの罰は逃れようが無いでしょうけど」
 予想としては、残りの一生を閉じられた空間でひたすら償いながら過ごすことになると思う。でももしかしたら報告書の内容次第で多少は罰が軽くなるだろうか。書いたのが対象の甥となると信憑性を疑われるかもしれないけど、試してみるのに害は無い。
 
「……どうしてかな、君は意外と私に甘い気がする」
「数少ない肉親ですから、普段より若干やさしめですよ。ここ何年かで、僕の誕生日を祝ってくれたのは貴方だけでしたし」
 肩をすくめて答えた。ルセナン夫婦が驚いた顔を見せているが、事実なのだから仕方ない。
 
「なるほどね。…………もう、確実に兄上に会えないな」
「あまり気にしないで下さい。僕だってほぼ五年は会えてませんし、今後も会えそうかあやしいです」
 しばしの間、笑い合った。
「すまなかったね、色々と」
 叔父は一度深く礼をした。某商社の威嚇という名の暴行についても詫びている。
「いいえ。残念には思いましたけど、もういいです」
 カイルサィートは立ち上がった。
 続いて立ち上がった、自分とそう変わらない身長の叔父を、肩から抱き寄せる。
 
「二度と会うことは無いでしょう。でも、どこに居て何をしていても家族である事に変わりありません。どうかお元気で」
「ありがとう。私は悔いるばかりの人生になりそうだけど、君の進む道には幸多からん事をいつも願うよ」
 声が微かに震えている。叔父の腕は縛られたままだが、僅かな動きを感じた。自由であったならば、きっと抱き返してくれただろう。
 
「短い間、お世話になりました。さようなら、アーヴォス叔父上」

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13:22:40 | 小説 | コメント(0) | page top↑
12.j.
2012 / 05 / 29 ( Tue )
 何度か顔を合わせた程度で、もともとそんなに仲は良くなかった。だから名指しで呼び寄せられた時、目には見えない別の意図があるのではないかと真っ先に疑ってしまった。
 敢えて応じることを選んだ。理由は単純である。家族だから、何かしら手助けになれるならと思ったからだ。
 
 四人座れる大きさの四角いテーブルにて、カイルサィートは叔父と向き合い、テーブルの上で両手を組んで様子を伺っている。料理屋の店内は外からの日差しで明るく、それゆえに大分暖かい。
 
「失礼します~。せっかくなんで、藻入りスープでもどうぞ。健康にいいですよ」
 人の良い笑顔を満面に広げて、髪を結い上げた女性が間に入った。丸い盆から底の浅いボウルを下ろしている。
 キュウリをはじめとする調和の取れた香りを発するそれを見下ろす。クリーム色の液体に所々鮮やかな緑が混じっているものだ。
 
「暑いだろうと思って冷やしたスープ持ってきましたよ。昼時だし、食事もされます?」
 同じようにボウルを下ろして、役人ルセナンの妻たる彼女は隣のテーブルに座すミスリアとゲズゥの方に、声をかけている。
 チラリとこちらに問いかけるミスリアの目に、カイルサィートは頷きを返した。
 
「ではお願いします」
 ミスリアが笑顔で受け答えた。注文の内容を細かく話し合ってから、女性が厨房の方に戻った。
 
 ミスリアの向かいに座るゲズゥがすかさずスープに手をつけた。食器などを使わず、ボウルごと空いた片手で持ち上げて啜っている。一方でミスリアは、木製スプーンを駆使して少しずつ口に運んでいる。どちらかというと乳状に近そうなスープだ。
 二人を横目に眺めてカイルサィートは束の間、和んだ。
 
「……少し、僕の話をしましょうか」
 視線を前へ戻し、自分のスープにも手を出してから、そう切り出した。
「――うん?」
 拘束されたままの叔父の前に、ボウルは置かれていなかった。多くを語られなくとも、ルセナンの妻は状況を大方把握したようだ。
 
「聞いてくださるだけで結構ですよ」
「ではそうしようか」
 叔父の揺るがぬ笑顔に、落ち着き払った態度に、カイルサィートはもの悲しくなった。しかしそんな気持ちは顔には出さず、淡々と語り出す。
 
「どうして他の誰かではなく、僕に声をかけたのか、ずっと考えていました」
 定期的に連絡を取っていた訳でもなかったし、こと「忌み地」の浄化に関してカイルサィートは実践経験が少なかった。ミョレン国との縁も浅く、わからないことだらけの人選であった。
 
「本当は、止めて欲しかったのでしょう?」
「何を?」
「……今更ごまかしても、仕方がないと思いますよ」
 叔父ののんびりとした口調に、カイルサィートはため息をついた。
 
 はじめは何も裏が無いことを願いながら、叔父の手伝いをしていた。教会の業務や運営に手を貸し、ラサヴァの町人や他の近隣の村の民を支えた。時には魔物の討伐隊にも加わった。元はあまり親しくなかった叔父の園芸をも手伝ううちに、打ち解けられた。
 それがいつから、歯車が狂いだしたのだろうか。或いは最初からかみ合っていなかったのかも知れない。
 
 何故、いつ、気付けたのかというと、今となってはよくわからない。叔父の頻繁な外出を変に思った頃から? 教会の参拝者との接し方に違和感を覚えたから? 討伐に向かった日にのみ決まって魔物が異常に多く現れるようになってから?
 きっかけはきっと小さな何かだった。気付いた後は、ひたすら執拗に事実を追い求めた。
 
「追い詰められなければ認めないだろうと、本当はどうしてこんなことをしたのか話しはしないだろうと、思いました」
 人の心の澱(おり)は幾重にも巧みに隠されているものだ。浮上させるためにはそれなりの準備がいる。
 
 当面の問題は、相手が追い詰められたと感じるか否かにある。カイルサィートにとっては、この場合は動機を知ることが一番大事だからだ。
 
 今のところまだ叔父の作り笑いに変化は表れない。隣のテーブルの二人はというと、さりげなくこちらの会話に意識を向けている。
 カイルサィートはそこでスープを一口すくって味わった。ヨーグルトをベースにしたさっぱりとした味わいが更なる食欲をそそる。
 
「美味しいです。僕は叔父上の作る鶏がらスープも好きでしたけど」
「もう私よりも君の方が美味しく作れるんじゃないかな」
「かもしれませんね」
 スプーンを置いて、カイルサィートはそっと笑った。思い返せば家事は二人で手分けしたけど、お互いに教え合うことも多かった。もう、その日々も終わったのだと思うと寂しい。
 
「あなたが……」
 一呼吸挟んで、目を合わせた。自分と同じ色の琥珀色の瞳からは、感情が読み取れない。
「……僕を選んだ理由は、父上と関係がありますね」
 そこで初めて、叔父が瞬いた。曇ったように読み取れなかった瞳に異変が表れる。
 
「父は兄弟仲が良いと言っていましたけれど、双方ともに共通した感情でないことは、子供心ながらに知っていましたよ」
「……カイル、君は昔から聡明で鋭い子だったね」
「ありがとうございます」
 叔父の琥珀色の瞳もいつしか物悲しさをたたえていた。

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