ヨテイ
2013 / 07 / 24 ( Wed ) 執筆
Assassin's Creed(今更ながらはまっている) あまり会わない友だちとロッククライミング (ジム 滅多に会わない友だちと近場の低い山をハイキング ネットで背景画漁ってハァハァする(?) あと何があるかしら。家事…掃除はまあ普通として。たまには何か凝った料理を…? ところで人生の選択って難しいよね あばばばば 物事を決めるのが苦手な私は流れるように社会を浮遊したいがそうは行かない。 降って沸いたチャンスはやっぱり飛びつくべき… ナキロス編は思ってたよりあっさり終わりそうです。 番外編とかでまだまだ出番ありそうですけどねー |
【キャラ絵】 ミスリアは少女マンガ
2013 / 07 / 20 ( Sat ) ……冗談ですが、絵風が少女マンガな少年マンガだと私たちであーでもないこーでもないと論争(?)
えびからもらった絵をいくつか公開っ! まずかいるたん。とっても優しげなお兄さんに仕上がってます。みんなのお兄さん。 正式ローマ字つづりを Kailsayït または Kailsayeet とするでしょう。それだと苗字Doucetと発音が合わない、って苦情は受け付けてません^^ そしてあずりん。 やべえ 美人過ぎてつらいぜ 姉御 そういえば目次をお気に入り登録して見に来てくださってるお客様がいるようですが、私はたまに最新話更新した後に目次更新し忘れたり目次が更新できない場所(職場とか・ω・)にいたりするので気付くの数日遅れますよ~。 |
24.d.
2013 / 07 / 17 ( Wed ) 「そうですね……。聖地が総てこのような危険を伴う場所でないと願っています」
ミスリアは苦笑を返した。 崖から落下していれば大怪我は免れず、もしかしたら河に落ちて溺れていたかもしれない。今更遅れてやってきた寒気に、身体が震えた。 何より、あの誰かに強制的に意識を占有されていたような感覚。自ら歌って魂を繋げた場合とは違う、実体の無い重圧。 それは同時に聖気の清らかさと暖かさを伴っていた。近い経験を探すなら、聖女としての修行の最終段階が似ているけれど――。 ――違う。あの時にも感じた圧倒的な存在感、それを今回はもっと身近に感じた。しかし決して喜ばしいと思えるような近さではなかった。 「……こわい……」 気が付けば呟いていた。 目を伏せて椅子の上で身を丸めた。何故だかわからない、ただ、先に進むのが怖い。 覚悟は決めていたはずなのに。わけもわからず揺らぐ心を、無視できなかった。 「私は弱いですね」 「知ってる」 か細い独り言に、変わらず落ち着いた声が相槌を打った。ミスリアが何に対して恐れを抱いているのか、彼は見通しているのだろうか。 「……軽蔑しますか?」 組んだ腕の中に顔を埋めた。 「別に。それほど迷惑はしてない」 無感動な声だった。気遣いなどではなく、本当に、ありのままの事実を話しているのだろう。それほどって言うからには、多少はしているはず。 「怖いならやめるか」 「いいえ! 私の気持ちは関係ありません、必ず目的を果たします」 ミスリアは素早く頭を上げて振り返り、対するゲズゥは、左右非対称の両目を一度瞬かせた。 「お前の目的は蝋燭の壁と関係があるのか」 「!」 彼が指す物に瞬時に思い当たって、怯んだ。 揺らめく炎の列が脳裏をよぎる。 よく考えたら隠す理由は無いはずである。数瞬の間、ミスリアは言葉を探した。 「そう、ですね。あの蝋燭立ての列は、旅の途中で消息を絶った聖人聖女を弔うものです」 ゲズゥはただ目を細めた。 一度深呼吸してから、ミスリアは続けた。 「彼らの為に私は旅に出ました」 静かな会議室に、自分の強張った声がやたら響いたように感じられた。 _______ 聖堂に並んだ蝋燭の列の、蝋燭立てに彫られている文字は、消えた人間の名前を表している。 隙を見て司祭に訊いたらそう説明を受けた。 ゲズゥ・スディルは木の枝に膝からぶら下がり、腹筋を鍛えつつ考え事をした。 真夏に相応しく気温の高い午後だったが、木陰に守られているためいくらか涼しい。湿気が多く、運動による汗が乾かずに滴った。全身がべたついて気持ち悪いが、南東生まれのゲズゥにとっては慣れればすぐに忘れられる程度の問題だった。 腹筋に力を込めて上半身を折り曲げる。その間の筋肉の引き締まりが、苦しい。同時に、踏ん張る一瞬には頭の中が驚くほど空っぽになった。体を折り下げては繰り返す。 数十の繰り返しを経てから、力を抜いて再びぶら下がった。着る者と一緒になって逆さになっているシャツを使い、顔の汗を拭う。 『私はっ……! 世界を救いたくて旅に出たんじゃありません!』 以前聞いた叫びが、ここぞとばかりに記憶に浮かび出た。 ――世界の為でないのなら、何の為に。 消息を絶った聖人聖女、「彼ら」と言ってもミスリアが泣き崩れたのはたった一つの蝋燭立てに目が留まった時だ。ならばその人間が特別であると断じていいのだろう。 件の蝋燭の位置は覚えていた。それについても司祭に訊いたら、そこに彫られた名が「聖女カタリア・ノイラート」であると判明した。 そうと聞いて、多少の仮定を立てることができた。 「もし……」 苗字は当然のこと、カタリアとミスリアでは名も似ているし、親類と考えて間違いないだろう。 「もし、そこの方。えーと……」 まさか消息を絶った人間を探そうと―― 「あの! お願いがございます!」 さっきから呼び声が自分に向けられているのだと、ゲズゥはようやく気付いた。何度か瞬き、逆さの映像を分析する。 全身を質素な衣で包んだ若い女が視界の中心に居た。作業用の被り物なのか、頭にはバンダナを巻いている。 「あの、お邪魔してすみません。手伝っていただけませんでしょうか」 言いにくそうに女はもじもじした。 「…………」 ゲズゥはとりあえず両腕を伸ばした。逆立ちになるよう樹の上から降り、次いで足を落としてしゃがむ形に着地した。 |
簡易紹介 サブキャラ
2013 / 07 / 16 ( Tue ) このひと抜けてるよ~ とかこの人も見たい~ があったら遠慮なく教えて下さいね★ シャスヴォルの兵隊長 黒髪癖毛+体格が良い。 国境に配置されている男。執念深くゲズゥたちを狙う。 ゲズゥの母 セミロングの真っ直ぐな黒髪、吊り目黒瞳の美人。 誇り高く、人をまとめたり行事を仕切るのが好き。 リィラ 蜂蜜色の髪、おかっぱ。 カイルサィートの妹。魔物に殺された。 ゲズゥの従兄 死に際にゲズゥにとある約束をさせ、その人生を縛った。 生前は普通の快活な兄ちゃんだった。 ユリャン山賊団頭領 熊をも素手で倒せる巨躯。 横柄で、生まれながらの支配者。 貴族の五男坊 山賊が捕らえていたどこかの貴族の息子。 育ちが良くて礼儀正しいけど、気が弱い。 教皇/ヴィールヴ=ハイス教団最高責任者 小柄、華奢、金髪碧眼。 つかみどころの無い性格。役割に対する意識は高い。 ナキロスの神父 天然パーマ、細目で瞳が見え難い。 のほほんとした外見だが中身はしっかり者で面倒見がいい。 ラノグの師匠 前歯が欠けた、お調子者のお爺さん。 鍛冶師としての腕は最高クラス。 設計士 モノクルをかけた三十路。灰茶色の口髭とストレート髪。 テンション低い雰囲気にして、実はくすぶる熱血漢。 |
une autre petite annonce
2013 / 07 / 13 ( Sat ) また宣伝で申し訳ない。
そういえば先月から「小説家になろう」にて「聖女ミスリア巡礼紀行」を投稿しておりまして。 ま~ 既にブログやサイトで読んでくださってる方々が今更わざわざなろうで読みたいのかはわかりませんけど、あっちのインターフェイスが気に入っているとか、ミスリアが縦書きPDFで読める!よっしゃ! と思ってくださる方もいるかもしれないし…w (それにしても縦書きは嬉しいけど、章や話別にPDF作ってくれないかな…どどーんと一つのファイルにして開くのもいいけどあんまり長い物語だと あばばば) なろうは推定読了時間とか合計文字数が見れるのが個人的には楽しいです。 あわせて応援よろしくお願いしますん( ̄∇ ̄) 皆さん良い週末を! <<今回の余談>> 敬語の使い分けとか私には無理げーすぐる。教皇とみっすんの会話が一杯一杯なんですけど_OTL 丁寧語で見逃してくださいね(( 一応、教皇を聖下じゃなくてげいかにしたのは私なりに理由があります |
24.c.
2013 / 07 / 12 ( Fri ) ディーナジャーヤと言えばアルシュント大陸で最も広大な領土を誇る、大帝国である。過去数度にわたる大規模な戦によって土地を勝ち取り、更に三つの属国を従えている。 「でもあの城はもっと――」 「貴女がご存じなくても無理のないこと。数百年前、聖獣が飛び立つ直前まではクシェイヌ城は忌み地でした。人間同士の激しい闘争の歴史を背負った場所でしてね、聖獣によって浄化された後に聖地に変わったのですよ」 「では私が視たのが忌み地だった頃の姿ですか?」 「同調、できたのですね。よかった。おめでとうございます、聖女ミスリア。貴女はもう得るべきものを得たのです。次に何をすべきかおわかりでしょう」 (まだ不安も謎も残っているけど……) 「大丈夫ですよ。次の聖地に行けば、もっと色々なことがわかるでしょう。聖人聖女たちの道のりが重ならない理由も含めて」 「はい、猊下」 「あの、ところで今は夕方ですよね。私はどれくらいの時間、意識を失っていたんですか?」 隣の神父と顔を見合わせた後、猊下がその柔らかい微笑みをミスリアの背後に立つゲズゥへ移す。 「三十分くらい崖っぷちで突っ立ってた」 「よろめいて、膝をついて……しばらくして倒れた。二時間経ったら起き上がって、草の中をのたうち回って、這いずって、また意識を失った。それからは起きるまで動かなかった」 いいえ、とミスリアは頭を振った。 「スディル氏、あれほど手を出してはいけないと申しましたのを、ちゃんと守って下さったんですね」 (きっと猊下に言われたから動かなかったんじゃなくて、自分なりの理由があったのね) 「さて、私はそろそろ失礼します。聖女ミスリア、貴女はまだこの町に滞在されますよね?」 「ではまた後ほどお話しましょう。別件について、貴女の意見をお聞きしたい」 「ええ。今晩はゆっくりお休みなさい」 そうして二人は会議室を辞した。彼らは他に仕事が残っているのだろうか。今夜は晩御飯の席で顔を合わせることが無いだろうと予感がした。 (最近こういう流れが多いわ。これって、体力つけるべき?) ふと目が合うと、意外なことに、彼の唇が動いた。 「お前は、よく崖から落ちなかったな」 |
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2013 / 07 / 12 ( Fri ) よく考えたら英語での「宣伝」という単語は日本語のようにマルチパーポスに使わないよな。(どうでもいい
えー……とですね ここの絵を担当(?)しているポップコーンえびがミスリア専用についったアカウント始めたのでよかったら遊びに行ってね★ https://twitter.com/mithryaaa 主にここに載せるほどでもないな、って感じのらくがきとか設定が定まらない内の段階の絵とかに利用する予定だそうです。 私はツイッター使わないので見る専門ですがー 余談 最近雨降りすぎ。そのくせ車についた謎の樹液っぽいものは固まってとれない… どうしよう、WD40使うべき??? |
らくがき天国5
2013 / 07 / 10 ( Wed ) |
24.b.
2013 / 07 / 07 ( Sun ) 朝、とある問いの答えを求めて聖地へ赴いた。 聖地は最初に夢で視た通りの穏やかな場所だった。真っ白な綿雲に空は覆われ、草花は微風に吹かれて揺れる。野花の周りを蝶や蜂が元気に飛び回っている。 四百年以上前――かつて聖獣が大陸を浄化する為に飛翔し、途中でこの岸壁を選んで休憩をしたと伝えられているのが、この地である。 まさに偉大なる聖獣が降り立ち、丸一日の休眠を取ったらしいとされる崖に、ミスリアは向かっていた。 空気は澄み渡り、聖気の暖かさとは異なる、何かの透明な存在感が周囲に満ちていた。 ミスリアは五感を研ぎ澄ませて探した。一歩踏み出すごとに、僅かな変化でも感じ取れるように努めた。けれども未だに問いの答えに近づけそうにない。 昨夜、ミスリアにその問いを課したのは教皇猊下だった―― 「聖女ミスリア、我々が何故聖地を巡るのか、わかりますか?」 「聖獣様の安眠の地へ辿り着けるよう、繋ぎ合わせるべき情報を得る為ですよね、猊下」 「ええ。その認識に間違いはありません。教団でもそのように教えているのでしょう。ですが、言い方に多少の語弊があるかもしれませんね」 「語弊ですか?」 「情報がどのような形をしているものと考えますか? 地図の中の隠し文字、秘術によって作り上げられた迷路のような道……そういったカラクリや仕掛けによって偽の情報の中に真実の断片が隠され、ばら撒かれていると学びましたか?」 「はい。教団ではそのように……」 「確かにそれらもまた、実在するものです。ですが、その実、聖人・聖女であればそんな方法に頼る必要はありませんし、わざわざ聖地を訪れる理由にはなりません。『聖地を巡れ』以外の指示は受けていないでしょう?」 言われてみれば、そうだった。 聖地のどこに次に向かうべき場所の手がかりがあるのか、まったく聞いていない。教会の人が知っているのか、書物を調べればいいのか、詳しい指示は受けていない。 そもそも旅に出る聖人・聖女が皆誰しも他の誰かと道のりが重ならないと言われているのが妙である。 真実の情報を探す使命が共通し、それを見つける方法――対象に祈りを捧げ、水晶で照らす――までもが同じなら、少なくとも何人かは似た軌跡を辿るはずだ。 ミスリアはこれまでに教えられた以上の真実に思いを馳せたことは無かった。 ただ漠然と、偶然の働きで誰も同じ行路を辿ることが無いのだと思っていたし、よくわからない点は実際に聖地を巡礼してみれば明らかになるだろうと想像していた。 なら聖地で得る情報とは本当は何か、と訊ね返すと、猊下はやはりこう答えた。 「まずは行ってみることです。こればかりは、誰かに伝え聞いただけでは理解が及ばないでしょうから」 ――したがって、ミスリアは一人で崖上の草原に立つことになった。 背後、かなり離れた位置にゲズゥがどこかの樹に寄り添って様子を見ている。 彼はナキロスの神父と教皇猊下に絶対に聖地に踏み入れないよう言い聞かせられていた。理由は、魂の穢れた者が聖地に与えるであろう影響を怖れてのこと。聖女であるミスリアとて、入念に身を清めた。 そして何が起きてもミスリアが自力で戻ってくるまで決して手を出してはいけない、と猊下はきつく言った。 (何も起こらないまま岩壁の先端まで来てしまったわ) 足元に注意を払いつつ、ミスリアは崖下の川を見下ろした。なんて澄んだ水だろうと思う。 瞬間、全身に何か強烈なエネルギーが流れ、髪の一本一本までもが浮上した――ように感じられた。次いで心の内にとてつもない重圧を感じた。 今までの人生経験の中で、この重圧に一番近かったのは魔物と魂を繋いだ時だ。最近だと、ゲズゥの故郷で彼の母だった魔物の記憶を覗いたのがいい例である。 (でも……もう一つの、感覚は――聖気……!?) 普段、自分が展開している聖気や他者から受けたことのある聖気とは比べ物にならないほどの強い力と流れである。 ふいに映像が脳内に浮かんだ。 (谷? 城……塔? 山、と泉……) 同時にいくつものぼやけた映像が重なったため自信は無い。どの場所も、これといった特徴を読み取れなかったので認識できなかった。 そうしてその後に、廃城のイメージを視たのだった――。 ミスリアがひととおり話し終えると、一同は教会の一室に移動していた。小さな会議室である。 「私が視たのは黒ずんだ崩れた廃城でした。堀があって、死体の積み重なった……。でもそんな場所は、現在保護されている二十九の聖地にありませんよね」 一連の出来事を思い出しながら、次の聖地の手がかりをビジョンとして視ることが情報を得る方法では、とこっそり仮定を立てていた。だが、あのイメージの性質を思えば、これは見当外れだったのではないかとミスリアには思えてきた。 「ありますよ」 「え?」 あまりにあっさりと否定されたので、思わず頓狂な声が出た。 「貴女が視たのは、今とは時を同じくしない聖地の姿です。ディーナジャーヤ国のクシェイヌ城ですね」 教皇猊下はへにゃりと笑った。 |
小説書きさんを問い詰めるバトン
2013 / 07 / 06 ( Sat ) サイトの方の相互リンク様 http://einbidung.web.fc2.com/ からバトン拾いました。
結構楽しかったですん 薄いですが、ネタバレかもしれない話を含みます(8番)。 続きからどーぞー |
24.a.
2013 / 07 / 05 ( Fri ) 赤黒い空を背景に、見覚えの無い古城を見上げていた。むしろ、廃城か荒城と呼んだ方が似合うような歪な形である。 人の気配はない。烏の鳴き声を除けば完全な静謐が辺りに流れていた。 城の端にある瓦礫の山にて数羽の烏が戯れ、城の壁は蔦に覆われている。どこからか腐臭が漂っている気がした。烏たちが突付いているのは或いは何かの骸であるのかもしれない。 瘴気が周囲に充満しているのは明らかだ。ならば、此処は忌み地だろうか。 低い丘の上で、堀に囲まれた黒ずんだ城。これまでに見てきた絵画や記録を思い返しても、これに該当するものは無かった。 ――それにしても、おかしい。 自分はいつの間にこんな、まるで記憶に無いような地を訪れたのか。これより以前に何をしていたのか、どうやっても思い出せなかった。 「もしかして夢?」 その言葉が舌を転がり落ちた途端、何かが足首を強く圧迫した。 「ひっ」 ひどく冷たい感触に全身が鳥肌立った。 鋭く足元を睨むと、そこには頭部の右半分がごっそり欠けた人間らしきモノが這っていた。 恐怖とおぞましさで声が出なかった。魔物、だろうか。生死をさ迷う人間、だろうか。 思わず、自由な方の足でソレを蹴った。足首にかかった力が弱まると、そこから逃げ出した。 しかしあろうことか自分は古城に向かって走り出していた。間違った判断だと頭の中ではわかっているのに、どうしてか体が方向転換できない。 かろうじて堀の前で停止した。 すぐに吐き気を催した。 堀の中は、腐敗した人の屍骸でぎゅうぎゅう詰めになっていた。 (夢なら今すぐ覚めて――!) 心の中の叫びに応えてのことなのか、世界がフッと消えて別のものに入れ替わった。同時に意識から何かが抜け落ちたような、切り離されたような、妙な手応えを感じた。 掌に触れる感触はひんやりとしていて柔らかい。視界の半分は緑色に輝いている。この匂い、草だ。 目に映る空はやはり赤いけれど、つい今まで見上げていた重苦しい色ではなく、茜と薄紫が入り混じった優しげな模様である。これは夕暮れ時の色。 どうやら夢の中と違って現実では自分は横たわっているらしい。 ゆっくり身を起こすと、目に見える世界を野原が満たした。 「聖女ミスリア。気が付きましたか」 離れた場所から、柔らかい声が響いてきた。気遣い、慈しむ声音である。 「あの……此処はどこで、私は……」 だれ、と問いそうになって、やめた。 (ミスリア……そう、だわ。私はミスリア・ノイラート。教団に属する聖女) 自分が身にまとっているのは聖女の着る純白の衣装で間違いなかった。 そこまではわかる。が、そこからが曖昧にしか思い出せない。 呼びかけてきた声の主は両手を組み合わせた丁寧な立ち振る舞いで、微笑んだ。 真っ直ぐな黄金色の長髪が風にそよいでいる。男性だとは思うけれど、小柄で華奢な体型だった。ぼんやりとしか姿が確認できないほどに、その人は離れた位置に佇んでいる。 「では、私が誰だかわかりますか?」 彼はミスリアの問いかけには答えずに別の質問を返した。 「……私にとって身近な方でしょうか」 失礼な物言いと思いながらも、ミスリアはそのようにしか返せなかった。見知った人間であることは薄っすらと感じられる。 「いいえ。あまりよく知らないかもしれません。困りましたね」 金髪の男性は隣に立つ別の男性を振り仰いだ。裾の長い黒装束は、司祭の位を持つ者が着る正装に見えた。こちらの司祭の人は金髪の男性以上に、ミスリアには知らない人に思えた。 (ところでどうして彼らはあんなに離れているのかしら) 助け起こして欲しいとまでは思わなくても、この距離の取り方は不自然に思えた。 二人の更に後ろに、もう一人男性が立っていた。 遠目にも長身とわかる、黒髪の青年だ。両腕を組んで静止している。 「ゲズゥ!」 より自分にとって身近な人間の姿を認めて、ミスリアの脳は冴え渡った。 思い出した。 (私は巡礼の旅をしている。そして、最初の聖地である岸壁の上の教会を訪れた) でも、それならどうしてあんな不吉なイメージを見たのだろう? 聖地とはいったい何であったのか―― 前触れもなく息が苦しくなった。襟元を片手で押さえ込む。 ひとつの想いが、目的が、全身を占め付けていく。他のことを考えようとすれば頭が激痛を訴えた。 ――行かなければ! あの地へ! 直ちに! 行くのだ! 「聖女ミスリア」 力強い、澄んだ声に、ミスリアはハッとした。 「落ち着いて。まずはこちらにおいでなさい。一緒に順を追って、思い出して行きましょう。あなたが経験した一切を」 「げい……か……」 尚も混乱する心を落ち着けて、何とか立ち上がった。ゲズゥが、身動き取らずにじっとこちらの動向を見守っている。 はい、と声を絞り出して、ようやくミスリアは三人に向かって一歩踏み出した。 |
びゅーん
2013 / 07 / 02 ( Tue ) 今晩は実家に帰ります。
飛行機二時間の旅~ 希望としては明日か明後日の内に次話を更新したいところです。 パツキン教皇さま(腹黒疑惑)の出番あるよ☆ <需要あるのか果てしなく謎ですが。 彼の護衛の兄弟は多分二人がかりでかかればゲズゥも苦戦するレベルに強いです。 おそらく連携の巧い人らです。 ヨンフェもラノグもあんまり出番は無いですが、気に入ってます。 ナキロスの町だけで番外編いくつか書けそうな勢いですね。 あくまで本編に集中したい私ですが、なんか世界観が発達しすぎてきたような…… 勿論どっぷりはまれる世界を創りたくて書いてますが。 このままでは完結した後もこの世界で遊んでいたくなるかも……。 |
23 あとがき
2013 / 06 / 29 ( Sat ) Mm...おまたせしました、23終了です。
なんとか7月になる前に終わらせられましたOrz 最近眼精疲労がぱねぇです。 もうやだ山に引っ越して手書きで小説を続けるしかない……。 ではつづきへどうぞん。 |
23.g.
2013 / 06 / 29 ( Sat ) 賊であった以上、人を恐喝した事も、拷問にかけた事も、殺した事もあるはずだ。生きる為だったとしても、世間が認める道徳に反しているのは事実である。何より、穢れた手で家族に触れていいものか迷う気持ちは、ゲズゥには自分の事のようによくわかった。自分がソレをするのはどうでもよくても、大事な人に伝染させたくはない。
「知った時にどう反応するのか、それが怖いんだよ。臆病者で情けないだろ?」 紫色の双眸が映し出す哀しみは深い。 その問いに、少女はぶんぶんと頭を振って否定した。 「そんなことありません。過程がどうであれ、貴方は危険を冒して行動に移しました。大切な人と再会できた今では、それを『遅すぎる』と批判できる人はいないはずです。彼女にすべてを打ち明けるのが正しいのかどうかまでは私にはわかりませんけど……」 語尾に向けて声が沈んでいく。 「でも、イトゥ=エンキさんがお姉さんの心の動きを恐れるのは人として当然のことだと思います。情けなくなんてありません」 「はは、ありがと。気休めでも嬉しい」 エンがミスリアの頭を優しく撫でると、ミスリアは益々複雑そうな顔をした。エンはミスリアから手を放した後はまた片手をポケットに突っ込んだ。 「……それはそうと、いい加減、謝りに行くかな」 時計塔の方角を見上げてエンは呟いた。 「多分、夕飯時にでもまた会うだろ。じゃーなー」 既に踵を返し手を振るエンに対してゲズゥは「ああ」と答え、ミスリアは「頑張って下さい!」と答える。 人混みに溶けて消える後ろ姿を見送った後、ゲズゥとミスリアは町の散策を再開した。 目に映る景色や道を記憶の内に刻みながら、二人は歩を進める。 「お昼、どうします?」 先を歩いていたミスリアが、振り返って訊ねた。言われてみれば、いつの間にか胃袋が空洞と化していた。 「食えれば何でもいい」 「ではあちらに見えるカフェで――」 道の向かい側を通る小さな集団を目に入れて、ミスリアは露骨に後退った。そして恐怖に鋭く息を呑んだ。 「え? な、何か問題が?」 向かい側を歩く男がこちらに気付いて、困惑している。だが少女の目が釘付けになっていたのは人間の方ではなかった。 三頭の山羊だ。 黒い毛皮のそれらは縄でできた首輪によって繋がれ、まるで飼い主の男に散歩をさせられているようにも見えた。実際は、男は山羊たちを売る為に移動させているのだろう。 「何でもない」 顔面蒼白で硬直したミスリアに代わってゲズゥが口を開いた。強引にミスリアの腕を引いて歩かせる。面倒臭い状況に発展しないようにさっさとその場を去った。 カフェまでの間、ミスリアは唇を噛み締めたまま何も言わない。何か苦々しい思い出に囚われている――山羊から連想できる、何か。 ユリャン山脈付近の集落。 瞬時に脳裏に浮かんだのは、無残に殺された赤い髪の少女。そう、その晩に襲ってきた異形どもは、身体の一部が山羊と羊の姿に似ていたのだ。 確かにあれは楽な退治ではなかったし、犠牲者も出た。 だが過ぎた事だ。トラウマという形で精神に影響を残していてはいずれ先に進めなくなるのも必至。普通に生活しているならいざ知らず、ミスリアは大きな目的を抱いて旅をしている聖女だ。 こんな調子で本当に聖獣まで辿り着けるのか。 ゲズゥがそれを思い悩むのおかしいが、多少の疑念が沸いた。 _______ ドタバタと走り回る七、八人の子供の渦中に、探し人は立っていた。ここは教会の二階にある、いわゆる「子供部屋」である。床には木馬や人形などのおもちゃが散りばめられている。 「こら! 土足で部屋上がっちゃだめだっていつも言ってるでしょ! 言うこと聞かないと今日はご飯抜きにするわよ!」 腕に三歳くらいの子を抱くその女性は周囲の子供たちに怒気を放った。 「うっそだあ」 子供たちは聞く耳持たない。 「いいわ。人間は三日くらい食べなくても、平気だものね。悪い子たちには緑期日まで何も食べさせるなって、皆に言っておくから」 「ええー。ヨン姉ひどいっ」 「わかったら靴脱いで! それと、食事の前はちゃんと手を洗うのよ」 はーい、と誰もが合唱する中、一人だけ部屋を飛び出す少年が居た。 「やなこった!」 「あ、待ちなさい――」 そこで更に説教を畳み掛けたかっただろうに、腕の中の子供が泣きだしたため、ヨンフェ=ジーディはあやす方に意識を集中した。 (ふむ。手を貸すか) さっきから廊下で静観していただけのイトゥ=エンキは、逃げ行く少年の足を引っ掛けた。少年は、どてん、と大きな音を立てて転んだ。我ながら単純な手段だ。 「なにすんだよっ」 転ばされた少年はイトゥ=エンキの足に殴りかかる。 「まーまー。ご飯三日も抜かれんのはマジでやばい。悪い事言わんから従っとけって、な」 イトゥ=エンキは少年を楽々と腕に抱えて、子供部屋に返す。抱えている間も何かと殴られたり蹴られたりしたが、気にならなかった。 下ろされた少年はふてくされながらも、他の子たちに合わせて靴を脱ぐ。皆はその後は部屋の片隅の水瓶に向かっていく。 ヨンフェ=ジーディのブルー・ヘーゼル色の瞳が、静かにイトゥ=エンキを見つめていた。彼女の肩に寄りかかる幼児は、眠そうな顔で親指をくわえている。 「…………えーと、ただいま」 なんとまあ、気まずい。ひとまず何か言おうと思って、無難な言葉を選んだ。今笑っていいものか自信が無いので、自分でもよくわからない顔になっている気がする。 「お帰りなさい」姉は眉根を寄せたが、応じてくれた。「言いたいことはたくさんあるけど。……お昼もう食べた?」 「や、まだ」 「作り置きで良ければ、温めるわ」 「ん。じゃーもらう」 ありがと、と小さく追加しておくと、ヨンフェ=ジーディは何も言わずに微笑んだ。 締め付けられる想いがした。 痛いのは喉なのか胸なのか、とにかく息が詰まった。微笑みを返そうにも顔の筋肉が言うことを聞かない。 一体それをどれ程の間、切望したことか。 彼女の笑顔を最後に見たのが何十年も前だった感覚がある。泣き顔ばかりが浮かんで、笑った顔を忘れてしまうのが怖くて、洞窟の闇の中で幾度と無く思い出した。おかげで思い出は薄れても、消えはしなかった。 もう二度と見られないと思っていた。 それを言うなら、二度と声を聞くことも、手を握ることも、叱られることもできないと思っていた。 今更、生きて再会できたのだという実感が全身を駆け抜けた。同時に、紋様がじわじわと広がっているのがわかる。 ――会いたかったよ、ヨン姉。 そう伝えるのは、後の機会に取って置こう。これからゆっくりと、色々な話をしていけばいい。今はまだ話せないことも、いつかは――。 顎を引いて、くくっと喉を鳴らして笑う。 「どうしたの」 心配そうな声がかかる。 「あー、いや」 顔を上げた時にはもう、イトゥ=エンキはいつもの人を食ったような笑みを浮かべていた。紋様の広がりも引いている。 「アイツら、下まで連れてくんだよな。手伝うぜ」 「え? うんそうだけど……いいの?」 首を傾げたヨンフェ=ジーディは、どこか嬉しそうだった。 「もたもたすんなよ、ガキどもー」 ユリャンでもたまに子供の相手をすることはあった。イトゥ=エンキは嬉々として群れに混じった。 「おにいちゃんだれ?」 「さあ、ちゃんと二十まで数えて手を洗ったら教えてやるよ。ほら、せっけん」 「あーい」 少女が石鹸の欠片をイトゥ=エンキから受け取る。 (ま、今はこれでいっか) まだ考慮しなければならない問題は多くあったが、これからどうすればいいのかの決断は先延ばしにしても大丈夫だろう。急ぐ必要は無かった。 どうせもう、他に行きたい場所も会いたい人も居ないのだから。 |
23.f.
2013 / 06 / 26 ( Wed ) 「めざといな、お前」気まずい空気をかもし出すことなく、エンはけらけらと笑った。「別にコレは理由の内じゃねーけど。見られたくないのは違いないな」
奴が手首を翻し、傷痕は視界から消えた。 「そうか」 とだけ、ゲズゥは返した。 花壇から目線を移したミスリアが、大きな目を瞬かせている。 暫時の沈黙が流れた。 往来の人々はゲズゥらに関心を示すことなく、忙しなく通り過ぎている。水瓶を頭に乗せた女がすれ違いざまに一瞬だけこちらをチラリと見たが、それだけだった。 ミスリアがゆっくりと立ち上がる。茶色の瞳はエンをしっかりと捉えていた。ところが、次いで発せられた言葉は心もとない。 「あ、あの、私にできることがあれば言ってください。古い傷を治すのは難しいんですけど、精一杯頑張りますから……」 オロオロとかける言葉に困るその様を、ゲズゥは今までに幾度も見てきた。 相手を気遣いたい気持ちを持て余し、どう言ってあげるのが一番いいのかわかりかねているのだ。それを「できることがあれば」の言葉に包む事で、何より相手を尊重したいという意思を示している。「お前にできることは無い」と相手がそう断じれば、大人しく従うだろう。 押し付けがましくない分、そういった想いが純粋に届くこともある。 エンは最初、驚いたようだった。次には、朗らかに笑った。 「……嬢ちゃんはホントお人よしだなぁ。そんなんじゃ早死にしそうでこえーよ。誰も彼も助けようとして、疲れないか?」 ゲズゥも何度か抱いてきた疑問である。今となっては、この娘の根本を成す性質だと受け入れて諦めている。 「私……私たちは、何度も貴方に助けられていますから。信頼に値する人物だと思ってます」 「カワイイこと言うじゃん」 「はい?」 次の瞬間、エンは大股でミスリアに近付いた。長身の男は少女を両手でひょいっと抱き上げ、子供に高い高いをするように空に放った。 「きゃあ! イトゥ=エンキさん!? 何するんですか、やめ、やめてください!?」 「ははははは」 エンは笑うだけで取り合わない。 きゃあきゃあ喚く少女を、道行く人々は好奇の目で見る。あらまあ仲良いのねー、と口元に手を当ててくすくす笑う女も居た。 あまり長引くと不審者だと勘違いされないだろうか。ゲズゥはふとそんなことを考えた。 少なくともミスリアに害が及ぶ予感は全くしないので、手を出さないでいる。 が、助けを求める目がこちらを向いた。タイミングを同じくして、エンはくるりと身体を巡らせた。 「ほれ、パス」 宙に飛ばされ、ミスリアが小さな悲鳴を上げる。 ゲズゥは飛んできた華奢な身体を素早く受け止め、地に下ろしてやった。 若干目を回しているのか、ミスリアはぼんやりとしていた。 「ごめんなさいっ」 我に返ると、すぐにゲズゥの腕から逃れた。何を謝ったのかは謎である。 「オレ妹欲しかったなー。来たのは姉だったけど」 エンは両腕を組んで、悪びれずに言う。 「……来た、ですか? やはり血は繋がっていないのですね」 「わかったか。っていうか全然似てないだろ? ヨン姉は父さんがこの町まで遠出に行ったある時、連れて帰ってきた孤児だよ」 「そうだったんですか」 「そ。たまたま同族だからか感情移入しちゃって、教会から引き取ったってさ」 それを聞いて、ゲズゥは色々と納得した。生き別れた後の姉の消息を、元々彼女と縁の深い教会なら何かわかるだろうと考えたのはそういうことか――。 そして、十五年前にあの女やエンが味わったであろう絶望をなんとなく想像して、冷風が吹いたような錯覚を一瞬覚えた。 「イトゥ=エンキさんは、どうしてお姉さんを避けるんですか? 会いたかったのでしょう……?」 少女の澄んだ声が静かに問うた。どこか、陰を内包した声だった。 「そりゃあ……ヨン姉は十五年前までのオレしか知らないんだよ」 ミスリアの様子に気付いたとしても、エンもやはり静かに答えた。 「……? 必然的にそうなりますね」 「つまり。これまでに何処でどうやって、何をして生きてきたのか、知らないワケだ」 即時にゲズゥは理解した。 隣のミスリアも、エンとの最初の出会いやユリャン山脈を思い出したのだろう。今にも泣き出しそうな顔をしていた。 |