ロングあとがき
2017 / 01 / 06 ( Fri )
 改めましてどうもこんにちは、甲(きのえ)姫です。

 聖女ミスリア巡礼紀行をお読みくださってありがとうございます。
 五年もかけるような長編は当分、或いは二度と書かないと思います、はい。楽しかったですけども。

 ここから先はネタバレ配慮を全くしない、一部のキャラの未来についても赤裸々な話をしようかと思います。テーマやら創作のプロセスについても語ったりしたいので、そういうのに興味がないOR本編だけを憶えていたいって方は、今のうちに引き返してくださいませ。





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 大丈夫ですか? もういいですね?



 では。

 ブログの古い記事にも書いたように、この話の最初のインスピレーションはファイナルファンタジーXでした。聖獣を蘇らせるという最終目的やそのデザイン(シン的なやつ)などに残影が見えますね。
 着想した当時は少なくとも2005年かそれ以前で、途中からもっと色々なところから影響受けています。主役の二人なんて外見こそ変わりませんが、最初の頃は大分性格が違っていました。ゲズゥはもっと口数多くて、しかも言葉遣いが若者っぽく汚かった(笑

 冒頭のシーンのイメージはずっと変わりませんでした。共感しづらい奴の心理描写を一番最初に持ってきたのは冒険だったなぁと後になって気付きましたけど、あそこで興味を惹かれたならあなたは物語の虜となるだろう、みたいな賭けが込められています。

 制作過程。
 世界観や人物プロフィールは最初すっごい頑張ったんですよ、最初だけは。メモに用語集書いたりして。今見返すと没ったポイントも多いですが……。で、前にも言いましたけど、プロットは章を終えて次の章を練る時ぐらいしか見たり作ったりしてないです。それもかなり適当に単語と場面しか書き出していない。例えばこう:

  第二章: 聖地を巡る意味
  最初の巡礼地がメイン
  イトゥ=エンキまつわりのドラマ
  失われた古い技術での隠し地図と見せかけて、聖獣とのコミュニケーション
  ミスリアがさらわれる・取り返す
  本当はまともに生きたかった
  頼みがある。

 大きな目的がある旅、というのはいざ書き出してしまえばとても扱いやすかったです。ほどよく寄り道しつつもなんとか前に進んでいれば、ありがちな「話が進まない」という事態に陥らないわけでして。私は場面から場面へともっていくために間を繋いだみたいな書き方をしています。既に定まっている場面(か、特定人物の登場)までの間のエピソードはひとつの「目標」を中心に据えて、あとは閃きに従って肉付けをしました。このやり方の利点は、物語の自然な成長を促せることと、読者の声を多少取り入れられる点ですね。例えばカイルの登場回数が増えたのは……察してください。

 ミスリアでいう話が進む、というのは物理的に目的地に進む以外に、関係性が進展する、というのがありました。
 この話は、良くも悪くもミスリアとゲズゥの話です。タイトルにはミスリアの名前がありますが、二人がそれぞれ物語の半分を抱えて走っていたようなものでした。エピソード「〇〇編」ってのは大体、二人の間に「こういう進展をさせる」為の隠れ蓑みたいなものです。わかりやすい例では、カルロンギィ渓谷の話は色々ありましたけど主にゲズゥに「俺がお前の目的を手伝う」って言わせるために一連の出来事があったわけです。

 影響し合って歩み寄って、最後にはどちらも新しい自分になれている。そんな変遷の物語。
 特に気合を入れたところは、二人の頑張り比率ですね。恋愛要素のある物語ではどちらかが能動的で相手が受動的になってしまう傾向をよく見ている気がします。少女漫画と乙女ゲーの違いは、主人公が相手役の為に何かをしようとするのか、それとも流されているだけなのか、だと私は考えています。

 そういった傾向を打ち消すため、バランスよく、ミスリアがゲズゥを助けてゲズゥがミスリアを助け、どちらからも相手に興味を持って歩み寄らせるように気を配りました(うまくやれたかはともかく)。特に気に入っているのは、終盤でミスリアがプリシェデスにナイフを向けるところ(当初の予定では切るのではなく刺していた)。この子だってやる時はやるんだ、伊達に躊躇なく大剣振り回す男をずっと見てきたんじゃないんだ、という成長の表れでした。

 要するに、人の変化と、ここではない世界の描写がしたかったのだと思います。
 非日常の中で培われる絆って奴を。
 恋愛に進展するのか? と割と怪しいところが多かったものの、私は私にしか書けない一世一代の大恋愛(笑)を書いたつもりです。と言うのも、思春期の子がよく陥る錯覚「この人じゃないとダメなんだ!」を、地で追求したかったんです。本当の本当に「こいつらはお互いじゃないとダメなんだな」と物語を通して読み手さまが感じられたなら、試みは成功したのでしょう。

 これまでにいただいてきた感想などを顧みるに、私は感情というか思考描写(と、背景描写)の丁寧さがきっと持ち味なんだな、と納得しています。今後もアイディアやストーリーなどと色々手を広げたりしてみることはあっても、持ち味を損なわないように頑張ります。

 課題。
 連載中に、甲さんの書く悪役はかっこよすぎる&頭が良すぎる、みたいな指摘を受けました(笑)
 確かにアホな悪役はウペティギしか居ない気がしますね。あと完全なゲス野郎と言うとユリャンの山賊とか最終章の冒頭の連中とか。
 他は皆、何かしら理由をもって悪の道に進んでます。私としては、理由はあって悪に進んだからと言って悪事が見逃される言い訳にならない、みたいなテーマをどこかで持っていたのだと思います。ルフナマーリの閣僚とかカルロンギィの三人などが例です。

 悪事を働く人間が必ずしも悪人ではない――というのは私個人の持論の表れなのでしょうね。前に刑務所でバイトしたことがあるのですが、魔が差したり追い詰められた人の方が多く罪人のレッテルを貼られていたように感じました。勿論根っからの救いようのない悪は居ます。そういうキャラを対比に出そうかどうかは迷ったところですが、あまりに強烈に印象付けてしまうと、ゲズゥまで救えそうにないというイメージに繋がる気がしたので。
 彼の社会的な償いは終わりましたけど、(先祖の分も)命を奪ったことの、摂理への償いはまだまだ続きます。ちょっと掘り下げが足りなかったですが、ユシュハはゲズゥを永遠に許さないけど師が殺されたことに関しては「剣を抜いたら、返り討ちにされても文句が言えない」の道理で割り切っています。

 さて、本筋から逸れそうだからと没ったエピソードや台詞やシチュエーションは多く。流用できそうなネタは次回作にとっておこうと思います。
 最初の方はあんなに楽しんで書いてたアクションも、途中からネタ切れになりそうで危なかったです。いや実際に使いまわした動きとかもあると思います(滝汗)。バトル描写も課題ですね。あれは一場面を書くのにすごく時間が掛かる時もあれば、スラッスラ出てくる場合もありました。今後はもっとコンスタントなクオリティを目指したいところ。

 他のキャラがどうなったかは、私の中で結論が出ていない子も居ます。結論が出ている子から順に書くかもしれません。全宇宙のイトゥ=エンキファンすみません、奴は普通に平和に結婚相手を探します。

 そうそう、番外編は色々と書くつもりですが続編は書きません。と言うのも、昔は続編(子供世代が頑張る系)の案があったのですが、何故か本編も真っ青な黒い展開でどうしてもBAD ENDになってしまい。その頃の妄想のイメージが未だに拭いきれないので、続編は書けそうにないです。
 子供についてだけサラッと話しますと、男女の双子。お兄ちゃんはやんちゃ+眼帯、父と叔父の手ほどきで曲刀二刀流。基本は普通の少年だが土壇場で異様に冷静になるところは先祖譲り。妹ちゃんはいい子だがちょっと気弱でおどおどしている。母に憧れて聖女を目指す、ETC。
 双子のあやし方がわからなくて膝やら肩やらによじのぼられるのを無言で耐えるゲズゥとか、別に書きませんよ。

 ひとりだけ、番外編なしで此処でどうなったかを書きたいのはエザレイ。
 当初の予定では本編登場期間内に死ぬはずだったけど何故か生き延びてしまった彼は、あれから三年ほど魔物狩り師連合に貢献します。優秀な弟子も数人育て上げて名を残します。ミスリアたちとの再会はしません。
 そしてある夜の魔物狩りの任務中に馬車にひかれそうになっている子供を助け、打ち所が悪くてその場で息を引き取ります。最後の瞬間に無事な子供の姿を確認すると、微笑んで逝く。その後、彼が神々へと続く道に辿り着けるのか、そこでカタリアの魂と再会できるのかは神のみぞ知るところですが、私は再会できたんじゃないかと思ってます。

 ふう。随分と長くなりましたが、言いたかったことは大体まとまったでしょうか。
 読んでくださった方々、作者に構ってくださった方々、少しでもこの物語にお時間を割いてくださった方々。
 感謝してもし切れません。
 私の長年の妄想の産物でしかなかったものに息が吹き込まれたんです。書き出したのは私がゲズゥに会いたかったからですが、そこからなんとか小説の形になれたのは、皆様の愛の力のおかげです。

 ブログを立ち上げた当初から構想練りやイラストやサイトデザインや誤字報告などでサポートしてくれたえびにもここで愛を叫んでおきます! ありがとー がとー とー … (エコー

 これからは新作の準備に入ります。
 ある程度書けたら此処のブログで目次記事を作って投稿し始めると思うので、その時はまた構って下さいまし。あと、相変わらずどうでもいい近況の写真とか余談とかもたまに沸きますが、お気になさらず。

 またお会いしましょう!

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