一 - f
2017 / 02 / 27 ( Mon ) ヌンディーク公国首都ムゥダ=ヴァハナは、公宮に近付くほどに上品そうな空気感を湛えるようになった。 道中に見てきた下町とはまるで違う。ちなみにこれまでに通り過ぎた地区の建物の密集ぶりや路の賑やかさはどこか祖国ゼテミアンの首都を彷彿させたが、斜面に建てられている分、妙な開放感があった。宮殿周りの建築物は、本当にこの大陸の人間が建てたのかと疑問に思うほどに異様な外観をしている。現代の主流であるはずの四角い外壁が見当たらない。どうやってあの形になるのか、屋根は丸かったり変な針が伸びたりしている。焼きレンガではなく干しレンガを使えばああなるのだろうか。 大公の周辺は別世界――そういった部分もやはり祖国と同じに思えた。ゼテミアン公国の首都も、玄関を飾る巨大円柱などが特徴的な、旧い建築物がひしめき合うような場所だ。 願わくば一度じっくりと町を観光してみたい。 (願ったところで、叶わないか……) 夜の翼に追いつかれないように、御者は急いで馬車を走らせていた。最初こそ「あれは何?」の質問に答えてくれていた彼は、目的地に近付いた頃には相槌すらしてくれなくなっていた。 緊張感が伝わってくる。遅れたのはセリカの所為なのだが、自分が咎められるのを怖れているのだろう。 (悪いことをしたな) 門を通って少しすると馬車を降りた。 燭台を持った初老の男性が、広大な前庭を彩る噴水の前に佇んでいる。ゼテミアン大使だ。彼の後ろに使用人らしき人影が数人控えていた。 まずは挨拶を交わし、荷物を預けたり馬を休ませる手配などを済ませた。 「全く、すっかり暗くなっているではないか。何をちんたらやっていたのか。こちらは会談も終わったというに」 大使が御者を責め立てる。二人の間に、セリカがサッと立ち入った。 「遅くなったのはあたしが寄り道をしたがったからよ。他の皆を責めないであげて」 「公女殿下……相変わらず、貴女は困ったひとです」 初老の男性はあからさまなため息を吐いた。 「結果としては無事に着けたんだから、別にいいじゃない」 「無事に着けなかったら、誰かの首が撥ねられたかもしれませんぞ。以後、ご自分の振る舞いにもっと責任をお持ちください」 ――あんたなんかに言われなくてもそれくらいわかってるわ! 腹の奥から湧き上がる怒りを飲み込んで、代わりにセリカは顔に薄笑いを張り付けた。 「ご忠告どうも。善処するわ」 ふん、と大使は鼻で笑ったようだった。いくら生まれが上だからとこちらが粋がっても、父の側近である彼にしてみれば、セリカなど単なる世間知らずな小娘に過ぎない。 悔しいが、この力関係は揺るぎない。 「先方と話も付きましたし、私はもう休みますぞ」 「そうなの、ご苦労だったわね」 労いの言葉をかけつつ、依然として薄笑い。 大使は踵を返しかけたが、途中で立ち止まった。伝え忘れた何かを思い出した様子である。 「ああそうです、ヌンディークの宰相殿が迎えに来ています。なんでも、殿下の為に晩餐会を催すそうですよ」 「……晩餐会?」 セリカの笑みが僅かばかり崩れた。 「どうぞ、良い夜をお過ごしくだされ」 大使は曖昧に笑ってから、それきり口を噤んだ。その背中を、セリカと侍女のバルバティアが追う。 (誰が何を催すって? あたしの為に?) 正直のところ、結婚式までに誰とも会わせてもらえないものと予想していたので、それまでの時間を独りで自室で過ごすのだと勝手に思い込んでいた。 それが、初日で晩餐会。そうと知っていればもっと急いで来たのに――。 旅の疲れがあるのに今から猫被らなければならないなんて面倒だ、という気持ちが半分。残り半分は、どんな顔ぶれが来るのだろうか、と楽しみな気持ちがあった。更に言えば――許婚も来るのだろうか。 十九歳のセリカラーサ公女は、夢見がちな乙女ではない。まだ見ぬ夫と運よく素敵な絆を築けるなどと、夢想したりしない。 (でも自分の人生だもの。何でもいいから楽しめる要素を見つけてこそ、生き甲斐があるってものよね) たとえば武術の特訓を付けてくれそうな義理の兄弟とか、親友同士になれそうな義理の姉妹とか。 (せめて婚約者があたしより腕の立つ男だといいな) そうであれば、仲良くなれずとも尊敬の念を抱ける。 期待したい、けれども期待しすぎるのが怖い。逸る気持ちを抑えて、セリカは静かに歩を進める。 「公女殿下。ご存じですか」 正殿に続く階段を上る間、大使がまた声をかけてきた。 「何を?」 「貴女の夫となられるのは、ヌンディーク公国第五公子です」 「…………そう」 唐突に開示された情報を噛み締めんとして、その場で立ち尽くした。 (大公の五番目の息子。五番目か……ビミョーそうな立ち位置ね) その心境、果たしていかがなものであろうか。公位継承権を持たないのだから、男児にとっては張り合いの無い人生になりそうな気はする。 きっとこの辺りの境遇は人格にも反映されていよう。 ――やはり期待しすぎない方がいいのだろうか。 セリカは目を伏せて心を落ち着けた。 次に顔を上げた時には極上の微笑を浮かべて、階段の上で待ち受ける大使と宰相の元へと歩み寄った。 |
一 - e
2017 / 02 / 24 ( Fri ) 「できないって言うの? 結局口先だけなのね」
「片目だと遠近感がずれるから、私に飛び道具は扱えない」 ――至極ごもっともな理由があった。 それでも納得し切れずに、食い下がる。 「だって、あんたのブラインドじゃないの」 「別に私のではない。この建物は多分、季節が移ろう前からここにあった」 「あ、そう……」 それじゃあ自分では狩りができないくせに、得意げに知識だけひけらかしたの――と突っ込みたいところだったが、思い直した。元から片目だったとは限らないし、誰かに付き添うだけでも知識は身に着く。この人は普段、弓ではなく罠担当をしている可能性もある。 かくいうセリカもこれまでの狩りの経験は、兄弟について行った数回だけだった。それも公都内にある狩り場だ。的を当てる練習ばかりしていたのも図星だし、あまり人のことをあれこれ言えない。 (なんだか、やる気失くしたわ) ――ひとつくらい獲物を手にしてから馬車に帰りたかったのに。 だからと言って、粘る気力が無い。 道具を仕舞って背負い直し、帰り道を確認する。御者に伝えた二時間よりもずっと早く戻れそうだし、これでいいのだろうと自分に言い聞かせた。 それにしても、とふいに青年が口を開いた。こちらをじっと眺める青年の青灰色の瞳は、どこか冷たい印象を与える。 「さくらんぼみたいな頭だな」 瞬間、セリカはこめかみに青筋が浮かぶのを感じた。 「……初対面の人間をまず見た目から侮辱するのが、この国の礼儀なのかしら」 努めて平静を保とうとする。が、その試みはすぐに失敗に終わった。 「美味しそうだと褒めたつもりだが。赤黒いさくらんぼは見た目の渋さに反して果肉が甘く、好きだな」 「あんたの食べ物の好き嫌いなんて心底どうでもいいのよッ!」 ――いけない。 唾が飛ぶ勢いで怒鳴ってしまった。いくら淑(しと)やかさに欠けることを自覚しているセリカでも、これには反省した。 確かにこの髪は、母譲りの、滅多にない色合いではある。黒光りする深い赤紫――そう表現するのが一番シャレているのではないかと、自分ではこっそり思っていた。 今までに果物と比べられたことはない。というより、食べ物に似ていると感じていても誰も面と向かって言っては来ないだろう。 収まらぬ苛立ちをどうすれば吐き出せるか。紺色の帽子の下からうかがえる茶みがかった黒を見やり、その答えを思い付いた。 「そっちは泥みたいな髪色ね」 「よく言われる。淀んだ川底の土とそっくりだと」 仕返しのつもりだったのだが、思いのほか青年は平然としていた。それどころか、同情を誘う返しだった。 「け、結構心ないこと言う人と知り合いなのね……」 「そんなものだ。お前もたった今、泥みたいだと言っただろうに」 「あんなの腹いせよ、本気でけなしたいわけじゃないわ。ん、気品に紛れた遊び心っていうか? 野性的でいい色じゃない」 「…………無理して褒めなくても。泥でいい、私は気にしていない」 呆れたような顔をする青年に対して、セリカはバツが悪くなって小さく舌を出した。適当に思いついたことを口にしただったのを見透かされてしまった。気まずいので、さっさと話題を変える。 「そんなことより、いきなり出てきて何なのよ? 物凄く吃驚したわ。助言を乞うた覚えは無いし。誰よあんた、何様のつもり」 青年の鼻先に人差し指を突き指して、大袈裟に非難した。否、決して大袈裟ではない。 (乙女を尻餅つかせて驚かせたんだから、弁明くらいするべきよ!) 改めて強気になり、相手を睨みつける。 青年は全く怯まないどころか、意外そうに目を見開き、眉を上げた。 「わからないのか」 「はあ? わからないから訊いてるんでしょ。間抜けなこと言わないで」 激しく言い返してくるのかと思ったら、青年はただつまらなそうな顔をした。何なのだ、一体。何故そんな顔をされねばならないのか。セリカには心当たりがまるでなかった。 「――すぐにわかる」 それだけ言い捨てると青年はこちらに背を向けた。淀みない足取りで、速やかに木々の間に消えて行く。 後を追おうだなどとは、勿論セリカは考えなかった。 「変なヤツ」 嘆息混じりにひとりごちる。変な男、変な国、変な日。無人となった森は、セリカの独り言をことごとく吸収する。 日が傾きかけている。周囲の大樹の影がいつしか長くなっていた。極め付けは、長々と響くカラスの鳴き声だ。 胸の内に得も言われぬ物寂しさが広がっていった。 (はあ、帰ろう。受け入れたくない未来から目を背けるのは、もう止めにしよう) 運命の呼び寄せる方へ――彼女は一歩ずつ、重い足を進めていく。 _______ |
YY 2/21 12/2 人人
2017 / 02 / 22 ( Wed ) 冷蔵庫に入れた食べ物に「YY 2/21」と書いたら逆さにして「12/2 人人」って読めた。
(甲はイニシャルがYYなのです) どうでもいい。 黒赤も連載開始から一週間。いかがでしょうか。 もうお気付きのことかと思いますが、これは色々な意味でミスリアの妹作品です。メインの女子と男子がそれぞれミスリアとゲズゥとどう似ていてどう違うのか、ぜひ比べて楽しんでみてください。物語の進展のし方とかも。 まず、セリカはミスリアよりずっとバイタリティがありますねww 走るし怒鳴るし飛び蹴りとかもしそうな勢いです(ぁ 小動物並みにびくびく生きてたミスリアとは違った可愛さがあります。あと勝手に暴走してくれるのが、いやあ、楽しいっす。 さて、地名はしつこいくらいにリピートしてるので覚えられましたでしょうか。 ゼテミアン→セリカの故郷 ヌンディーク→嫁ぎ先 ムゥダ=ヴァハナ→目的地 ……OK? 来週の二話から、わちゃっと人が増える予定です。書き分けガンバリマス。 脳内キャパシティを少し用意して臨んでくださいねww |
一 - d
2017 / 02 / 22 ( Wed ) 黒染めの革の長靴を、眼差しでなぞる。膝当てまで付いているとは珍しいデザインだ、ちょっとかっこいいな、なんてぼんやり思った。 視線は更に上った。裾を長靴に仕舞い込んだ黒いズボン。それを覆うのは、白く縁取られた紺色――膝丈の薄い羽織り物のようだが、左右のどちらかを上に重ねるのではなく身体の中央に緩く引き合わせる、見慣れないタイプだ。羽織り物を留める細いベルトは靴と同じ黒い革。そのベルトから細長いものが提げられている。美しい彫刻の施された鞘に見えた。 (あの大きさはナイフ、よね。股の上にこんな目立つモノをぶら下げる心理……) なんとも言えない気分になって、セリカは顔を上げた。 半袖の羽織り物の下から覗くのは、ボタンをきっちりかけ合わせた詰襟の黒いシャツ。シャツは普通だが、羽織り物の仕様には稀なるものを感じた。ヌンディーク公国の人間はこんな服装ではなかった気がする―― 「ぅわおっ」 眼差しが交差した途端、喉から変な声が漏れ出た。ずっと片足立ちの体勢を保っていたことを身体が突然思い出したのか、腰から力が抜けた。 (スカートじゃなくてよかった!) 開いた脚をすかさず閉じる。旅装として履いていた麻ズボンに感謝した。同時に、見知らぬ他人を随分とジロジロ見ていたのだと今更ながら思い出す。 とりあえず謝ろうと思って、相手を見上げた。 青灰色の瞳とまた目が合った。と言っても左目だけだ。浅い筒みたいな変わった形の帽子から流れる布に、顔の右半分が隠れている。 青年はこちらを見下ろすだけで助け起こそうとしない。無関心そうな表情を浮かべている。 (こいつ、いつから居たの) 何故話しかけもせずに突っ立っていたのか。理由もなく人を驚かせるのは、あまりに礼節に欠ける。不審者かと警戒しながらセリカは立ち上がった。青年はやはり微動だにしない。 正面から見据えて、また驚くこととなる。 なんと目線の高さが同じくらいだった。差は一インチ未満だろうか、首を曲げることなく対応できる。 確か、ゼテミアンの女は大陸中の他の国よりも平均身長が高いと言われていた。 (本当だったのね) とはいえ、セリカは知り合いの女の中では背が決して高くない方だ。きっとこの青年こそ、平均より低いのだろう。 立ち話をしながら人を見上げることはよくあっても、ありのままで目線が合うのは新鮮だった。そのせいか、いくらか毒気が抜ける。 「惜しかったな」 やがて、気だるげに青年が言った。低めの声で、丁寧で聴き取りやすい発音の共通語だ。 「え、何がよ」 一方、セリカはつい突っかかるような語調で応じた。 すぐには答えず、青年が首を巡らせる。その弾みで、彼が左耳に着けている涙滴型の装飾品が目に入った。 銀色のチェーンから垂れる大きな涙。暗めの群青色に、白い斑模様と金の斑点が浮かんでいる。 こういった不純物の多い石はラピスラズリと呼ばれず、別の名があったはずだ。それが何だったのか、思い出せそうで思い出せない。 (流石は宝石大国、ヌンディーク公国ね) その辺を何気なくほっつき歩いている若者ですらこんなにも美しいアクセサリーを身に着けているものなのか、と感心せざるをえない。或いはそれなりの家柄の者なのだろうか。見慣れない服装だけれど、身なりは綺麗だ。 「……的を射る練習はしていても、生き物を狙ったことが無いだろう」 青年の視線の先を一緒に辿った。先ほどヤマウズラを外して空しく地面に突き刺さった矢が、そこにある。 馬鹿にされているのだと、遅れて理解した。 「あっ――る、わよ! 勝手に決めつけないでくれる!?」 矜持が傷付けられた反動が頭の中で跳ね回る。セリカはずかずかと矢の傍まで歩いて、ひと思いに引っこ抜いてみせた。 「鳥は、頭を上げた時に人間(おまえ)の匂いを捉えていた。あの後また餌に夢中になったように見えたが、警戒心が残って、俊敏に避けることができた。風上に立ちながら匂いを十分に消さないのは、初心者のやりそうなミス――」 「初心者で悪かったわねえ!」 腹立たしい。背後から淡々と理屈をこねていないで、いい加減に黙ってはくれないだろうか。 「そんなに言うならあんたが射止めてみなさいよ」 セリカは青年の真正面まで戻って、ずいと弓矢を両手で押し付けた。 瞬きひとつせずに彼はそれを見つめ、無理、と返した。 |
一 - c
2017 / 02 / 19 ( Sun ) 「でも日が暮れる前には確実にムゥダ=ヴァハナに着かないと! 夜道は危ないです!」
「最後に、好きなことをして過ごしたいのよ」 低い声でそう返すと、窓から身を乗り出したバルバが怯んだのが見えた。その隙に一直線に走り出す。 あっという間に馬車を後にした。 (せめて楽しい思い出を胸に抱えていれば……当分は頑張れる、わよね……) 優しく澄んだ森の空気に包まれながら、セリカは滲み出す涙に気付かない振りをする。 _______ 数分ほど闇雲に走ったら、人工物に行き当たった。 森の中の空き地の隅に建てられたそれは、物見やぐらより一回り小さく、地上から七フィート(約2.13m)ほど上げられた木製の小屋だ。 狩猟用の隠れ場所――ハンティング・ブラインドだと、一目でわかった。 セリカは傍らの梯子に近付いた。此処でなら獲物に気付かれずに長時間張り込める。誰のものかは知らないが、ちょうどいい。 (人の気配がしないし、いいわよね。借りますよ、っと!) 片手で戸を開いて身を滑り込ませる。 床が短く軋んだ。一人か、多くても二人が同時に使えるような強度と広さである。食べ残しくらい落ちているのではないかと思ったのに、案外清潔だった。しばらく誰も使っていないのか、それとも最後に使った人間が丁寧に片付けたのか。中にあるのは素朴な椅子ひとつである。 戸を含めた四方の壁のどれもに、幅広い窓が開いている。好みの角度を見つけて、セリカはそこに椅子を寄せた。 そして肩にかけている弓矢を下ろした。 (確か、大物を狩るには長時間居座った方がいいのよね。まあ、あんまり高望みしないでおこう) そもそもブラインドを見つけるとは思っていなかったのだ。これだけで既に儲けものである。 ――三十分経った頃。 ガサガサと、小柄な生き物が草を踏む音がした。目を凝らして待つと、丸っこい鳥がひょこひょこと空き地に進み出た。 お世辞にもきれいだとは言えない、ざらついた指で弓弦を静かに引く。 感じるべきは掌に触れる感触、弓の重み。風向き。獣の動きに視線は釘付けになり、僅かに震える草の動きを事細かに追った。 目標を的確に射止める筋道を茂みの隙間に見定め、呼吸を限界までに遅めて機をうかがった。 地面を突いていたヤマウズラが、ふいにひょっこりと頭を上げた。鳥類独特の俊敏な首の動きで周囲をひとしきり警戒した後、また餌探しに戻ろうとする―― セリカは弦を放した。 草が乱される音、矢が地を打つ音、弓弦が弾ける音などが鼓膜に交差する。 息を呑んで周囲を見回した。 数枚の羽根が舞っているだけで、望んだ結果を得られなかった事実を知る。 (狙いはちゃんと付けたのになー) 逃げられた。落胆するものの、高揚感の方が勝っていた。 筋肉に走る微かな負担が心地良い。楽しい。こうして弓を手にしている間だけは、余計な感情がまとわりつかない。 (あたしはやっぱり、これが一番「生きてる」って実感できる) しかしそれも、弓を手にしている間だけである。腕を下ろせば嫌でも現実を思い出す。異国で誰かの妃になる以上、自分の時間は失われるということ。 趣味は所詮、趣味に過ぎない。たとえ立場が許したとしても、セリカは男として生きて成功するには力量不足で、公族の女として生きていくには粗雑過ぎた。 それでもできるだけ長く好きなことをしていたかった。弓の腕を日々磨いた分だけ姫らしさからかけ離れ、縁談が持ち上がる度に片っ端から蹴飛ばしてきた。 終いには親には「下手に結婚させたら相手の不興を買いかねない」と慎重に扱われる結果となったが、セリカは何も後悔していない。 思えばどうして、ヌンディークとのこの縁は成り立ったのだろうか。 (なんだかんだで気にしたことなかったわ) 矢を回収しに行こうと戸を開く。梯子を下りながらも、考え事を続けた。 (十九にもなって結婚してない姫を受けたんだから――) 下りきって、地に着いた。くしゃり、と旅用の長靴が草を踏む音がする。 (向こうも何か事情が?) くるりと踵を返した。何か視界に不自然なものが映っているようだが、意識はすぐにはそこに行かず。 足元に注意しながら、踏み出そうとしたところで。空中で右脚を止めた。 一拍の間、身を凍らせる。 そのまま足を下ろしたら別の誰かの爪先を踏むからである。 |
一 - b
2017 / 02 / 18 ( Sat ) (前より窮屈な生活になるでしょうけどね)
他国の妃の席に収まる以上、宮殿の中ですら好き勝手に過ごせなくなるだろう。聞いたところ、ヌンディーク公国はゼテミアン以上に古くからの慣習を重んじるらしい。 それがなんとも、皮肉な話である。 アルシュント大陸で最大の人口と領土を誇る帝国、ディーナジャーヤ。 過去数度に渡る略奪戦争を経てその属国となったヤシュレ、ヌンディーク、並びにゼテミアン公国は、当然ながら多方面で帝国の影響を受けている。使っている通貨も同じ、四国同士では国境などあってないようなものだ。 それゆえ、昔ながらの自国の伝統や服装にこだわっているのは大公家と貴族階級くらいのもので、国民の過半数は時代の流れとやらに身を任せている。好きな食べ物を選び、好きな服を着ているはずだ。 不自由だ。 そして、どうやっても生まれる家は選べない。 二十年近い人生を歩み、セリカは未だに己の境遇に甘んじられない自分を、どう思えばいいのかわからなくなっていた。 幼馴染と将来を共にする約束をしているというバルバが、少なからず羨ましい。彼女が大好きな相手と幸せいっぱいの家庭を築く未来を想像するだけで、自然と胸の奥が温まった。 対してセリカは、顔も知らない男の子供を産まねばならない。顔どころか――歳が近いらしいのは聞いているが、それ以外の情報を一切持っていない。 そうなるよう仕組んだのは母だった。相手について何も知らない方が不安も少なく済みますからね、楽しみは後に取っておくものです、なんて言っていた気がする。 知っても知らなくても逃れようが無いのなら知らない方が気楽だろう、とセリカも割り切ることにした。物凄く醜かったり性格が最低最悪なゲス野郎だと予想していれば、いずれにせよ期待を裏切られる心配も無い。 怖くないと言えば嘘になる。それでも、逃げ出そうなどと企むには、セリカは聡すぎた。 「きゃっ!」 バルバの小さな悲鳴で、物思いから覚める。いつの間にか道が険しくなったのか、馬車がガタンゴトンと大きな音を立てながら進んでいる。 興味を惹かれて、窓の外に目を向けた。道路沿いに、いい感じに生い茂った森が見える。 「停めて!」 セリカは思わずそう叫んでいた。急に呼ばれた御者の男が驚き、言われた通りに手綱を引く。 「どうしました!?」 「ちょっと降りる。二時間もすれば戻るから」 用を足す為ではないと、念の為にセリカは補足した。荷物の中から、愛用の道具を取り出し、腰を浮かせる。 「二時間? それでは大使さまの馬車と大きく差がついてしまいます」 御者が前方を指差した。 「構わないわ。あたしが立ち合わなくても、商談はできるでしょう」 縁談を敢えて商談と称する。 政略結婚とは、国同士の交流を繋いだり強める為の措置。――交流? 実際にはそんなにあやふやな言葉で形容できるものではないと、セリカはしっかり理解していた。ゼテミアンはヌンディークから、ヌンディークはゼテミアンから、欲しい「持参金」があるのだ。 花嫁側(ゼテミアン)からのブライドウェルスは分割で支払われる手筈となっている。先月から少しずつ鉄が運び込まれていて、花婿側(ヌンディーク)からのダウリーがちゃんと支払われたと確認された暁には、契約通りの量まで届けられる。 双方の大公は既に契約書に署名している。それでもゼテミアン大使がセリカに同伴するのは、再三の言質を取りたいからに他ならない。 これらの手続きは結婚式などよりもよほど重要視されていた。 ――セリカラーサ・エイラクスという人間が消えていく。誰も本当の自分を知らないし、今後も知ろうとしないだろう。 未だに不服そうに抗弁する御者を無視して、馬車を飛び出した。 「ひ、姫さま! 危険です。護衛を連れてください」 バルバが声を震わせて叫んでいる。 「いらない。何かあったら叫ぶわ、そんなに遠く離れないから」 この路は人通りも多く危険度が低いからと、セリカの馬車についている護衛は一人しかいない。彼には荷物を守らせた方が得策だ。 日本の慣習だと結納金がダウリーに該当するっぽいですね。文化によってはブライドウェルスだったり両方出したりしていましたけど、旦那側の家族が何かしら出すのが多いのですかね。王族が一般人の嫁を取ると、王族側が嫁の家族に贈り物をすることもあるようで(現代では中東の国とかで例が)。今回はどっちも同ランクに高い家柄で、国同士の関係なのでどっちも寄贈品出します。 まあ、これはファンタジーですww |
一 - a
2017 / 02 / 16 ( Thu ) ――伝統は呪縛だ。 そんなことを思いつつ、馬車の小窓の向こうの景色を見やる。悠然と流れる峰々をいくら眺めても、心は少しも晴れなかった。まだまだ先が長い。公都ムゥダ=ヴァハナに着くにはあと数時間はかかるそうだ。 時折、向かいに座す女性と雑談を交わして気を紛らわせたりもした。しかし会話が途切れれば、思考回路はたちまち同じ憂鬱に巻き戻ってしまう。 なんでも、世間では「時代が移り変わりつつある」などと囁かれているらしい。具体的に何が変わっているのかは諸説あるようだ。たとえば各地で身分の壁が薄くなっているとか、男尊女卑の意識が薄れつつあるとか。 まやかしだ。少なくとも自分は、世の変化を実感できていない。 そんな立場ではないからだ――生まれる前から墓に入るまでの期間、一貫して大きな選択は何ひとつ自分でできない身の上と言えよう。 ゼテミアン公国第二公女、セリカラーサ・エイラクス――愛称セリカ――は、十九回目の春を迎えたばかりだった。晩春に予定されていた生誕祝いも待たずに自国を発たされたのには、本人にとって非常に不本意な理由がある。 今夜、夫となる男と初めて顔を合わせる。明後日、結婚式を挙げる。 平たく言えば政略結婚だ。 ――退屈だ。退屈な人生に、これからなりそうだ。 「バルバ」 肘掛に頬杖をついた姿勢のまま、向かいの席の侍女を呼んだ。セリカより三つほど年下で、耳の下で切り揃えられた髪とそばかすが印象的な女性は、名をバルバティアという。ここ数年ほど仕えてくれていて、今となっては気心の知れた友人だ。 「なんでしょうか、姫さま」 彼女はどこか緊張した面持ちで応えた。主と話すことに緊張しているのではなく、おそらくは環境が変わることへの不安の表れだろう。 「知ってた? このアルシュント大陸で女が伸びやかに暮らすには、平民くらいがちょうどいいそうよ」 「そうでしたっけ」 バルバティアは小さく首を傾げた。彼女は中流貴族の家から大公家へ奉仕に来ているのだからセリカよりは平民と関わる機会があるだろうに、どうもピンと来ないらしい。 「ええ。極端に身分が低くても、高くても、好きなように生きられないんだわ」 そういうセリカは、この話を誰に聞いたかは忘れていた。観劇の際にフィクションから吸収したのかもしれないし、兵士の噂話を盗み聞いたのかもしれなかった。 「姫さま……」 バルバは所在なさげに両手を握り合わせて俯いた。眉の端が悲しそうに垂れ下がっている。萎れた花のように背を丸める姿に、ちくりとセリカの胸が痛んだ。 「ごめんなさい、独り言よ」 いたずらに心配させないように微笑みで誤魔化し、話題を打ち切る。 視線を再び外の景色に向けてみた。四方八方が山に囲まれているというのは、新鮮と言えば新鮮である。このヌンディーク公国と違って、祖国ゼテミアンの公都は平地にあった。 これより以前、最後にゼテミアンを出たのがいつだったのか、思い出せない。 公族に於いての女の政治的価値及び発言権は一貫して夫の地位に依存しており、十六歳でディーナジャーヤ帝王の後宮に入った姉や十四歳でヤシュレ公国の貴族の家に嫁いだ妹に比べれば、嫁ぎ先が長らく定まらなかったセリカにほとんど自由は許されなかった。 妙齢の未婚の姫である内は公の場に顔を出すこともできず、旅行目的でも外交でも国を滅多に出なかった。 ようやく長旅に出られるかと思えば、隣国への片道行路。 (なんて、憂えてみるけど) これまでの生活の中に涙して惜しむほどの何かがあったのかと言うと、そうでもない。故郷は恋しいが、家族に関してはそれほどでもない。姉妹とは既に一緒に暮らさなくなって久しいので、別れて寂しかったのは兄くらいだ。親に至っては、むしろやっと解放された気分である。 一番仲の良い侍女を連れてきているので、心細さも薄まっている。勿論、新しい生活や侍女に慣れた後には彼女はいずれ実家へ帰すつもりだ。バルバには他に居場所が、帰るべき家があるのだから。 いっそ心機一転しよう。 新しい人生に挑戦する機会だと思えば、いくらか前向きな気持ちになれそうだった。 |
零 - b
2017 / 02 / 15 ( Wed ) (でも待って。入り口だけでもこんなに足が竦むのに、実際に中にいる人はもっとキツイわよね)
想像を絶するような想いをしているのではないか。 そう考えると、萎みかけていた闘志がまた燃え上がった。兵士を睨み付けて、返事を吐き捨てる。 「口の利き方がなってないわね。あたしは大公陛下の公賓よ」 しゃがんだ体勢から素早く立ち上がり、セリカは己の胸元を飾る豪華なガーネットとカーネリアンの首飾りを見せびらかした。いかに宝石大国と言えど、これほど多くの宝石をあしらった装飾品は一般人にとってはなかなか目にすることができないだろう。 案の定、兵士は青褪めながら何度か謝った。 「し、しかし失礼ながら……なにゆえ、やんごとなきご身分のご婦人がこのような場所に、ひとりで……」 「中の人間に用があるから来たに決まってるでしょ。通しなさい」 「なりません! ここは牢です。それに、第二公子から何者も通さぬようにと言い付けられておりますゆえ」 ――第二公子? あの腹黒ロン毛野郎がどう絡んでいるのよ、などと訊き返すことはできない。セリカは呆れたような、わざとらしいため息を吐いた。 「そんなのあたしの知ったことじゃないわ。通して」 すごみつつ、戸の方に一歩踏み込む。 「な、なりませぬ」 衛兵が慌てて扉を引こうとしているが、セリカの方が一瞬早かった。 ――ガン! 右の踵で強引にこじ開ける。次いで左足で跳び上がり、兵士の顔面を着地点とした。男はぐうと呻きながら崩れた。 遅れて、扉がけたたましく閉まった。視界が一気に暗くなる。 「何奴!」 近くに待機していた別の衛兵が、騒ぎを聞きつけて駆け寄ってくる。 迷わずセリカは壁の松明をもぎ取り、相手に向かって投げた。 「うわあ!?」 兵士は突然の熱さに慌てふためき、更には地面に落ちた松明に足をひっかけて、盛大に転んで地に伏せた。あまりに鮮やか過ぎる。まるで誰かが脚本に書いたみたいな展開だ。 (ごめんなさい!) 謝るのは心の中だけにして、セリカは全力で走り去る。邪魔なドレスの裾は、両手で握り締めて捲り上げた。 しばらくの間、殺風景な廊下が続いた。 どこまで走ればいいのだろう。 焦りが段々と強まる。頭がおかしくなりそうだ。一定の間隔で左右交互に現れる壁の灯りを、ついつい数えそうになっている。 異臭が濃くなり、一息つく為にセリカは足を止めた。向かう先の方に、鉄格子の輪郭が浮かんでいる。 (……もう手遅れだったりしないわよね) どうして彼は牢に入れられたのだろう。第二公子の差し金らしいが、この国では今、何が起こっている――? (朝から何かがおかしいのはわかってたけど) こうして考える時間さえもが勿体ない。セリカは再び走り出した。 「ねえちゃーん、きれいなおみ脚だねえ。ちょっと股開いてみなー?」 闇から、しゃがれた声が響く。 「ありがとう! この脚はあんたの空っぽな脳みそを蹴飛ばすために、長くできてるのよ!」 最初に通り過ぎた独房のいくつかは、中を確認するまでもなかった。下卑た文句を投げつけてくる者、猫なで声で呼びかけてくる者、不気味な奇声を発する者。それらの中に探し人は居ない。 「エラン! どこなの!?」 闇が深くなっていく。気分が悪い。 気のせいだろうか、通路の灯りの間隔が長くなっているようだ。と言っても真相はきっと単純で、奥に入るほどに松明の火が補充されていないだけなのだろう。 ――ああ、なんてひどい場所だ。 走りながら時々、サンダルの裏から大きな虫を踏み潰したような気色悪さが伝わる。四方から響く鼠の鳴き声が頭の中で反響している。あと数分この場に留まるだけで、気が狂うのは目に見えていた。 囚人たちには同情せざるを得ない。 「ねえ! 聞こえてるなら返事しなさいっ!」 ――はやく、早く助け出そう。こんなところに長く居てはダメだ。むしろあいつが此処に閉じ込められていると想像するのが、辛い。 つい先日、屋内で眠るのが嫌いだと言っていたのを思い出す。 最早息も切れ切れだが、急く気持ちに背中を押されて、セリカは必死に叫んだ。 「――エランディーク・ユオン!」 念のため補足しますと地下牢の床はめっちゃ水たまりだらけなので松明落としたくらいでは火事になりません。 |
零 - a
2017 / 02 / 14 ( Tue ) これより先は淑女が踏み入れるべき場所では、断じて、ない。 長い間、セリカは己の足下をただ睨み付けた。そうしている内に、果樹園を駆け抜けたことによって上がりきっていた息が、徐々に落ち着きを取り戻していった。――この扉を開けばきっともう戻れない。 迷いという名の錘が彼女の足を持ち上がらなくさせている。 否、同じような分岐に立たされれば誰だって躊躇するはずだ―― (ごめん、お母さん。あたしには荷が重かった) くれぐれも淑女にあるまじき振る舞いは控えてくださいね、と何度も念を押してきた母の顔を思い出す。 心の中で謝ったはいいが、直後に自己嫌悪がこみ上がる。 ――違う。別の誰かに責任転嫁して、踏み出せない臆病さを正当化しようとしているだけだ。 上質な生地に装飾品をふんだんにあしらったドレスの裾から覗く足は、いかにも高価そうなサンダルを履いている。が、綺麗な黄金だったはずの金具は草から擦れ移った緑に汚れ、足の爪は色濃い泥に塗れていた。 頭の中で、自嘲気味に笑う。 (元々あたしは「淑女」の枠組みからはみ出ていたわ) それでも家族のため、国のため、今度という今度はちゃんと頑張ろうという気になっていたのに。 ――あいつとなら、頑張れそうな気がしていたのに。 足の指をくすぐる草と大地の温かな感触が、セリカの心中に巣食う不安を残らず引き出した。 選択次第で、世間体以上の強敵をつくってしまう。慣れ親しんだ安寧を遠ざける覚悟が、本当に自分にあるのか? この道を進んだ先にはどんな未来が待ち受けて――或いは、未来と繋がってすらいないのか? (本当に会えるの? 会ったら、連れ出せるの? あたしに) 想像してみようにも、頭の中は真っ白だ。 明らかに気が動転している。 茶会の席を抜けて夢中で此処まで走って来たが、これからどうすればいいのかがわからなかった。型破りな娘だなんだと周りに言われてはいるが、肝心なところでは身動きが取れない。常識の打ち破り方がわからないのだ。 引き返してしまおうか。今なら、まだ間に合う。 ――お前の知らない「自由」を見せてやろうか―― 耳の奥に響いた声に、ハッとなった。 あの男が悪いのだ。夢を見させるようなことを言うから、真に受けた自分はこんな無茶を―― 「ああもう! 違うったら!」 追いつめられると何でもかんでも人の所為にするのは、悪いくせだ。 今まで誰もくれなかったような嬉しい言葉をかけてくれたからとか、命を救ってくれた恩があるからとか。それは確かに理由の一部であるが、それだけではない。 「知ってるヤツに死なれたら寝覚めが悪い、だけよ!」 ましてや相手はこちらの手が届く範囲内にいる。見捨てられるわけがない。助けてやれそうな可能性がある内に、何もしないなんてありえない。 そうはっきりと口にしたところで、セリカは腹をくくった。祖国への郷愁や、身分を惜しむ気持ちは、もちろんある。けれどそれを上回って余りある強い想いがあった。 しゃがんだ。ドレスの裾が汚れるのも厭わずに。 地面に溶け込むような色に塗装された両開きの扉は、初見では素通りしてしまいそうだが、セリカは先日この庭をうろついていた際に見かけたので探し出すのは容易だった。 表面にこびりついている土を軽く払ってから、両の拳で扉を思いきり叩いた。十回以上は叩いたところで内側から上へと扉が開いた。 ぎぎぎぃ。扉を開けた者の億劫さを代弁するかのように、蝶番がうるさく軋む。同時に、異臭が地上へと這い出た。数種の汚臭が混ざったようで、何の臭いかまでは割りだせないほどに複雑だ。 セリカは僅かに仰け反って、鼻先を手の甲で覆った。 「なんだ女、何か用か」 地下からつまらなそうにこちらを見上げる男は、武装した兵士である。それを見て、大体察することができた。 情報源であった少女を脳裏に思い浮かべる。 ――エラン兄さまでしたらきっと、地下にいらっしゃいますわ。 確かに彼女はそう語った。 (地下って言うから予想はできてたけど。やっぱり、牢……!) 冷や汗が額に滲み出す。喉の奥が詰まったように息が苦しくなり、頭がじわじわと痛み出した。恐怖が手足を絡め取らんとしているのだ。 ハッピーバレンタイン! おや、何かが始まってしまいましたね…? 最初は三日連続更新でその後は以前のような2~3日に一度ペースになると思います。 |
やほーい
2017 / 02 / 10 ( Fri ) 最近めっきりブログが静かになったけど小説は書いてます。
余談、筋肉痛がヤバイです。月・ヨガ、火・筋トレ、水・筋トレ+ランニング。木はどうなるかわからないまま、金は多分ホットヨガです。調子に乗りすぎじゃないですかね、この甲は。 次回作公開開始予定まで一週間切りましたね ふへへへ めっちゃ楽しみです <他人事のよう いや、制作段階もものすごく楽しいですよ。これが完結した後は「甲姫はきっともうダメだな。枯渇したのではないか」って思われてもいいくらいに全力で書きたいです。しかしミスリアを書いてた時もそんな気持ちだったので、案外私の天井はまだ見ぬ先にあるのかもしれないw あ、どういうお話か紹介するとですねー >>>ガールがボーイにミーツ<<< メインの食材はシンプル。 私の場合は、調理法とスパイスで遊びたいが為に妄想しているようなもの。 世の中には出会ってすぐにいちゃいちゃし出す、ブロイラーでごおっと短時間で焼くタイプの物語もあるようですが、私はじっくり煮込み派で貫きます。 別にじれじれが好きなんじゃないよ! 丁寧に歩み寄らせたいだけなんだよ!! ……煮立つまでの手間と、その後の味の閉じ方を、どうぞ楽しんでください! |
慣れないことを
2017 / 01 / 31 ( Tue ) |
泣いても笑っても~♪
2017 / 01 / 28 ( Sat ) 新年快楽!(旧暦
新連載はバレンタインに始めようと思います。 ふははは! これで今年はバレンタインの番外編とか考えなくてすむぞ! (注:別に毎年書いていたわけではない) その際は新しい目次記事をつくります。しかし当初、「はじめに」や目次が上に来るように2020年タイムスタンプで出したんですが、今となっては2020年がそれほど遠い未来でもないような気持ちになって恐ろしいです。我が人生の供、創作。今度3030年とかにします。 最近のアイディアはとっ散らかってる感がありますね。 マスカダイン(麗しき、その島)の次の短編の案も何故か勝手に沸いたし、滝神の、異文化交流にスポットを当てた番外編も書きたい。がまんがまーん。 新作が完結したらなろうだけじゃなく別の二つ目の場所に投稿しようと思うのですけど、どこがいいでしょう? エブリスタとコミコは、めんどくさい。カクヨムだけはアカウントあるくせにまだ投稿したことがないんですよね。もしもなろう並に使いやすかったら、そっちに載せてみようかしら。 ところで皆さん、このサイトはご存じでしたか? http://narou.nyanpass.jp/ 私は今更見つけました。なんだこれ。素晴らしい。目が疲れて読みにくいなぁと思ってこれまで進まなかったブクマを、キンドルでのびのびと快適に読める…! し あ わ せ (ΦωΦ)フフフ… では。今日は筆がのってるのでぐわっと書きます! |
質問を借りる
2017 / 01 / 24 ( Tue ) 進捗:
慣れない舞台を書いてるせいか、あと最後までプロット立てようとしているせいか、もにゃもにゃと進んでますw てことで以前にやった問い詰めるバトンを見返しました。今後出しそうな台詞を選んで。 *没案として握りつぶされる可能性大あり。登場する時に微妙に言い回しが変わってる可能性も。 8:あなたがこれから小説に書こうとしている台詞で、「今後の見所!」になりそうな意味深台詞を三つ、ここでコソッと教えてはいただけませんか? 「知ってるヤツに死なれたら寝覚めが悪い、だけよ!」 「これから歩もうとしている先に、希望があるのか破滅が待つのかは知れない。私から与えてやれるものは何も無いし、幸せにしてみせるとも約束できない。それでも共に歩んではくれないだろうか」 「一の善意は千の悪意をも上回る輝きを放つものなのだと、私は実感している」 |
お先らくがき
2017 / 01 / 19 ( Thu ) |
ご近所付き合い系短編
2017 / 01 / 16 ( Mon ) http://ncode.syosetu.com/n7092dn/5/
タイトル通りのやつw 最初は、「どうして私はこのネタで書こうと思ったんだ…ちょ、きつい…」ってなってたはずが、一旦ノり出してしまうと気が付けば書き終わってました。なんだこれ。 この話を書いてた時、参考になるかなと思って「蜘蛛ですが、なにか?」をちょろっと読みに行きました。漫画は見たことあったのですが、原作の方です。 見事に何の参考にもなりませんでした☆彡 まああれは転生もので、蜘蛛モンスターに詰められた女子高生でしたからね。 私が書きたいのは、普段の現代人の私たちが意識しないような価値観。と相違。 タランチュラの世界には触覚とぼやっとした視覚(味覚があるのかは全くの謎)しかないと言われています。その世界を想像するのは、とても不思議で楽しかったです。 5000字ちょっとの短編ですので、よかったらご一読いただけると嬉しいです! この後の予定ですが、そろそろ本格的に藻の連載の合間に恋愛の話を書き出そうと思います。 ああ、ええと、あまり期待しないでください…┏(_д_┏)┓)) |