拍手御礼ログ 16~20
2017 / 09 / 07 ( Thu )
間が空きすぎ問題。(滝汗


ものすごく久しぶりに拍手お礼を替えたいと思ったのよ。
そういうことなのよ。

あ、黒赤9話は多分あと残り1、2記事で終わるんじゃないかなって思ってる。もしかしたらgが異様に長くてそのまま終わるという可能性もw


では続きはログになります。



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16 男なんかと違って

 女性の悲鳴が夜の澄んだ空気を切り裂いた。
 フォルトへはすぐに三日月刀を構えて、正面から来る大きな人影が通り過ぎるのを阻止しようとした。確かに相手を斬った手応えはあったが、逃亡者は構わずに押し進んだ。
「待て!」
 後を追って、フォルトへの上司であるユシュハが駆ける。助太刀に向かうべきか迷ったが、結局フォルトへは女性を落ち着かせて家へ送り帰すことにした。この仕事を始めてからまだ日が浅いが、性分なのか、あまり緊張していない。
 ――強姦と殺人罪の疑いをかけられた男の周辺を張っていたこと数日。何度か国境を越えて住処を移し、名前を替えて再犯していたほどのこの凶悪な男を始末して欲しいと、組織ジュリノイに応援要請が出たのである。探し出すだけなら組織の情報網を用いてしまえばそう難しい話ではなかった。
 尾行し、絶妙なタイミングでターゲットを追い込んだものの、最後の詰めが甘かったらしい。せっかく無人の路地裏を選んだのに、今晩に限って無関係の人間がその場に現れた。人質にされるかもしれないと危惧した一瞬の隙に、奴を取り逃がしてしまった。
(先輩、大丈夫かなあ……)
 放っておくと猪のように一直線にしか走らないのだから、何かと心配だ。そう思って街道沿いのベンチに腰を下ろした。フォルトへの近視では探しに行くよりも戻って来るのを待った方が早い。そうして、数分もしない内に聴き慣れた足音が近付いて来た。
「あれ? 意外に早かったですねぇ」
「思った以上にタフな奴だった。あれでまだ逃げる体力が残ってたとはな。だがお前が斬った傷に加えて、相当な深手を負わせられた。遠くは逃げられまい。今から手分けして探せば――」
「待ってください。先輩も怪我したんじゃないですか」
「この暗がりでよくわかったな。だが大した傷じゃない」
「見えなくても吐息の音でわかりますよー。ここ座ってください、手当てしましょ」
 彼女が頭を振るのがぼんやりとわかった。フォルトへは苛立ちを抑えつつぐっと顔を近付けた。手を伸ばし、無遠慮に上司の肌に触れる。
「頬切れてるし、鼻も折れてるじゃないですか。女性なのに無茶しますね……」
「ほう。私が女だからって男よりも仕事ができない、すべきでないとでも言うのか? 生意気な」
「もー、違いますよ~。もちろん先輩は正義感に溢れててめっちゃ強くてステキですけど、女性だからこそ、男なんかと違って肌の美しさにも価値があるんですって。せっかくだから全部大切にしましょうよ」
「顔なんぞ気にしてたら敵との間合いが詰められん。妙なことを言うな」
「えー? 口説いてるだけです」
「くだらん冗談は良い。手当てするなら早くしろ」
 ユシュハはどかっとベンチを揺らして座った。
「はーい」
 出会った時から自分勝手な印象だったけど、なんだかんだ言ってちゃんとこっちの話も聞いてくれるんだな――そう思うとフォルトへはへらへらと表情筋を緩ませた。


17 無学なおまえたちが哀れに思えて

「だあああああっ!」
 何かに耐えかねたように、少年が両手を宙に放り投げる。
 一緒になって放り投げられた薄っぺらい一冊の本を、隣の少年が片手で捕まえた。二人は顔形が良く似ていて、一目に一卵性双生児だと知れる。
「ジェルーチ……うるさい……」
 乱暴に扱われた哀れな本を膝の上で広げ直しながら、陰鬱そうな雰囲気の方の少年が文句を言う。
「しょーがねーじゃん、読めないんだもんよ。文字ってよくわかんねー。なあジェルーゾ、違う遊びしようぜ、なあ」
「ルゾは……ものがたり……きょうみ、ある。がんばれば、きっと……」
 口を尖らせる兄弟を肘で押しのけて、ジェルーゾと呼ばれた少年は古びた本のページを鼻に近付けた。近付けたところで、本自体が逆さになっていることに、彼らは気付かない。
 二人はまともに読み書きを覚えないまま故郷を去ったのだが、そうでなくとも、文字があまり普及していない里だった。大人の識字率ですら二割に満たなかったことだろう。
 今は教えてくれる相手がいることにはいる。が、どうにも身に付かないのである。
『何の騒ぎだ』
 するとその男が洞窟の闇の中からぬうっと現れた。
「あ、ヤンー。ヤンが『ひまつぶしに』つってくれたこの本、ぜんぜん読めないんだよぅ」
 さまざまな動物の部位を交ぜ合わせた姿をしているその化け物は、右腕が蛇となっており左腕は巨大な百足だ。いっそ頭部から尾の先に至るまでにひどく歪な異形であるのだが、双子は彼を保護者代わりとして長く馴染んできたため、相対したくらいで恐怖を感じたりしない。
『幼児向けの絵本だぞ。文ですらないのに、読めないとはどういうことだ。教えたはずだ』
 ヤンは呆れて、足代わりの触手を使って本をひったくった。
「ごほん……よんで……?」
「えっなに、読んでくれんの!? ヤンもたまにはひまなんだな!」
 自分ではわけがわからないからと短気を起こしたジェルーチが、打って変わって興味津々な顔をする。彼は苦労がしたくないだけで、物語は気になるのである。
『暇と言うな。おれは無学なおまえたちが哀れに思えてだな』
 蛇の形をした腕が、それぞれの後頭部に軽く牙を当てた。「いてっ!」「……いたい……」 と、それぞれが抗議する。
『いいから、よく聴け。むかしむかし、あるところに――』
 昔語りが始まった途端、洞窟はいつになく静かになったのであった。

拍手[2回]

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